介護事業所で効果的な「SNS求人」の作成と運用のポイントとは
少子高齢化が進むなか、介護業界の採用競争は年々厳しくなっており、従来の求人媒体だけに頼る方法では、「採用コストばかりかかって応募者が来ない」という状況に陥っているのではないでしょうか。
そのようななかで注目を集めているのが、「Instagram求人」などのSNSを活用した求人方法です。
SNS求人では、写真や動画で職場の魅力や雰囲気を直感的に伝えられるとともに、求職者が本当に知りたい情報をリアルタイムで届けられます。
今回は、数あるSNSのなかでも特に介護業界と相性のよいInstagramを例にあげて解説します。
介護業界で「SNS求人」が求められる理由は?
従来の求人サイトでは、給与や勤務時間といった「労働条件」の掲載が中心になりがちです。
しかし、求職者は「職場の人間関係は良好か」「自分に合う雰囲気か」という、文字だけでは見えにくい「職場のリアル」に対して不安を持っており、それに応える的確な情報を求めています。
特に現在の転職市場の中心である20~40代の求職者は、日常的に「Instagram」をはじめとするSNSなどで情報を集めています。
事業所の雰囲気や日常を写真やショート動画(リール)で届ければ、文章だけの場合よりも強く「印象」に残るため、求職者の心理的ハードルを下げ、親近感を持ってもらいやすくなります。
SNSをうまく活用し、採用につなげている事業所は、「求職者目線」のコンテンツを投稿しているという点で共通しています。
以下に、「Instagram」を例にした具体的な投稿例を3つ紹介します。
投稿例1:スタッフの「1日のタイムスケジュール」をリール動画で紹介
「出勤→申し送り→施設内ケア→休憩→退勤」という1日の流れを、実際のスタッフの動きとともに15~30秒の動画にまとめます。
働くイメージが具体的に湧くため、未経験者が感じる応募への心理的なハードルを下げられます。
投稿例2:「お互い様シフト」のリアルなエピソードを投稿
子育て世代をターゲットにする場合、「お子さんの急な発熱でシフトを交代した際の、実際のLINEのやり取り(本人の許可を得て再現したもの)」や、お互いにカバーし合うスタッフの笑顔などを投稿することで「休みが取りやすく、育児と両立しやすい職場環境」という安心感につながります。
投稿例3:「#(ハッシュタグ)」×「地域」戦略
「#介護職求人」だけでなく、「#〇〇市介護」「#〇〇市求人」のように【地域名+介護・求人】を必ずセットで記載します。
ハッシュタグを活用することで、地元で働きたい人や介護職の求人を探している人の検索画面に表示されやすくなります。
トラブル予防には「肖像権の同意書」が必要
高い効果が期待できるSNS運用ですが、運用を一歩間違えると事業所の信用失墜や法的トラブルに発展するリスクもあります。
特にスタッフの「肖像権」に関しては、口頭だけで済ませず、書面による同意を得ておくことが重要です。
1.「肖像権同意書」の取得と注意点
「事業所のSNSだから」と強制的にスタッフの顔写真を載せるのは危険です。
入社時やアカウント開設時に、SNSへの写真・動画掲載に関する同意書を取り交わし、本人の同意を得ることがリスク回避につながります。
同意書を作成する際は、「利用目的:採用活動・広報のため」、「掲載媒体:InstagramなどのSNS、ホームページ」、「いつでも同意を撤回できること」などを明記することが重要です。
SNSへの掲載が心理的な強制とならないよう、配慮をもって手続きを進めなければなりません。
2.「退職後」の取り扱いについての合意が重要
実務上、最もトラブルになりやすいのは、スタッフが退職した後の写真の扱いです。
退職後に本人から「自分の写っている投稿をすべて消してほしい」と求められた場合、過去の投稿を何百件も遡って削除することや、費用をかけて撮影した求人動画を撮り直すことになれば、膨大な手間とコストがかかることになります。
そのため、同意書のなかに「退職後も原則として過去の投稿は削除しない(ただし、本人から正当な理由に基づく請求があった場合は、協議のうえで対応する)」といった一文をあらかじめ盛り込んでおき、入社時(または撮影時)に明確な合意を得ておくことがトラブル防止のポイントとなります。
3.利用者のプライバシー保護と労働条件の明示
スタッフの肖像権だけでなく、利用者のプライバシーにも配慮が必要です。
背景に利用者の顔や、名前が書かれた私物、カルテなどが写り込まないよう細心の注意を払わなければなりません。
原則として、利用者が映った写真の掲載も「書面による同意」がない限りは避けたほうがよいでしょう。
また、プロフィール欄や固定投稿に明記する労働条件(給与や休日など)は、実際の条件と相違がないようにし、求人広告に関する法令を遵守してください。
SNSを活用した求人発信は、広告費を大幅に抑えられるだけでなく、事業所の理念や雰囲気に共感してくれる「自事業所とのマッチ度の高い人材」にアプローチできる強力なツールとなり得ます。
成功のポイントは、最初から高いクオリティを目指すのではなく、「私たちの職場は、このような人たちが、このような想いで働いています」という等身大の姿を、ルールを守りながら継続して発信することです。
求職者が「ここで一緒に働いてみたい」と思えるような、事業所の温かみが伝わるSNS求人を始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2026年8月現在の法令・情報等に基づいています。