固定資産税が最大6倍に? 相続した空き家を放置してはいけない理由

26.06.30
業種別【不動産業(相続)】
dummy

親が住んでいた実家を相続したものの、遠方に住んでいるために活用できず、そのまま放置しているというケースは少なくありません。
通常、空き家であっても建物が残っていれば「住宅用地の特例」が適用され、土地の固定資産税の課税標準は最大6分の1に抑えられます。
しかし「特定空き家」や「管理不全空き家」に認定され行政から勧告を受けると、この特例が外れ、税額が最大6倍相当に跳ね上がるリスクがあります。
2023年12月施行の改正空家法で対象が拡大された今、空き家を相続した人が知っておくべき基本ルールと対策を解説します。

dummy

住宅用地の特例と課税が約6倍になる仕組み

住宅が建つ土地(住宅用地)には、固定資産税・都市計画税の負担を軽減する「住宅用地の特例」が適用されます。
具体的には、敷地面積が200㎡以下の「小規模住宅用地」では固定資産税の課税標準が評価額の6分の1に、200㎡を超える「一般住宅用地」の部分では3分の1に軽減される仕組みです。
重要なのは、誰も住んでいない空き家であっても建物が残っていれば、原則としてこの特例が継続して適用される点です。
つまり、実家を相続して放置された状態であっても、建物が存在する限りは、税金が低く抑えられてきたという背景があります。

しかし、この優遇措置には大きな落とし穴があります。
空き家が「特定空き家」または「管理不全空き家」に認定され、市区町村から改善の勧告を受けると、住宅用地の特例の対象から除外されてしまうのです。
特例が外れると、課税標準が本来の評価額に戻るため、土地の面積などによって実質的な負担増加幅は異なりますが、小規模住宅用地であれば、翌年度から最大6倍相当まで増額されることになります。

「特定空き家」とは、倒壊の危険性や衛生上の有害性、著しい景観の毀損など、放置することが周辺環境に不適切であると判断された状態にある空き家を指し、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」に規定されています。
一方、「管理不全空き家」は、2023年12月施行の改正空家法によって新設された区分です。
これは特定空き家になる手前の段階、すなわちまだ深刻な状態には至っていないものの、管理が不十分で放置すればいずれ特定空き家になるおそれがある物件を対象としており、深刻化する前に、早期に行政指導の対象とすることを目的としています。
実際の流れとしては、行政による調査や近隣からの通報をきっかけに、まずは「助言・指導」が行われます。
それでも状態が改善されない場合に「勧告」へと進み、この勧告が発出された時点で住宅用地の特例が解除されます。
なお、特定空き家に至っては、勧告の後にさらに「命令」が出され、従わない場合は行政代執行による強制解体(費用は所有者へ請求されます)へと進む場合もあります。
管理不全空き家が新設されたことにより、以前よりも早い段階で増税ペナルティを受けるリスクが高まっているため、より一層の注意が必要です。

ペナルティを避ける管理ポイントと選択肢

固定資産税の増額を防ぐためには、空き家が「特定空き家」や「管理不全空き家」に認定されないよう、日頃から適切な維持管理を行うことが最善の対策です。
自主管理における具体的なチェックポイントは、以下のとおりです。
まずは外観の確認です。
屋根や外壁のひび割れ、雨樋の外れ、窓ガラスの破損などは早期に補修する必要があります。
次に、敷地の清掃です。
定期的な草刈りやゴミの不法投棄対策を行い、庭木の枝が隣地に越境しないよう管理することが重要です。
また、防犯面でも、施錠の確認や、不審者の侵入・放火などのリスクへの備えが欠かせません。
しかし、遠方に居住している場合、これらの管理をすべて自力で行うのは容易ではありません。
時間的・物理的に困難な場合は、地元の不動産会社や専門の空き家管理サービス業者へ委託するのも有効な選択肢の一つです。
近年は巡回を代行してくれる業者も増えており、手軽に利用できるようになっています。

もし、すでに行政から助言・指導の通知が届いてしまった場合は、勧告に進む前に速やかに状態を改善しなければなりません。
勧告の手前であれば住宅用地の特例は維持されるため、早期の対応こそが税負担の増加を防ぐ最大のカギとなります。
また、長期的な維持管理がむずかしいと判断した場合は、一時的な管理ではなく出口戦略を検討すべきです。
選択肢としては、売却、賃貸・リフォームによる活用、解体して更地にする、などがあげられます。
売却を急ぐ場合には、手続きがスムーズな不動産買取業者へ相談するのも一つの手段です。
古い物件でも現状のまま買い取ってくれるケースがあります。
賃貸やリフォームによる活用は、第三者が居住・利用することで建物の老朽化を防ぎやすくなり、家賃収入を得ながら、住宅用地の特例を継続できるメリットがあります。
一方で、建物を解体して更地にする場合は、注意が必要です。
建物を除却すると住宅用地の特例の対象から外れるため、土地の固定資産税が上昇します。
ただし、自治体によっては、解体後も一定期間は特例を継続させる独自の支援制度を設けている場合もあるため、事前に自治体の窓口へ確認することをおすすめします。

空き家問題は、先送りにすればするほど、建物の老朽化、将来的な解体費用の高騰、そして税負担の増大という形で所有者のリスクが膨らんでいきます。
実家を相続した段階で、将来的に「売却するのか」「活用するのか」「維持するのか」を親族間で早めに話し合い、明確な方針を決めておくことが、将来の経済的・法的なトラブルを防ぐための最重要ポイントです。


※本記事の記載内容は、2026年7月現在の法令・情報等に基づいています。