従業員の負担を大きく減らす『時差通勤』の効果と導入方法

26.06.23
ビジネス【人的資源】
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「テレワーク」と共に、コロナ禍における感染症対策の一環として注目を集めた「時差通勤」ですが、現在は従業員の「働きやすさ」を向上させる制度として、一部の企業で定着しつつあります。
時差通勤は、従来の勤務時間を前後にスライドさせるシンプルな仕組みで、労働時間そのものは変わらず、法的なハードルもそれほど高くはないため、企業側・従業員側の双方にとって導入の負担が少ないのが特徴です。
満員電車の回避や従業員のワークライフバランスの向上といった効果が期待できる時差通勤について、その導入方法を検討してみましょう。

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エンゲージメントの向上にもなる時差通勤

時差通勤とは、1日の総労働時間を変更することなく、始業時間と終業時間をあらかじめ定められたいくつかの時間帯のなかから選択して勤務する形態を指します。
たとえば、通常の勤務時間が「9時始業・18時終業」である場合、「8時始業・17時終業」といったような形になります。

国土交通省が行なった調査によれば、2024年度の三大都市圏における通勤通学時間帯の列車の平均混雑率は、東京圏が139%、大阪圏は116%、名古屋圏は126%となり、いずれも前年度より増加していることがわかりました。

通勤時のラッシュは、従業員のストレスや疲労に直結します。
時差通勤の導入により、出社した時点ですでに疲労している状態を回避できれば、午前中から高い集中力を持って業務に取り組むことが可能になります。
これは個人のパフォーマンス向上だけでなく、ミスやトラブルの防止にもつながります。

また、企業経営の観点からは、離職率の低下も期待できます。
育児や介護、通院などの個人的な事情を抱える従業員にとって、朝の1時間を柔軟に調整できることは仕事を続ける大きな理由になります。
多様な働き方を認める姿勢は「従業員を大切にする会社」というメッセージとなり、エンゲージメントの向上にも寄与します。
社会全体で見れば交通混雑の緩和に貢献することになり、企業の社会的責任を果たす一助にもなるでしょう。

よく混同される制度に「フレックスタイム制」がありますが、時差通勤はあらかじめ勤務する時間帯を固定する制度であり、原則として、日ごとに労働時間を変動させることはありません。
そのため、企業側にとっては勤怠管理が比較的容易であり、既存の就業ルールを大きく崩さずに運用できるという利点があります。
特別なコストをかけず、運用ルールを見直すことで「従業員の負担を減らす」という大きな成果を得られるのが、時差通勤の最大の強みといえます。

労務管理の煩雑化などをどう乗り越える?

メリットの多い時差通勤ですが、その効果を認めながらも各企業が導入に踏み切れない背景には、いくつかのハードルが存在します。

特に懸念されるのが、労務管理の煩雑化です。
全社員が同じ時間に在席していないことで、勤怠の確認がむずかしくなったり、特定の時間帯に連絡がつかなくなったりすることを不安視する声もあります。

また、外部との取引がある部署では、取引先の営業時間とのミスマッチが課題になります。
「担当者がまだ出社していない」「既に退社してしまった」という状況が頻発すれば、ビジネスチャンスの逸失や信頼低下を招くリスクもあります。
こうした課題があるため、一部の企業では検討の段階で立ち止まってしまうケースがあります。

しかし、これらの問題は「適切なルールづくり」と「ITツールの活用」で十分に解決することが可能です。
まずはすべての課題を一度に解決しようとせず、試験的に導入して、実態に合わせた調整を行なっていきましょう。

具体的には、社内に推進体制を構築したうえで、まずは現状の把握として、従業員の通勤経路や所要時間、混雑による負担感などをアンケートやヒアリングで可視化します。
あわせて、現行の就業規則と照らし合わせ、時間の変更に伴う休憩時間の規定や、深夜手当が発生する遅いシフトの扱いなど、法的な整合性を確認しておきます。
なお、始業・終業時刻の変更には、就業規則の改定と労働基準監督署への届出が伴うこともあります。

次に、いきなり全社展開するのではなく、特定の部署や期間を限定した「テスト」を実施します。
この際、取引先への周知方法や、部内での情報共有ルール(誰が何時に不在かを可視化する共有カレンダーの活用など)を徹底します。
テスト期間終了後には必ずフィードバックを行い、業務に支障が出た点はないか、逆に従業員の満足度はどう変化したかを検証します。
このサイクルを回しながら、徐々に適用範囲を広げたり、シフトの種類を増やしたりするなど、自社に最適な「時差通勤の形」を探っていきましょう。

時差通勤は導入がむずかしい制度ではありませんが、現場の状況を無視して強引に進めれば、組織の連携を乱す要因にもなりかねません。
導入の第一歩としては、適用回数を「週に数回」に限定する、あるいは妊娠中・育児中・介護中の社員など、特に必要性の高い層から適用するなど、段階的に進めてみることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2026年6月現在の法令・情報等に基づいています。