土地と建物の名義が違うと危険? 相続で起こりやすいトラブルと対処法
「親名義の土地に子が家を建てる」「遺産分割で土地と建物が別々の相続人に渡る」など、土地と建物の名義が異なる不動産は、親族間で珍しくありません。
しかし、名義が分かれていると、「土地を使う権利」と「所有する権利」が対立し、トラブルに発展しやすくなります。
最悪の場合、立ち退きを求められたり、売却が進まなくなったりするリスクもあります。
今回は、土地と建物の名義が異なることで生じる具体的なリスクと、将来の紛争を防ぐために今すぐ取るべき対処法をわかりやすく解説します。
名義が異なる不動産で起こりやすいトラブル
土地と建物の名義が異なる状況は、相続を契機に生じることが少なくありません。
典型的なのが「親名義の土地に子が家を建てているケース」です。
親の逝去に伴い土地を相続する場面で、複数の相続人の間で土地の承継先をめぐって紛争に発展しがちです。
また、遺産分割の結果として土地と建物をそれぞれ別の相続人が取得し、権利関係が複雑になるケースも目立ちます。
さらに、過去の相続登記を放置したまま建物を建ててしまい、後から権利関係の整理が極めて困難になることも、相続人間での紛争を引き起こす大きな要因となっています。
このように土地と建物の名義が一致していない不動産では、将来的にさまざまなリスクが顕在化してくることがあります。
特に深刻なのが、土地の新名義人や、その相続人から立ち退きを求められるリスクです。
たとえば、親の死亡後に土地を相続した親族が、その建物に住み続けている別の親族に対して明け渡しを要求するといったケースがあげられます。
ただし、建物所有を目的として土地を使用している場合、使用貸借などの権利関係が認められることも多く、即座に立ち退きが認められるとは限りません。
しかし、土地の所有者が変わることで、それまでの暗黙の了解が崩れ、泥沼の紛争に発展するおそれは十分にあります。
また、土地が複数人の共有名義になった場合、建物の居住者が他の土地共有者から持分に応じた地代や不当利得相当額の支払いを求められるなどのトラブルも発生します。
たとえば、兄弟で土地を均等に相続し、その土地上の建物には弟のみが居住している場合、兄から「自分の土地の持分に応じた使用料(地代)の支払いをしてほしい」と要求され、対立が生じるケースです。
生前の使用貸借が承継されていれば即座に支払いが義務づけられるわけではありませんが、こうした感情の対立から裁判に発展することも少なくありません。
権利関係が複雑な不動産は第三者への売却を進めようとしても、買い手がつきにくく、資産価値が大きく下がってしまうという問題もあります。
加えて、2024年4月からは相続登記が義務化されたことにも注意が必要です。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行うことが義務づけられており、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
名義が異なる状態のまま長期にわたり放置することは、法的・金銭的なペナルティを受けるリスクも生じさせます。
そのため早い段階から危機感を持ち、関係者間で話し合いを始めることが極めて重要です。
名義をそろえるには? 効果的な対処法と予防策
土地と建物の名義が異なる問題を解決するためには、まず現状の正確な把握が第一歩です。
まずは法務局の窓口やオンラインシステムを利用して登記簿(登記事項証明書)を取得し、土地・建物それぞれの名義人や共有者が誰になっているのかを正確に整理しましょう。
登記簿は手数料を支払えば誰でも簡単に取得することが可能です。
現状の権利関係を把握したうえで、将来のトラブルを予防する最も確実な方法は「名義をそろえる」ことです。
売買・贈与・交換などの手続きを通じて、土地と建物の名義人を同一人に一致させることで、権利関係は非常にシンプルになります。
ただし、これらの手続きを行う際には、登録免許税や贈与税など一定の税金やコストが必要な点に注意が必要です。
また、親族間での合意形成が難航する場合や、税負担が大きすぎる場合など、名義の統一自体が現実的ではないケースも少なくありません。
そのため、早い段階で税理士や司法書士などの専門家へ相談し、最適な策を検討することが有効です。
もし名義の統一が困難な場合には、次善の策として土地の利用ルールを書面で明確にしておくことが極めて重要になります。
土地を無償で貸し借りする「使用貸借」なのか、それとも賃料が発生する「賃貸借」なのかをあいまいにせず、必ず正式な契約書を作成しておきましょう。
なお、法律上、土地の使用貸借は借主(家を建てた子など)の死亡によって終了すると定められており、貸主(親など)の死亡では原則として終了しません。
しかし、口約束のままでは権利関係があいまいになりやすく、長期的な安定性の面ではリスクが残る点に注意が必要です。
どうしても親族間での合意が得られず解決がむずかしい場合には、建物を解体して更地に戻すことや、不動産全体を第三者へ売却するといった抜本的な選択肢も視野に入れて検討する必要があります。
「親族間だからもめるはずがない」と問題を先送りにしていると、次の相続が開始した際に関係者がさらに増え、解決の糸口すら見つからなくなるおそれがあります。
将来の資産価値や親族関係を守るためにも、問題の兆候に気づいた段階で、一刻も早く具体的な一歩を踏み出すことが大切です。
※本記事の記載内容は、2026年6月現在の法令・情報等に基づいています。