実質雇用とみなされる!? 偽装請負を防ぐ法務チェックポイント
フリーランスや副業人材の活用が進む一方で、「業務委託契約」のつもりが実質的には雇用関係にあたると判断されるケースが増えており、企業が法的責任を問われる場合もあります。
問題となるのは「偽装請負」です。
契約書上は業務委託でも、実態として指揮命令関係があれば労働者とみなされる可能性があり、未払い残業代の請求や労災責任、社会保険加入義務などが遡及的に発生するリスクがあります。
今回は、偽装請負とは何か、どのような場合に問題視されるのか、契約書や運用面で企業が押さえておくべきチェックポイントを解説します。
偽装請負とは何か? 判断基準と企業リスク
偽装請負とは、契約形式上は「業務委託」や「請負」としながらも、実態として労働者性が認められる働き方をさせることを指します。
この問題の本質は形式と実態の乖離にあり、契約書に「業務委託」と記載してあるからという理由だけでは、偽装請負のリスクを回避することはできません。
従来から製造業や建設業で問題とされてきましたが、近年はフリーランス人材の増加やリモートワークの普及により、ITやクリエイティブなどの知識労働分野でも問題となるケースが増えています。
偽装請負かどうかは、労働基準法・労働契約法における「労働者性」の判断要素や、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」に基づいて判断されます。
第一に、指揮命令の有無です。
発注者から、業務の進め方、時間、場所について具体的な指示があるかどうかが判断のポイントとなります。
第二に、報酬の性質も重要で、時間給・日給など労働時間に応じた報酬か、成果物単位かという点が考慮されます。
第三に、独立した事業者としての実態があるかどうかも判断材料になります。
設備・機材の所有、再委託の可否、損益リスクの有無などが確認されます。
第四に、専属性も判断要素となり、特定企業に継続的・独占的に従事しているかどうかが問われます。
これらの判断において最も重要なのは、契約書の形式ではなく「実態」が重視されるという点です。
偽装請負と判断された場合、企業側には重大な法的責任が発生します。
労働基準法・労働契約法の適用により、解雇に関する制限や残業代の支払義務、有給休暇の付与義務などが生じ、特に残業代は遡及的に請求される可能性があります。
社会保険・雇用保険の遡及加入と保険料負担も求められ、企業にとって大きな財務負担となります。
労災事故が発生した場合には安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が問題となり、トラブルに発展する可能性もあります。
2024年11月施行の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、いわゆるフリーランス新法違反としての勧告・公表リスクも新たに加わり、自社の信頼低下といったリスクも無視できません。
偽装請負を防ぐ契約書と運用のチェックリスト
契約書作成時には、「業務委託」と明記するだけでは不十分であることを認識する必要があります。
偽装請負を防ぐためには、具体的な条項を盛り込み、実態との整合性を確保することが重要です。
第一に、業務内容を明確化し、成果物の内容や納品条件を具体的に定義します。
「業務の進め方は受託者の裁量に委ねる」旨を明記することで、指揮命令関係がないことを示します。
指揮命令関係の否定を明文化し、業務の遂行方法、時間、場所について具体的な指示を行わない旨を明記します。
第二に、報酬体系を適切に設定します。
成果物単位・プロジェクト単位の報酬とし、時間給・日給形式を避けることで労働者性の要素を排除します。
第三に、再委託・外注に関するルールを規定します。
再委託を認める場合は、受託者が独立した事業者として業務を遂行できることを前提に、発注者の事前承諾を条件とする規定を設けます。
第四に、専属性の排除として他社との取引を制限しない条項を設けます。
しかし、先ほども述べたように、契約書の内容がいくら適切でも、実態が伴わなければ意味がありません。
運用面での具体的なチェックが不可欠です。
まず、労働時間を前提とした勤怠管理を行わないようにし、タイムカードや勤怠管理システムへの打刻を求めないようにします。
場所の自由度を確保し、出社義務を課さず、リモート可とします。
指示命令の方法も、業務の具体的な遂行方法を指示するのではなく、成果物や納期を示す形で依頼することが望ましいでしょう。
なお、業務上必要なツールや設備を貸与すること自体がただちに偽装請負と判断されるわけではありませんが、企業側が業務遂行環境を全面的に管理している場合は、従属性が強いと評価される可能性があります。
評価・懲戒の対象とせず、過度な進捗管理や日次報告も求めない運用が望ましいでしょう。
契約更新・長期継続時にも注意が必要です。
継続的な取引が「専属性」「従属性」の証拠とされるリスクがあるため、定期的に契約内容と実態を見直し、形骸化していないかを確認することが重要です。
必要に応じて法務担当者や弁護士によるリーガルチェックを実施します。
偽装請負と疑われないようにするためには、運用面での徹底が不可欠です。
フリーランス新法施行により企業責任が厳格化している現状を認識し、契約書作成と日常運用の両面でリスク管理を行うことが求められます。
疑義がある場合は専門家へ相談し、適切な契約形態へ見直すことが企業のリスク回避につながります。
※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。