『求職者等セクハラ』の防止措置が義務化! 企業に必要な対応は?

26.05.12
ビジネス【労働法】
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採用活動における立場の違いを悪用した求職者へのセクハラは、求職者を傷つけるのはもちろん、会社の社会的信用を根底から揺るがす重大な問題といえます。
こうした事態を防ぐために、2026年10月1日からは改正法に基づく「求職者等に対するセクハラ防止措置」が、企業に義務づけられることとなりました。
これまでは「マナー」や「配慮」の範疇であった対策が、これからは「法律上の義務」へと変わります。
企業が施行までに何を準備し、どのような体制を整えるべきなのか、改正のポイントとあわせて解説します。

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『求職者等セクハラ』の定義と対象の範囲

多様な人々が安心して働ける環境を整えることを目的として、2025年6月11日に「労働施策総合推進法」などの関連法令の改正が公布されました。
この改正には近年社会問題化しているカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化や、男女雇用機会均等法の改正による女性活躍の推進などが織り込まれていますが、なかでも企業にとって影響が大きいものの一つが「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」対策の義務化です。

これまでの法律でも、自社で雇用している労働者に対するセクハラ対策は義務づけられていましたが、今回の改正により、2026年10月1日からはその対象が「求職者等」にまで拡大されます。
つまり、自社社員による求職者等へのセクハラを防ぐための措置を、事業主が責任を持って講じる必要があるということです。

「求職者等セクハラ」は「就活セクハラ」とも呼ばれますが、ここでいう「求職者等」とは、単に企業の求人に応募してきた学生だけを指す言葉ではありません。
より広く、企業が行う採用活動に携わるすべての人を含みます。
具体的には、正式に応募した「求職者」はもちろん、企業説明会に参加した人や、いわゆる「OB・OG訪問」で社員を訪ねてきた人、さらにはインターンシップ生や教育実習、看護実習などを受けている実習生も含まれます。

また、対象となる「求職活動等」の範囲も非常に広くなっています。
対面での面接や説明会だけでなく、SNSなどのオンラインを介したやり取りや、Web会議ツールを用いたオンライン面接も含まれます。
社員がプライベートなSNSアカウントを使って求職者に連絡を取り、そこで性的な言動を行うことも、当然ながら防止措置の対象となります。

厚生労働省が示す指針やリーフレットでは、具体的な求職者等セクハラの例があげられています。
たとえば、インターンシップ中に社員が求職者に対して性的な冗談を繰り返し、求職者が精神的な苦痛を感じ、インターンシップに集中できなくなってしまうようなケースです。
また、OB訪問の際に社員が「採用に有利になるように取り計らうから」といったニュアンスを出しつつ性的な関係を求め、求職者の就職意欲を著しく低下させてしまうことも典型的な事例となります。

企業が講じるべき具体的な措置を知っておく

義務化に伴い、企業は主に「方針の明確化およびその周知・啓発」「相談体制の整備」「事後の適切な対応」という3つの柱に沿って対策を進める必要があります。

最初に手をつけたいのは、会社としての強い姿勢を打ち出す「方針の明確化およびその周知・啓発」です。
求職者等にセクハラを行なってはならないという旨の方針を社内規定や採用ホームページ、募集要項などに明記し、全社員に周知・啓発する必要があります。
特に、面接を密室で二人きりで行わない、求職者との連絡は必ず公式のルートやメールアドレスを使用するといった面接ルールの策定をあらかじめ行い、それを社員と求職者の双方に伝えておくことが重要です。

次に、「相談体制の整備」として、「相談窓口」を設置します。
求職者が安心して相談できる窓口を定め、その連絡先を説明会資料やサイトに掲載しておく必要があります。
既存の従業員向け窓口を求職者も利用できるように整備・周知するかたちでも対応できます。
窓口の担当者は、求職者の不安に寄り添いつつ、客観的に状況を把握できるような教育を受けることが望まれます。

また、「事後の適切な対応」として、万が一問題が発生してしまった場合には、事実関係を迅速に確認し、被害を受けた求職者へのメンタルケアなどの配慮を行うと共に、加害者の社員に対しては就業規則に基づいた厳正な処分を下すことが求められます。
さらに、再発防止のために研修を実施するなど、二度と同じことが起きない仕組みをつくることも義務の一部です。

ほかにも、相談した求職者や協力した社員がそのことを理由に不採用になったり、不利益な扱いを受けたりしないことを明文化し、プライバシー保護を徹底することも忘れてはいけません。

企業が求職者等セクハラ対策に真摯に取り組むことは、求職者にとって「安心して受けられる企業」という信頼の証となり、結果として優秀な人材の確保につながります。
法改正をきっかけに、今一度、自社の採用活動のあり方を見直し、ハラスメントのないクリーンで透明性の高い選考体制を築きあげていきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。