『食べ残し持ち帰り促進ガイドライン』で店が留意する事項とは?

26.05.05
業種別【飲食業】
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近年、SDGsへの関心の高まりと共に、外食産業における「食品ロス」の問題がこれまで以上に着目されています。
「残さず食べてもらう」ことを基本的な方針としながら、「食べ残しの持ち帰り」を推進する店も増えてきました。
一方で、「もし食中毒が起きたらどうしよう」「法的な責任はどこまで負うべきなのか」という不安が先行し、「食べ残しの持ち帰り」を認めていない店もあります。
こうしたなかで、2024年12月には「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」が策定されました。
食品ロスの削減を目的としたガイドラインの中身を確認していきます。

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店側の懸念点とガイドライン策定までの流れ

日本の食を巡る課題のなかで、食品ロスの削減は重要テーマとなっています。
政府は2030年度までに、2000年度比で家庭系食品ロスについては半減、さらに事業系食品ロスについては60%削減させるという高い目標を掲げています。
この目標達成に向けて、外食産業が果たすべき役割は小さくありません。
現在、事業系食品ロスのうち約4分の1が外食産業から発生しており、外食から出るロスの約5割は仕込みミスや賞味期限切れではなく、お客による「食べ残し」という推計があります。

こうした食べ残しを廃棄せず、お客が自宅に持ち帰っておいしく食べきることができれば、環境負荷の軽減だけでなく、お客の満足度向上にもつながります。
最近では、環境意識の高いお客を中心に、持ち帰りを希望する声も増え始めています。

しかし、万一、持ち帰った後に食中毒が発生した場合、店側の管理責任が問われるのではないか、営業停止などの行政処分を受けるのではないかという店側の不安が、「食べ残しの持ち帰り」の積極的な導入を阻んできました。

そこで、店側の法的・衛生的なリスクを低減し、食べ残しの持ち帰りを促進するため、2024年12月25日に消費者庁と厚生労働省によって、「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」が策定・公表されました。

店側がガイドラインに沿って留意すべきこと

ガイドラインで示されているのは、原則として、食べ残しの持ち帰りは「飲食店と消費者の双方の合意」に基づいて行われるものだということです。
店側が強制するものでも、お客が当然の権利として要求するものでもなく、あくまでも「リスクを理解したうえでの協力関係」であることを理解しておく必要があります。

具体的な運用にあたって、まず飲食店がすべきことは、自店のメニューのなかで「持ち帰りに適した食品」と「適さない食品」を明確に区分することです。
ガイドラインでは、十分に加熱されている食品、常温での保存が可能な食品、あるいは水分含量が少ない食品を持ち帰りの対象とすることを推奨しています。
一方で、刺身などの生もの、半熟卵、生クリームを使用したスイーツ、あるいは水分が多く傷みやすい和え物などは、リスクが高いため持ち帰りの対象から外した方がよいでしょう。
この「店としての判断基準」をあらかじめ決めておくことが、トラブルを防ぐ第一歩となります。

次に、衛生管理上の重要なポイントとして、「容器への移し替え」のプロセスがあげられます。
ガイドラインでは、食中毒リスクを抑え、責任の所在を明確にするため、原則として「持ち帰る消費者自身が容器に詰める」ことを求めています。
飲食店側は、清潔な容器や割り箸などの器具を提供し、お客が衛生的に作業できるようサポートします。
店側が厨房で詰め直すのではなく、お客の目の前で、お客自身の手で行なってもらうことが、後のトラブルを避けるためのルールになります。

そして、飲食店にとって最も重要な実務が「情報伝達」です。
法的責任の観点からも、お客に対して衛生上の注意事項を説明しておく必要があります。
まず、帰宅後は「速やかに食べること」、すぐに食べられない場合は室温に放置せず「必ず冷蔵庫で保管すること」、再加熱する場合は「中心部まで十分に加熱すること」を伝えます。
最後に、もし見た目や臭いに少しでも異変を感じたら、決して食べずに「廃棄すること」をしっかり伝えましょう。
口頭で伝えるだけでなく、容器にシールを貼ったり、案内チラシを添えたりするなど、目に見える形にしておくと、より効果的です。

こうした注意事項を適切に伝達しておくことは、万一の事態が起きた際の店側の防御策にもなります。
持ち帰り後の食品の管理は消費者の自己責任に委ねられる部分が大きいですが、店側が「必要な注意喚起を尽くしていたか」が、責任の有無を分ける可能性があります。
民事上の法的責任については一律に免責されるわけではなく、最終的には司法の判断となりますが、ガイドラインに準拠した運用を行い、誠実な説明を尽くすことは、「食べ残しの持ち帰り」をお客にしてもらううえで、前提の行為といえます。

「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」は、店全体で運用していかなければなりません。
ガイドラインの内容を店舗のオペレーションに落とし込み、スタッフ全員が同じ基準で説明できるように教育を徹底しましょう。
まずはガイドラインを隅々まで読み込み、自店のメニューと照らし合わせて運用方法を整理することが重要です。


※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。