等級7と8が新設! 知っておきたい『一次エネルギー消費量等級』

26.05.05
業種別【建設業】
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建設業界に携わる事業者にとって、近年の省エネ基準の目まぐるしい変化は、経営戦略に直結する重要な関心事の一つです。
これまで住宅の省エネ性能を測る指標とされてきた「ZEH(ゼッチ)水準」は、「選ばれるための付加価値」から「備えていて当然の品質」へとフェーズが移行しています。
こうした背景のなか、2025年12月からは「一次エネルギー消費量等級」に「等級7」と「等級8」が新設されました。
この新基準による影響と建設業者が留意したいポイントを解説します。

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一次エネルギーと省エネ性能の高い家の定義

省エネについて知るには、まず「一次エネルギー」という概念を理解しておきましょう。
一般的に、一次エネルギーとは、加工される前の天然資源、たとえば石油や天然ガスなどを指し、この一次エネルギーを電気やガソリンに加工したものを「二次エネルギー」と呼びます。
住宅における一次エネルギー消費量とは、設備機器で使われる消費エネルギーを熱量に換算した値のことで、冷暖房だけでなく、換気や給湯、照明などもふくめた合計の値を、「一次エネルギー消費量」と呼びます。
したがって、2013年に制定された建築物の省エネ基準である「一次エネルギー消費量等級」も、この一次エネルギー消費量を元に、その住宅の省エネ性能を評価することになります。

一次エネルギー消費量等級では、住宅の1年間の一次エネルギーの消費量を「BEI(Building Energy Index)」という数値で示し、その性能を1~6までの等級に分けていました。
この等級が高いほど、資源を浪費しにくく、環境負荷の低い省エネ性能に優れた住宅であることを示します。

BEIは、建築物の設計時に予想される「設計一次エネルギー消費量」を、地域や設備などから定めた標準的な「基準一次エネルギー消費量」で割ることによって求めることができます。
BEI1.0以下は等級4、0.9以下は等級5といった具合に、BEIの数値が低いほど等級は高くなります。
これまで一次エネルギー消費量等級の最高ランクは、BEIが0.8以下の等級6でした。

等級6は政府が推進してきたZEH水準に相当し、国土交通省の調査によれば、2023年度における新築戸建て住宅のうち、この等級6以上の性能を確保している住宅の割合は約86%にまで達しています。
前年度の約49%という数字と比較しても、驚異的なスピードで等級6が、日本の住宅の当たり前になったことがわかります。
もはや等級6は、最低限クリアすべきラインになりつつあるといえるでしょう。

省エネ促進で「等級7」と「等級8」が誕生

日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、住宅の省エネ化はさらに加速しています。
2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画などにおいても、等級6と同等であるZEH水準をさらに上回る省エネ性能を有する住宅の普及が国家的な課題として位置づけられました。

こうした背景のなか、2025年12月1日から施行・新設されたのが、一次エネルギー消費量等級の新しい等級である「等級7」と「等級8」です。
従来の等級6から最高等級が更新されたことで、住宅の建築に携わる事業者は、さらなる技術革新と、より高い次元での提案力が求められることになりました。

新たに設定された等級7はBEIが0.7以下、等級8は0.65以下となります。
一次エネルギー消費量の削減率も、等級6が20%以上だったのに対し、等級7は30%以上、最高ランクの等級8にいたっては35%以上と、極めて著しい一次エネルギー消費量削減のための対策を講じることになります。

事業者はこの等級7・等級8の新設が提案や設計、コスト計画に与える影響に留意しなければなりません。
基準の格上げは、将来的な義務化の水準がさらに引き上げられる予兆でもあります。
現在は新築住宅に関して、等級4以上の省エネ基準に適合することが義務となっていますが、将来的には等級6が最低基準となるかもしれません。

また、資材価格や高効率設備のコストが高騰するなかで、等級7や等級8を目指すことは、建築コストの上昇を招くということでもあります。
特に等級8のBEI0.65以下は、住宅の断熱性能を向上させるだけではなく、空調や給湯、換気といった設備の効率化を図らなければ、実現できない数値です。
当然、コストもかかりますが、それを単なる「コスト増」ととらえるのではなく、施主に対して「生涯の光熱費を抑え、資産価値を維持するための投資」であることを、いかに論理的に説明できるかが大きなポイントになります。
性能向上によるLCC(ライフサイクルコスト)のメリットを提示し、納得感のある付加価値として提案する力が、これからの営業戦略の核となるでしょう。

この変化をブランディングや提案の質を高める好機ととらえ、新たな時代の基準に適応していくことが、会社運営において欠かせない視点といえます。
まずは、省エネの各種基準について最新の情報にアップデートし、会社全体で理解を深めるところから始めてみてはいかがしょうか。


※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。