曜日や予約時期で価格変動!『ダイナミック・プライシング』

26.03.31
業種別【美容業】
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原材料費の高騰や光熱費の増大などで売上が減少してしまい、やむを得ず価格の見直しを迫られているサロンも少なくありません。
こうしたなかで、ホテル業界や航空業界などではすでに一般的な、「ダイナミック・プライシング(変動料金制)」を導入するサロンも出てきました。
ダイナミック・プライシングとは、需要と供給のバランスに応じて、料金を柔軟に変化させる価格戦略のことです。
単なる値上げではなく、顧客のニーズに合わせて「価格の選択肢」を広げる「ダイナミック・プライシング」のメリットや注意点などを解説します。

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無駄な時間を減らしサービスの価値を最適化

「土日は予約が取れないほど混み合うのに、平日の昼間はスタッフの手が空いている」「特定のスタイリストにばかり予約が集中し、機会損失が起きている」といった課題を抱えるサロンにとって、「ダイナミック・プライシング」は、経営の効率化と収益の最大化を両立させる手段といえます。

そもそもダイナミック・プライシングは、1970年代後半のアメリカの航空自由化以降に広まったものだといわれています。
飛行機のチケット代やホテルの宿泊料などは、すでにダイナミック・プライシングが当たり前で、需要が高まる連休や週末には価格が上がり、逆に利用者が少なくなる平日や閑散期には価格が下がるといった仕組みになっています。
最近では、スポーツ観戦チケットや一部の飲食店でも導入されており、消費者の側にも「混んでいるときは高く、空いているときは安い」という認識が広まりつつあります。

ダイナミック・プライシングの根底にあるのは、サービス価値を最適化するという考え方です。
美容室における在庫とは、スタッフの時間と施術用の椅子(セット面)の稼働枠です。
たとえば、現物の商品であれば売れ残っても翌日に販売できますが、美容室の「今日の14時の予約枠」が空いてしまった場合、その時間の価値はゼロになってしまいます。
ダイナミック・プライシングは、この時間の価値を需要に合わせて調整することで、無駄を減らし、収益を最大化することを目指す手法です。

時間や予約、スタッフによって価格を変動

実際に美容サロンでダイナミック・プライシングを導入する場合、どのような形が考えられるでしょうか。

最も取り入れやすいのは、曜日や時間帯による価格差の設定です。
多くのサロンでは、土日祝日に予約が集中し、火曜日や水曜日といった週の前半に余裕が出やすい傾向があります。
そこで、土日祝日には「ホリデー料金」として数百円から数千円を上乗せし、逆に平日の日中など予約が入りにくい時間帯には「平日限定割引」を適用するといった方法です。

また、予約を行うタイミングによって価格を変動させる手法も有効です。
たとえば、1カ月以上前の早期予約に対して割引を行う「早割」や、逆に当日の空き枠を埋めるための「直前割」などが考えられます。
これにより、サロン側は先のスケジュールが見通しやすくなり、顧客側は自分の都合や予算に合わせて予約のタイミングを選べるようになります。

さらに、特定の人気スタイリストに指名が集中する場合、そのスタイリストの担当枠にのみダイナミック・プライシングを適用し、指名料を変動させることで、ほかのスタッフへの予約の分散を促すといった方法もあります。

売上最大化を図るために納得感のある説明を

ダイナミック・プライシングを導入する最大のメリットは、需要の変化に即応することで売上の最大化を図れる点にあります。
繁忙期の価格を上げることで、客数が同じでも客単価が向上し、収益性が大幅に改善します。
一方で、閑散期の価格を下げることで、これまで「価格が高い」と感じていた層や「空いている時間を狙いたい」と考えていた層を呼び込むことができ、予約枠の空きによるロスを最小限に抑えることが可能になります。

顧客のニーズは決して一様ではありません。
「多少高くても、仕事が休みの土日にしっかり施術を受けたい」というお客もいれば、「時間に余裕があるから、平日の安い時間帯に利用したい」というお客もいます。
混雑を避けたい顧客にとっては、平日の割安な価格設定が来店を促す強い動機となり、結果として店内の混雑緩和にもつながり、より丁寧な接客を提供できる環境が整うでしょう。

ただし、ダイナミック・プライシングを成功させるには、お客からの理解と信頼を得なければいけません。
何の理由もなく価格が変動すれば、お客は不信感を抱き、店から離れていってしまいます。
そのため、「なぜこの時間は高いのか」「なぜこの時期は安いのか」という理由を明確に提示することが重要です。
「土日は多くのお客様にご来店いただけるようスタッフを増員し、特別なサービスを提供するため」「平日はゆったりとした時間をお過ごしいただけるよう、感謝の気持ちを込めた優待価格」といった、納得感のある説明が必要になります。

美容室におけるダイナミック・プライシングは、ただの値上げの口実ではなく、多様化するお客のライフスタイルに寄り添い、サロンの資源であるスタッフの時間を効率的に使うための戦略的なアプローチです。
まずは自店の予約状況を見直し、どの時間帯にどの価格を設定するのか、シミュレーションするところから始めてみましょう。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。