労働条件明示の義務化による『労働条件通知書』の記入方法

26.03.24
ビジネス【労働法】
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労働者を雇用する際に必要なのが、「労働条件の明示」です。
これは労働基準法に基づき、賃金や労働時間などの労働条件を、書面または電子メール(労働者が希望した場合)などで交付して通知する事業者側の義務のことを指します。
2024年4月からは、その書類である「労働条件通知書」に記入しなければならない内容が新しく追加されました。
これまでと同じ形式のまま書類を作成していると、思わぬところで法律違反となってしまったり、従業員との間でトラブルに発展したりするおそれがあります。
今回は、労働条件通知書の記入ポイントについて、解説していきます。

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ルールが変わった背景と追加された項目

労働者が安心して働き続けるためには、自分が「どこで」「どんな仕事を」「いつまで」するのかが明確になっていなければなりません。
2024年4月の法改正では、雇用の透明性をさらに高めるために、労働契約を結ぶ際や、更新する際のルールが厳格化されました。

具体的には、すべての労働者に対して、将来的な「就業場所」や「業務内容」の変更範囲を伝えることが義務づけられました。
また、契約期間が決まっている有期雇用者に対しては、契約更新の回数制限があるかどうかや、通算5年を超えて働いた後に「無期雇用」へ切り替える権利(無期転換申込権)が発生することを、適切なタイミングで知らせなければなりません。

今回の改正で最も重要となるのが、新しく追加された事項を労働条件通知書にどう書くかという点です。
厚生労働省が提供しているモデル様式を参考に、自社の運用に合わせて記入していく必要があります。

まず、一つ目のポイントは「就業場所と業務の変更の範囲」です。
これまでは「雇い入れ直後」の場所と仕事内容を書けば問題ありませんでしたが、これからは「将来的に転勤や配置転換があるかどうか」を明記する必要があります。
たとえば、転勤がまったくない地域限定職であれば「変更の範囲:なし」となりますが、将来的に全拠点への異動の可能性がある場合は「変更の範囲:会社の定めるすべての事業所」といった記載が必要になります。
これは正社員だけでなく、パートやアルバイトを含むすべての労働者が対象です。

二つ目は、有期契約労働者に対する「更新上限」の有無です。
契約を何度まで更新できるのか、または通算で何年まで働けるのかという上限がある場合は、その内容を明示します。
もし、今回から新しく上限を設けたり、以前よりも上限を短くしたりする場合には、あらかじめ労働者にその理由を説明し、納得してもらうプロセスが必要になります。

三つ目は「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」の明示です。
同じ会社で契約更新を重ねて通算5年を超えた有期雇用者は、期間の定めのない契約(無期雇用)への転換を申し込むことができます。
この権利が発生する更新のタイミングで、会社は「無期転換を申し込む権利があります」という案内と、もし無期転換した場合には給料や休みがどうなるのかを、あらためて通知書に記載し、交付しなければなりません。

その他の細かな変更点と運用のコツ

これらの改正点以外にも、実務上配慮すべき変更点がいくつかあります。
以下にあげるものは、法改正によって明示が強化されたり、トラブル防止のために重要視されていたりするポイントです。

たとえば、有期契約労働者の無期転換後の労働条件については、正社員とのバランスを考慮した「均衡待遇」への配慮が求められています。
また、中小企業退職金共済制度や企業年金制度に加入している場合は、その旨を記載することで福利厚生の充実度をアピールできます。
さらに、忘れがちなのが「就業規則を確認できる場所」の明示です。
就業規則は労働者への周知義務がありますが、会社の共有フォルダで閲覧できるのか、それとも事務室の棚に備え付けられているのかといった、具体的な閲覧方法を記載し、従業員がルールをいつでも確認できる環境を整えることが求められています。

一般的な企業においては、まずは「変更の範囲」「更新上限」「無期転換」の3つの軸をしっかり押さえることが、対応の基本となるでしょう。

法改正への対応は、単に書類の項目を増やす作業ではなく、会社側が労働条件をオープンにすることで、従業員との信頼関係を築き、結果として優秀な人材の定着につなげるためのものです。
労働条件通知書の様式を見直すことが、クリーンな労務管理の実現にもなります。
もし、自社の現在のフォーマットに不安がある場合は、社会保険労務士など専門家の力も借りながら、適切な様式に修正していきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。