銀歯の『アマルガム』を除去する・しない? 見解が分かれる理由とは

26.03.03
業種別【歯科医業】
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2025年11月に開かれた「水銀に関する水俣条約」の第6回締約国会議において、歯科用アマルガムの製造や輸出入を2034年末までに禁止することが合意されました。
日本ではすでに2016年に保険適用から除外されていますが、かつての標準的な治療法として、今なお口腔内にアマルガムが残っている方もいます。
水銀が含まれるアマルガムを除去するべきか、それとも無理には除去をせず様子を見るべきかは、歯科医師のなかでも見解が分かれています。
アマルガムについて、あらためてその知識を整理し、必要な対応について考えていきましょう。

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虫歯治療の軸を担ったアマルガムの使用状況

アマルガムは、正式名称を「歯科用水銀アマルガム」といい、「水銀」をはじめ、銀、スズ、銅、亜鉛などを練り合わせた合金です。
その成分の約50%を水銀が占めているのが最大の特徴です。

かつての歯科治療において重宝された理由は、その優れた操作性と耐久性にありました。
アマルガムは銀イオンによる高い抗菌性を持ち、二次カリエス(治療後の再発虫歯)を抑えやすい面があるというメリットが指摘されてきました。
また、充填後に時間が経過するとわずかに膨張する性質があるとされ、窩洞との封鎖性が高まると説明されることもあります。
湿潤環境下でも比較的安定して充填できるため、かつては虫歯治療の軸を担っていました。

しかし、環境保護と健康被害への懸念を背景に、現在では、日本国内で新たに使用されるケースはごく限られます。
一方、海外では、使用は減少傾向にあるものの、費用や治療環境の事情から、一部の国・地域で使用が残っているとされています。
今回の国際合意は、こうした国々も含めて、歯科用アマルガムの段階的な廃止を進める流れを明確にしたものです。

歯科医師の間で見解が分かれる理由

水銀は有害物質のなかでも毒性が強く、体内に取り込んでしまった場合に、さまざまな症状を引き起こす可能性が否定できません。
一方、歯科用アマルガムについては、充填物からごく微量の水銀蒸気が放出され得ることが示されつつも、多くの人に長期的な有害影響が生じるという科学的な根拠が明確にはなっていないという意見もあります。

患者の口腔内で見つかったアマルガムはすべて即座に除去すべきなのか、歯科医師の間でも見解が分かれるのは、こうしたリスクと安全性の2つの側面があるためです。

除去に慎重な立場の意見としては、状態が良好な充填物を「水銀が含まれる」という理由だけで外す必要性は高くないという考え方があります。
また、アマルガムに使用されている水銀は、水俣病の原因となった有機水銀(メチル水銀)ではなく、安定性のある無機水銀であることもあげられます。

また、最も大きな懸念は、除去作業そのものによる水銀の飛散です。
切削時に発生する微細な粉塵や蒸気を患者が吸い込んだり、術者が曝露したりするリスクがあります。
「むやみに触れることで、かえって体内に取り込まれてしまう」という懸念が、アマルガムの除去を慎重にさせているといえるでしょう。

一方で、除去を推奨する立場の意見としては、患者の「不安の解消」や「QOL(生活の質)の向上」などがあげられます。
審美的な改善はもちろん、金属アレルギーのリスクを排除し、将来的な懸念を取り除くことは、予防歯科の観点からも意義があります。

厚生労働省の指針では、「金属アレルギー等の特殊な事情がない場合にはあえて除去する必要はない」としています。
積極的に除去する必要はないものの、たとえば、金属アレルギーの懸念などがあるようであれば、除去を検討する必要があるということです。

また、原則として除去はしないが、詰め物が外れたり、周囲に虫歯ができたりした場合などは、アマルガムからほかの材料への交換を行うという歯科医師もいます。

アマルガムを除去する医院に求められるもの

もし、アマルガムを除去する場合、歯科医院には徹底した衛生管理が求められます。
ガイドラインや指針に基づき、ラバーダム防湿の使用、強力なバキュームによる吸引、適切な注水下での低速切削など、水銀を飛散させないための設備や環境が必要になります。

歯科経営の視点で見れば、安全な除去環境を整えていることを周知することは、自院の専門性と安全意識の高さを示す機会となります。

アマルガムの除去を「詰め物の交換」としてとらえるのではなく、患者の全身の健康不安に配慮した説明と選択肢提示の入り口として位置づけることで、信頼の獲得にもつながるでしょう。

アマルガムの除去は、一律に「こうすべき」という正解があるわけではありません。
大切なのは、国際的な規制の流れと最新の知見を正しく理解し、患者一人ひとりのライフスタイルや健康に寄り添った診療を行うことです。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。