不動産を親族以外に遺したいときの注意点と進め方
核家族化や少子化が進むなか、「相続人となる親族がいない」、「親族以外の大切な人に財産を遺したい」というケースが増えています。
たとえば、長年介護を支えてくれた友人に感謝を伝えたい、事業を支えてくれた従業員に報いたい、そんな思いから親族以外への財産承継を希望する人も珍しくありません。
ただし、不動産は金額が大きく、承継方法を誤ると希望どおりに引き継がれなかったり、思わぬトラブルにつながったりすることがあります。
今回は、親族以外に不動産を遺す際に知っておきたい法律上のルールや手続き、注意点について解説します。
親族以外に不動産を遺す方法とは
民法では、相続人になれるのは配偶者と一定の血族に限られています。
血族相続人には子、直系尊属、兄弟姉妹が含まれ、優先順位も定められています。
そのため、親族以外に不動産を遺したい場合は、「遺言書」を作成し、「遺贈」という形で財産を渡す必要があります。
遺贈とは、遺言によって財産を譲り渡すことを指し、無償で行われるのが一般的です。
遺言書がない場合、不動産は法定相続人に相続されます。
法定相続人がいない場合には、一定の手続きを経たうえで、最終的に国庫に帰属する可能性があります。
つまり、親族以外の人に確実に不動産を遺すには、遺言書の作成が不可欠なのです。
遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。
自筆証書遺言は、遺言者がその全文、作成日付および氏名を自書し、押印して作成する方式で、費用がかからず、手軽に作成できます。
一方で、形式不備で無効になるリスクや、遺言書が発見されないままになる可能性があります。
こうしたリスクを減らすため、法務局で保管できる「自筆証書遺言保管制度」を利用する方法もあります。
公正証書遺言は、公証人と2人以上の証人の前で遺言の内容を口頭で伝え、公証人が確認して文章にまとめる方式です。
公証人という法律の専門家が関与するため、形式面での不備が生じにくく、原本が公証役場で保管されるため紛失のリスクもありません。
不動産を含む遺贈では、内容の正確性や無効リスクを避けるため、公正証書遺言を選択するケースが多く見られます。
遺言書を作成する際は、誰に、どの不動産を、どのように遺すのかを明確に記載することが重要です。
不動産の場合は、所在地や地番、家屋番号などを登記事項証明書のとおり正確に記載する必要があります。
あいまいな表現や特定が不十分な記載は、後のトラブルの原因になりかねません。
不動産を遺贈する際の注意点
親族以外への遺贈には、相続税や手続き面でいくつかの注意点があります。
まず、遺贈を受けた人には相続税が課されます。
ここで特に注意したいのは、親族以外の人が遺贈を受けた場合、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった、親族向けの優遇制度が使えない場合が多く、結果として税負担が大きくなる可能性があるという点です。
さらに、親族以外の人が遺贈を受ける場合、原則として相続税額が2割加算されます。
これは、配偶者や一親等の血族以外の人が財産を取得した場合に適用され、算出された相続税額の2割が上乗せされる仕組みです。
そのため、受遺者の税負担を見越して、必要に応じて現金もあわせて遺すなどの配慮が求められます。
また、不動産の名義変更(遺贈による所有権移転登記)や、その後の管理・維持の負担についても事前に確認しておくことが必要です。
受遺者が不動産を適切に管理できるのか、固定資産税や修繕費などの費用を理解しているのか、特に遠方の不動産や管理がむずかしい物件では、受遺者にとって大きな負担となる可能性があります。
手続き面では、遺言執行者を指定しておくことで、名義変更などの手続きを円滑に進められる場合があります。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことで、弁護士や司法書士などの専門家を指定することも可能です。
親族以外への遺贈では、法定相続人との間で意見の食い違いが生じることもあるため、中立的な立場の専門家を遺言執行者に指定しておくことは大きな安心につながります。
また、遺留分にも注意が必要です。
遺留分とは、配偶者、子、直系尊属に認められた最低限の相続分のことで、これを侵害すると遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
親族以外に不動産を遺す場合には、遺留分に配慮した遺言内容とすること、あるいは事前に相続人と話し合っておくことがトラブル防止につながります。
不動産を親族以外に遺したい場合、遺言書の作成が不可欠です。
希望どおりに財産を遺すためには、税務や手続きの仕組みを理解し、必要に応じて専門家の力を借りながら、早い段階から準備を進めることをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。