歯科技工士が全国的に減少傾向!『入れ歯難民』を防ぐ対策とは?

26.02.03
業種別【歯科医業】
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歯科医療において、喫緊の課題の一つが歯科技工士の減少です。
現在、高齢化や養成施設の減少などによって、歯科技工士の数が減りつつあります。
詰め物や入れ歯を製作する担い手が不足することで、「入れ歯難民」が発生する可能性も高まってきました。
このような危機的な状況についてデータをもとに解き明かすと共に、課題を解決するために歯科業界が取り組むべき対策や最新技術などについて、解説します。

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歯科技工の供給体制が崩壊するリスクとは?

歯科技工士は、歯科医師の指示に基づき、入れ歯、義歯、詰め物、被せ物、さらには矯正装置やインプラントの上部構造まで、多岐にわたる技工物を製作します。
口腔内という繊細で複雑な環境に適合し、なおかつ審美性と機能性を兼ね備えた技工物を製作するには、高度な知識と長年の経験に裏打ちされた技術が欠かせません。

しかし、この歯科医療の土台を担う存在である歯科技工士が減り続けています。
厚生労働省の資料によれば、就業している歯科技工士数自体は大きくは減少していないものの、2022年時点のデータでは、就業している歯科技工士の半数以上が50歳以上で占められており、次世代への技術承継が大きな課題となっています。

さらに深刻なのは、若手人材の確保と定着のむずかしさです。
免許を持ちながら、実際にその業務に従事している人の割合、いわゆる「就業割合」は減少の一途を辿っており、歯科技工士の就業割合は、2022年には26.6%にまで低下したとされています。
これは国家資格を取得しても、労働環境や待遇面などの理由から、おおむね4人に3人が別の道を選んでいるという現実を示しています。

この流れを食い止めるべき教育機関も苦境に立たされています。
全国の歯科技工士養成施設は減少傾向にあり、2023年度には46校まで減少しました。
入学者数も定員を大きく下回る718名にとどまり、定員充足率は約5割程度という状況です。
このままベテラン層がリタイアし、若手の流入が止まれば、近い将来、日本の歯科技工の供給体制が大きく揺らぐ可能性も否定できません。

歯科技工士不足による入れ歯難民の発生

もし歯科技工士の減少に歯止めがかからなければ、どのような事態が起こるのでしょうか。
最も懸念されるのが「入れ歯難民」の発生です。
高齢化に伴い、入れ歯やインプラントなどの補綴治療を必要とする患者数は今後も増加が見込まれています。
一方で、供給側である歯科技工士が不足すれば、当然ながら製作期間も長期化することになります。

入れ歯製作は、患者一人ひとりの顎の動きや噛み合わせの癖を読み取る「経験則」に頼る部分が非常に大きい分野です。
デジタル化が進んでいるとはいえ、最終的な微調整や適合には熟練の勘が不可欠です。
こうした技術を持つベテランが引退し、代わりの担い手がいない状況になれば、たとえ歯科医院を受診しても「入れ歯がいつまで経っても出来上がらない」「対応可能な技工所が見つからない」という事態が、地域によっては多発することも想定されます。

歯科技工士の減少を食い止めるには?

歯科技工士の減少を乗り越えるためには、歯科業界全体での構造改革が必要だと指摘されています。
まず取り組むべきは、歯科技工士の労働環境の改善と社会的地位の向上です。
長時間の立ち仕事や細かな作業による負担を軽減し、有資格者が誇りを持って長く働き続けられる環境を整えなければなりません。

さらに、若い世代に歯科技工士という職業の魅力を再発見してもらうための施策も重要です。
ものづくりを通じて人々の口腔内の健康を支えるクリエイティブな職業としての側面を、業界全体で積極的にアピールしていく必要があります。

また、こうした状況を変える可能性を秘めているのが、3DプリンターやCAD/CAMに代表される最新技術です。
デジタル技術を活用することで、従来は手作業で行なっていた工程の一部を自動化し、作業効率を飛躍的に高めることができます。
これにより、技術の習得期間を短縮できるだけでなく、職人の経験に依存しすぎない一定の品質管理が可能になります。
デジタル化は、若手にとっての参入障壁を下げるだけでなく、ベテランの知恵をデータとして残す手段としても有効です。

歯科技工士の減少は、一専門職だけの問題ではなく、日本の歯科医療の存続に関わる重大な課題といえます。
歯科医院としては、これまで以上にパートナーである歯科技工士との協力関係を強固なものにすることが、ひいては歯科医療の未来を守る一助になります。


※本記事の記載内容は、2026年2月現在の法令・情報等に基づいています。