サロンのターゲットや経営戦略に沿った『立地選び』の重要性

26.02.03
業種別【美容業】
dummy

サロン経営は、お客に店舗へ足を運んでもらうことで成立する立地ビジネスのため、一度場所を決めてしまうと、後から簡単に変更することはできません。
単に「駅に近いから」「人通りが多いから」といった理由でサロンの出店場所を決めるのは早計です。
立地の良し悪しは、そのサロンが掲げるコンセプトやターゲット層、目指すべき経営戦略との相性によって決まるからです。
利便性だけではなく、「誰に、どのような価値を提供し、どのような関係性を築きたいのか」という視点から、立地を選ぶためのポイントを考えていきましょう。

dummy

美容室経営の立地は「ターゲット」で決まる

美容室における「よい立地」の定義は、その店の目指す方向性によって異なります。
最新のトレンドをいち早く発信し、回転率を高めて効率的に収益を上げる「新規集客型」のサロンであれば、何よりも優先すべきは店舗へのアクセスです。
ターミナル駅の周辺や、多くの人が行き交う商業エリア、あるいは有名ブランドが並ぶ通り沿いなどが理想的な立地といえるでしょう。

一方、地域に根ざして、お客一人ひとりと長く付き合う「リピーター重視」の安定した運営を目指すのであれば、駅前よりもむしろ住宅地が有力な候補となります。
近隣住民にとっての「通いやすさ」は、物理的な距離だけでなく、生活動線上にあるかどうかがカギを握るからです。
スーパーへの買い物の帰りや、子どもの送り迎えのついでに立ち寄れる場所など、お客の日常に溶け込んだ立地は、派手な新規集客こそ少ないかもしれませんが、一度定着したお客が離れにくいという強固な経営基盤をつくります。

また、高価格帯のサービスを提供する「高級サロン」や「隠れ家的サロン」の場合は、異なるロジックが働きます。
富裕層や美意識の高い層がターゲットになるため、高級マンションが立ち並ぶ閑静な住宅街や、落ち着いた雰囲気が漂う裏通りなど、お客が「特別な空間へ行く」という高揚感を感じられる場所への出店が適しています。
プライバシーが守られ、ゆったりとした時間が流れる環境そのものが、高単価を理由付けするためのブランディングとなるからです。

このように、「立地がよい」というのは「ターゲットのライフスタイルに合致している」ことと同義であることがわかります。
逆に、どれほど一等地の物件であっても、ターゲット層がその場所を訪れる理由がなければ、それは「悪い立地」になってしまいます。
たとえば、若年層向けの低価格サロンを富裕層しか住んでいないエリアに出店しても、需要のミスマッチが起きてしまいます。

ターゲットが決まった後の適切な物件探し

サロンのターゲットが明確であれば、具体的な物件探しを進めていきましょう。
まずは候補となるエリアに目星をつけたら、時間帯や曜日を変えて何度もその土地を歩いてみます。
平日の朝の通勤時間、昼時の主婦層の動き、夕方の学生の帰宅ルート、そして夜の雰囲気まで、人の流れを観察することで、そのエリアに住む人や訪れる人の特徴が見えてきます。

同時に、近隣にどのような店舗があるかなど、周辺環境のチェックも不可欠です。
ターゲット層が好むカフェやセレクトショップがあれば、自身のサロンにとっても好相性な立地である可能性が高いといえます。

また、競合店の調査も必須です。
近隣に似たようなコンセプトのサロンがいくつあるか、それらが繁盛しているかを調べましょう。
ライバルが多いことは、それだけ需要がある証拠でもありますが、差別化ができていなければ苦戦を強いられます。
競合店の価格帯やメニュー、ターゲット層を分析し、自身のサロンが入り込める「隙間」があるかどうかを冷静に見極める必要があります。

店を開く物件そのものの状況も要確認!

物件の条件確認も、重要なポイントです。
家賃の安さだけで決めるのではなく、契約期間や更新料、保証金などの条件はもちろん、物件の構造(スケルトンか居抜きか)、電気・ガス・水道の容量が美容室の運営に耐えうるか、看板を設置できる範囲はどこまでかなど、細部にわたって確認しましょう。
特に古いビルなどは、シャンプー台を増設する際の床下配管がむずかしいケースもあり、工事費が高くなってしまうリスクもあります。

これらの条件が整った物件が見つかったら、最後に最も重要な「収支シミュレーション」を行います。
事業計画に基づき、初期費用の回収期間や、毎月の固定費(家賃、人件費、光熱費など)を差し引いた後の利益を算出します。
この際、家賃は売上目標の10~15%以内に収めるのが健全な経営の目安とされます。
もし立地がよすぎて家賃が高くなりすぎるのであれば、それに見合うだけの客単価や回転率が本当に確保できるのか、厳しく判断しなければなりません。

美容室における立地選びは、みずからの経営戦略を物理的な形として表現し、誰にどのような価値を届けるかを確定させる重要な意思決定事項です。
サロンで提供したい技術や接客、つくりたい空間、そして理想とするお客を想像したとき、ふさわしい舞台はどこなのか、考えてみましょう。
これから開業や移転を考えているのであれば、「理想とする場所」を見つめ直し、戦略的な視点を持って出店すべき場所を選びましょう。


※本記事の記載内容は、2026年2月現在の法令・情報等に基づいています。