双方がWin-Winになれる『ネゴシエーションスキル』を身につける

25.12.19
ビジネス【マーケティング】
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取引相手との継続的な関係性が求められるマーケティングや営業の現場において、「ネゴシエーション」とは、お互いの条件を調整し、双方にとって最善の着地点を導き出す対話プロセスのことを指します。
双方が『Win-Win』となる建設的な対話は、次のビジネスチャンスや強固な信頼関係につながります。
マーケティングや営業の担当者であれば身につけておきたい、ネゴシエーションスキルについて解説します。

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お互いがWin-Winとなる着地点を見つけ出す

顧客やパートナー企業との関係構築が重要なマーケティングや営業活動では、交渉でその場限りの勝利を追求することが、必ずしも最善とはいえません。
仮に、自社の都合だけを押し通して短期的な利益を得たとしても、相手に「負かされた」という感情が残れば、信頼関係は失われ、長期的なパートナーシップを築くことは困難になります。

ビジネスにおけるネゴシエーションの最終的な目的は、双方が『Win-Win』になることです。
Win-Winとなる合意とは、双方が持つ本当に得たい価値を交換し合い、お互いの満足度を高める状態を指します。

一方の利益がもう一方の損失になる「ゼロサム・ゲーム」に終始するのではなく、「価格は維持する代わりに、納期を柔軟に対応する」「自社のノウハウを提供し、相手の別の課題解決に協力する」といった形で、お互いのリソースやニーズを深く理解し合うようにしましょう。
そうすることで、当初想定していなかったような、より大きな価値を双方にもたらす合意に至ることも十分にあり得ます。

この双方にとってWin-Winとなる着地点を模索し、合意へと導くプロセスこそが、ネゴシエーションの本質といえるでしょう。

ネゴシエーションスキルの基礎となる3本柱

建設的な対話を実現する「ネゴシエーションスキル」は、どのように磨けばよいのでしょうか。
ネゴシエーションにおいては、単なる話し方のテクニック以前に、基礎となる能力があります。
その一つが「傾聴力」です。

交渉というと「いかに説得するか」に意識が向きがちですが、最も重要なのは「いかに深く聞くか」です。
相手の要求の裏には、必ずその要求に至った背景や、本当のニーズが隠されています。

相手の言葉を遮らず、真摯に耳を傾け、「なぜ、そのように考えるのですか?」「もう少し具体的に教えていただけますか?」といった質問を通じて、相手の立場や抱えている事情、懸念点を深く理解しようと努めましょう。
その姿勢こそが、相手との信頼関係の土台となります。

また、ネゴシエーションでは論理的な組み立ても欠かせません。
傾聴によって得られた情報と、自社が実現したいことを整理し、双方にとってメリットのある提案を組み立てるには、「論理的な思考(ロジック)」が不可欠です。
自社の希望を一方的に伝えるだけでは、交渉は平行線を辿るだけです。
客観的な事実やデータを根拠(エビデンス)として示し、なぜこの提案が自社だけでなく相手にとっても合理的であり、価値があるのかと、筋道を立てて説明することが大切です。

さらに、「感情のコントロール」も重要です。
交渉は、利害が対立する場面でもあるため、時には相手から厳しい意見を突きつけられたり、交渉が難航して焦りや苛立ちを感じたりすることもあります。
しかし、ここで感情的になってしまっては、築き上げたロジックは崩れ、相手との間に不要な壁をつくってしまいます。

重要なのは、自分の感情の起伏を客観的に認識し、コントロールすることです。
反論したくなったり、不安になったりしたときこそ、一呼吸置きましょう。
そして、相手の立場に立って冷静に分析し、目的であるWin-Winの着地点を探すという原点に立ち返ることが重要です。

この「傾聴力」「論理的な思考(ロジック)」「感情のコントロール」の3本柱が、ネゴシエーションスキルの土台となります。

実際の交渉の現場で忘れてはならないこと

スキルを土台として身につけたうえで、実際の交渉に臨む際には、相手の立場を把握し、着地点を見失わないことが重要です。

交渉の準備段階で、まず自社について、「絶対に譲れない点(Must)」は何か、「できれば獲得したい点(Want)」は何か、そして「交渉が決裂した場合の次善策」は何かを明確にしておきます。

同時に、傾聴や事前のリサーチを通じて、相手にとっての「Must」と「Want」も推測します。
お互いの「Must」が衝突していないか、もし衝突しているなら、自社の「Want」の一部を譲歩する代わりに、相手の「Must」を満たす代替案はないか、といったシミュレーションを行います。
相手の社内事情や、交渉担当者が抱えているプレッシャーまで想像を巡らせることで、提案の説得力は格段に増すでしょう。

また、双方が合意可能な範囲を事前にイメージしておくことで、交渉の場で議論が発散したり、感情に流されて不必要な譲歩をしてしまったりすることを防げます。
もちろん、この着地点は固定的なものではなく、対話を通じて得られた情報に基づき、柔軟に調整していく姿勢も大切です。

双方にとって「Win-Win」となる合意の獲得が目的である、ということを忘れなければ、きっと最良の結果に至ることができるはずです。


※本記事の記載内容は、2025年12月現在の法令・情報等に基づいています。