中小企業の男性育休取得促進に役立つ支援とは

25.12.09
ビジネス【助成金】
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少子化対策と働き方改革の一環として、男性の育児休業取得促進は企業にとって重要な課題です。
しかし、文化的なハードルや業務体制の不備により、男性育休の取得率は依然として低水準にあります。
こうした状況を改善するため、厚生労働省は「両立支援等助成金」のなかで「出生時両立支援コース」を設け、中小企業が男性従業員の育児休業取得を支援する取り組みに対して助成金を支給しています。
本制度は、企業の雇用環境整備を促進し、従業員のワークライフバランス向上と人材定着を目指すものです。

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両立支援等助成金 出生時両立支援コース

出生時両立支援コースは、男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を取得しやすい環境を整備した中小企業に対して助成金を支給する制度です。
目的は、男性育休取得率の向上と、企業における両立支援の文化醸成です。
本助成金は、企業が行う雇用環境整備や業務体制整備の取り組みと、実際の育児休業取得実績に応じて支給され、男性の育児取得率が上昇した場合に助成するものです。

【支給対象事業主】
中小企業のみが対象です。
なお、中小企業の定義は業種ごとに異なり、以下の基準を満たす必要があります。

業種:資本金の額または出資の総額、または常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む):5,000万円以下または50人以下
サービス業:5,000万円以下または100人以下
卸売業:1億円以下または100人以下
その他の業種:3億円以下または300人以下

【概要】
以下の2つの場合に助成金が支給されます。
第1種:男性が育児休業を取得しやすい「雇用環境整備」「業務体制整備」に取り組み、子の出生後8週間以内に開始する連続5日間以上の育児休業を取得した男性労働者が出た場合
第2種:男性労働者の育児休業取得率の数値(%)が1事業年度で30ポイント以上上昇し、50%を達成した(または一定の場合に2年連続70%以上となった)場合

【支給要件】
第1種
(1)育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置について、必要な数の措置を実施していること
(2)育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること
(3)男性労働者が、子の出生後8週間以内に開始する育児休業を取得すること
(4)育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること
(5)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届けていること
(6)対象の男性労働者を育児休業の開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること
※(1)、(4)および(2)のうち規程等の策定は、(3)の育児休業開始日の前日までに行なっている必要があります。

《第2種》男性の育児休業取得率の上昇等
(1)育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行なっていること
(2)育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること
(3)下記のAまたはBに該当すること
A.男性労働者の育児休業取得率が、前事業年度から30ポイント以上上昇し、50%以上となっていること
B.男性労働者の育児休業取得率が、2カ年連続して70%以上となること
(4)育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること
(5)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届けていること
(6)対象の男性労働者を育児休業の開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること

【支給額】
第1種<男性労働者の育児休業取得>
1人目:20万円 ※雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合、30万円
2人目・3人目:10万円

第2種<男性の育児休業取得率の上昇等>
申請年度の前年度を基準として30ポイント以上上昇し、50%以上となった場合等:60万円
※申請時にプラチナくるみん認定事業主であれば15万円加算

育児休業等に関する情報公表加算:2万円
※第1種(1~3人目のいずれか)、または第2種のいずれか1回限り加算

注意事項
・同一事業主について、第1種は3人目まで、第2種は1回限りの支給です。
・第2種の受給後に第1種の申請を行うことはできません。
・令和3年度以前の出生前育児支援コース(男性労働者の育児休業・育児目的休暇)を受給している事業主であっても、新たに支給要件を満たした場合には申請可能です。

【申請期限】
第1種
申請に係る育児休業の終了日の翌日から起算して2カ月以内

第2種
申請に係る事業年度(育児休業取得率が上昇等した事業年度)の翌事業年度の開始日から起算して6カ月以内

第2種の経過措置について
第1種を申請した事業年度の末日が令和5年12月17日よりも前であり、男性の育児休業取得率が50%を達成している場合は、令和6年12月17日改正前の規定で申請することができます。

【おわりに】
近年、男性の育休取得率は年々向上していますが、大企業と比較すると中小企業の取得率は依然として低い状況です。
中小企業にとって出生時両立支援コースは、男性育休取得を促進するための重要な助成制度です。
企業にとっては、助成金の受給だけでなく、職場環境改善や柔軟な働き方ができることによる人材定着という長期的なメリットがあります。
本制度を活用し、育児と仕事の両立を支える職場文化を醸成し、優れた人材の確保・定着につなげてみませんか。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html


※本記事の記載内容は、2025年11月30日現在の法令・情報等に基づいています。