中小企業も標的に! いますぐ取り組むべきセキュリティ対策
近年、中小企業を狙うサイバー攻撃が急増しています。
2024年に発表されたIPAの実態調査によると、約7割の中小企業で組織的なセキュリティ体制が整備されておらず、過去3年間にサイバー攻撃を受けた企業のうち約7割で取引先にも影響が及ぶ「サイバードミノ」が発生しています。
取引先を装ったメールや従業員の情報漏洩、不正アクセスによるシステム被害など、規模を問わずあらゆる企業が狙われています。
今回は、中小企業が狙われやすい理由と、今すぐ実践できる具体的な対策について解説します。
中小企業が狙われやすい理由とは?
近年、サイバー攻撃のターゲットが大企業から中小企業へと移りつつあります。
警察庁のデータによると、2024年上半期のランサムウェア被害の約64%が中小企業であり、中小企業が主要な標的となっていることがわかります。
その大きな要因は、セキュリティ体制の脆弱さにあります。
経済産業省が2024年に実施した調査では、約7割の中小企業において組織的なセキュリティ体制が整備されていないことが判明しました。
限られた人員と予算のなかで日常業務を優先し、リスク認識が低いまま対策が後回しにされているケースが目立ちます。
メールや書類のやり取りにパスワードが設定されていない事例も珍しくありません。
代表的な攻撃手口には、取引先を装ったメールを介したマルウェア感染があります。
巧妙に偽装されたメールからウイルスが拡散し、重要データが暗号化される被害が急増しています。
また、「従業員のPCからの不正アクセス」「フリーWi-Fi経由での情報漏洩」なども多く、テレワーク環境の普及に伴ってリスクは一層高まっています。
さらに深刻なのが「パスワードの使い回し」や「単純すぎるパスワード」による被害です。
複数サービスで同一パスワードを利用する従業員が多く、一度流出すると被害が連鎖的に広がります。
こうした攻撃は取引先を巻き込む「サイバードミノ」を引き起こし、業務停止や経済的損失に加え、信頼失墜や訴訟リスクへ発展する可能性があります。
IPAの調査によれば、中小企業の被害額は平均73万円、復旧に平均5.8日間を要し、最長で360日かかった事例も報告されています。
今すぐ始められる実践的な対策
中小企業であっても、適切なセキュリティ対策を講じればサイバー攻撃のリスクを大幅に軽減できます。
まずは基本的な対策から始めましょう。
パスワードは推測されにくい強固なものを設定し、定期的に変更することをおすすめします。
NIST(米国国立標準技術研究所)のガイドラインでは、複雑さよりも長さを重視し、最大64文字まで許可することが推奨されています。
サービスごとに異なるパスワードを使用し、管理ツールを活用するのも有効です。
社内のPCやスマートフォンにはセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保ちましょう。
特にテレワーク時はVPN接続の活用など、通信環境の安全確保が不可欠です。
次に、社内ルールと教育体制の整備です。
従業員向けに定期的なセキュリティ研修を実施し、怪しいメールを開封しない、不審なリンクをクリックしないといった基本動作を徹底することが重要です。
ITツール導入時には契約のセキュリティ条項を必ず確認し、サプライチェーン全体のレベル向上を図ることも求められます。
さらに、多要素認証(MFA)の導入は非常に効果的です。
Microsoftの調査によれば、MFAを利用することで不正侵入のリスクを99%以上減らせるとされています。
パスワードに加え、スマホアプリや生体認証を組み合わせることで攻撃を大幅に阻止できます。
加えて、定期的なバックアップの取得も不可欠です。
ランサムウェアに感染してもバックアップがあれば業務継続が可能です。
ただしバックアップ自体が暗号化される被害もあるため、オフラインや複数拠点での保管が推奨されます。
最後に、「うちは小規模だから狙われない」という油断こそが最大のリスクです。
IPAの調査では、日常的にセキュリティ投資を行なっている企業の約5割が、新規取引につながったと回答しています。
セキュリティ対策はコストではなく、取引先と信頼を築くための投資です。
自社と従業員を守り、取引先の安心を確保するためにも、今できる対策から着手することが不可欠です。
※本記事の記載内容は、2025年11月現在の法令・情報等に基づいています。