介護現場でよく起きるミスをなくす方法とは

25.11.04
業種別【介護業】
dummy

介護現場では、さまざまなことに対応しなければならないため、職員は常にいろいろなものに注意を払っています。
しかし、忙しい日々が続くと、思いがけないミスが発生することもあります。
介護現場でよくあるミスは、利用者の転倒・転落・誤嚥・誤薬などの身体的事故、情報伝達の不備・個人情報漏えい・不適切なケアなどの人的ミス、そして福祉用具の故障などの設備の不具合と多岐にわたります。
特に転倒・転落事故は多くの施設で発生しており、利用者の骨折など大きな怪我につながるリスクが高い事故となるため対策が必要です。

dummy

ミスを減らすためにできる対策は

介護現場で起こるミスは、さまざまな原因が重なりあって引き起こされます。
一般的には人手不足による時間的・精神的余裕のなさによるもの、経験不足や教育体制の不備によるもの、スタッフ間での不十分な情報共有やコミュニケーション不足によるもの、そして不適切な職場環境によるものといった複合的な要因によって引き起こされます。

介護現場でのミスを完全になくすことは極めてむずかしいですが、大きな事故をなくし、日々の細かいミスを減らすことは可能です。
そのためには、個人としての対策と組織としての対策に分けて考える必要があります。

個人としての対策
・正確な情報共有のためにメモを活用
利用者の健康状態や注意事項などの情報を正確に伝え、スタッフ間で共有することが大切です。
忙しいときや、急用が入ったときなどは伝え忘れるリスクが発生しますので、些細なことでも常に手帳やタブレットなどにメモをする習慣を身につけましょう。

・振り返りの時間を持つ
ミスをしたときは、落ち込んでしまいがちですが、あまり引きずらずにミスの原因を冷静に振り返ることが重要です。
小さなミスが起きても大きなミスにつながらないように、振り返り原因を考えることで、ミスを繰り返さないようになります。

・疑問や不明な点は質問する
「何でこのようにするのだろう」「何をすればよいのだろう」など、指示に対して疑問や不明な点があると、指示者の意図と実行者の行為に相違が生じ、ミスにつながりやすくなります。
不明な点や疑問点があれば積極的に質問しましょう。

組織としての対策
・業務マニュアルの整備
介護現場のミスは、業務の手順や方法が明確ではなく、人によって異なっている場合に発生しやすくなります。
業務手順や方法を統一するために、介護計画や業務マニュアルを整備し、常に最新の状態を保ちましょう。
また、これをスタッフ間に周知し、共有することが重要になります。

・現場の声を活用する
利用者に接している介護職員の意見を積極的に聞き、現場における課題を把握することで、業務改善につながり、ミスの削減効果が上がります。

・ヒヤリ・ハット報告の徹底
「ヒヤリ・ハット」とは、「危なかった」「もう少しで事故になるところだった」という、重大事故につながる可能性があった出来事を指す言葉です。
現場で起きた「ヒヤリ・ハット」を見過ごさず、報告書を積極的に作成・共有することで、スタッフ全員で危険行動への意識を高め、ミスを防止する体制の構築につながります。

ミスを生み出す根本的な問題とは

個人、組織の両面でミスを削減する対策は有効ですが、根本的な問題が残っている介護現場ではミスはなくなりません。
それはコミュニケーションの欠如です。

ミスを起こしたスタッフを厳しく叱責し、個人の力量不足として片づけてしまい、組織全体の改善を見過ごしているケースがよくあります。
このような職場では、毎日の当たり前の行動や常識として考えられていることがミスを生んでいる原因となっている可能性があります。

その一つが管理者や上司からの指示があいまいになっているケースです。
たとえば、「利用者には心を込めて対応しよう」や「声かけをするように心がけてね」という指示があった場合、スタッフ側としては「いつ」「どのように」「どうする」のか個人ごとに判断することとなり、人によって対応方法や行動が変わってしまいます。
つまり、上司にとっての常識が、スタッフにとってはそうではないというケースは少なくありません。
これは、上司サイドがあいまいな指示を避け、自社では「どのように」「どの程度」対応するのかを決めて、みんなが理解できるわかりやすい言葉で指示することで改善できます。

二つ目は、「ヒヤリ・ハット」やミスの報告をすることで本人にデメリットしかない状況をつくっていないかという点です。
スタッフの個人的な能力を責めるだけでは、そのスタッフは委縮し、さらにミスを重ねる原因をつくってしまうことになります。
まずはミスの原因を究明し、どのような行動が正しかったのか教えること、そしてよい結果になったときは承認して褒めることで、次も頑張ろうという意識が芽生え、コミュニケーションの活性化やミスの削減につながります。

介護現場は、将来的な人材不足に対応するために、新たなシステムや機材が導入され、効率化やコストダウンが求められています。
しかし、そのようなシステムや機材を扱い、利用者へサービスを提供するのは人間です。
マニュアル整備や個人のスキルアップだけに頼らず、人と人との正しいコミュニケーションの活性化を重点的に強化していくことで、ミスのない職場を構築することができるのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年11月現在の法令・情報等に基づいています。