店側のミスかどうか真偽不明でも? 返金対応が必要なケースとは

25.11.04
業種別【飲食業】
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お客からのクレームのなかでも、返金要求を伴うものは、店舗の信頼性や顧客満足度に直結します。
しかし、原因が本当に店側にあるのか、事実関係がはっきりしない場合も少なくありません。
たとえば「料理に髪の毛が入っていた」というお客の訴えに対し、調理過程を振り返っても該当する原因が見当たらないケースなどが考えられます。
このような場合には、返金するのが最善の対応なのでしょうか。
飲食店で発生するさまざまなクレームのなかから、特に返金対応が必要な場合の判断基準について考えていきます。

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健康や安全に関わるクレームには返金が必要

飲食店におけるクレームは、異物混入、料理の味付けの間違い、提供温度の不備、食中毒の疑いなど、「商品やサービス」に対するものと、接客態度が悪い、注文した料理がなかなか来ない、店内の清掃が行き届いていないなど、「店舗の運営や接客」に対するものに分けることができます。
これらのクレームは、お客が感じた不満の度合いや、問題が起きた状況によって、返金要求に発展するかどうかが変化します。

このなかでも、特に注意すべきは、「商品やサービス」に対するクレームです。
料理の味付けが少し違う程度であれば「次回は気をつけてほしい」といった要望に留まることがほとんどですが、異物混入や食中毒の疑いとなると、お客の安全に関わるため、より深刻なクレームとなります。
安全や健康に直接的な影響を及ぼす可能性のあるケースでは、ほぼ返金対応が必要になると考えてよいでしょう。

たとえば、料理に虫や髪の毛、プラスチック片などが混入していた場合、お客は「不衛生だ」「食べる気がしない」と感じ、強い不快感を抱きます。
お客がその異物を口にしなかったとしても、精神的な苦痛を与えたとして、返金や割引を要求されることは珍しくありません。
また、「お店で食事をした後、体調が悪くなった」と訴えてきた場合は、たとえそれが食中毒であると断定できなくても、返金対応を検討するほうがよいでしょう。
食中毒はお客の健康を著しく損なう可能性があり、風評被害にもつながるため、迅速かつ誠実な対応が求められます。

一方、「店舗の運営や接客」に対するクレームに関しても、状況によっては返金対応が必要になります。
たとえば、注文した料理がまったく違うものだった、極端に冷めていた、あるいは注文が忘れられていて長時間待たせた、といったケースです。
お客は、支払った金額に見合うサービスを受けられなかったと感じるため、返金や割引を求めるのは当然の要求といえます。

スムーズな返金対応を行うためのプロセス

返金対応をスムーズに進めるためには、事前の準備と、お客に寄り添う姿勢が不可欠です。
まずは、お客が何を問題だと感じているのかを、最後まで丁寧に聞くことが重要です。
途中で遮ったり、言い訳をしたりせず、「お話をお聞かせください」と耳を傾ける姿勢を見せましょう。
これにより、お客は「自分の話を真剣に聞いてくれている」と感じ、落ち着いて話すことができます。

次に、お客の話を聞いたら、「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」と心からの謝罪を伝えます。
その際、「~かもしれませんが」といったような、言い訳がましく聞こえる言葉は避けましょう。
お店側に非がないと感じていても、まずは「お客に不快な思いをさせた」という事実に対して謝罪することが大切です。

お客から状況を聞いた後は、可能な範囲で事実確認を行います。
ただし、その場で詳細な調査を行うことは、お客を待たせてしまうため避け、あくまでもお客の話を基に、返金対応をはじめとする問題の解決策を提示しましょう。

事実関係がはっきりしない場合の対応は?

飲食店のクレームで判断に迷うのは、事実関係がはっきりしないケースです。
料理に異物が入っていたとお客が訴えても、それが本当に店で混入したものなのか、あるいは、ほかから持ち込まれたものなのか、確証が得られない場合があります。
このような場合でも、よほど高額な請求でない限り、返金対応を検討するべきでしょう。

なぜなら、真偽不明な状況で返金を拒否することは、お客に「この店は疑り深い」「誠実ではない」という不信感を抱かせるリスクがあるからです。
一度失われた信頼を取り戻すのは非常に困難です。

クレーム対応において、最も避けなければならないのは、お客との関係をさらに悪化させることです。
店に非がなかったとしても、適切に対応しないと、お客の不満はいつまでも消えることはありません。
お客の感じている不満を放置し、正面から向き合わない姿勢は、より大きな風評被害につながる可能性もあります。

お客が不快に感じ、それをわざわざ伝えてくれたのであれば、まずはその気持ちに寄り添い、誠意を示すことが何よりも大切です。
たとえそれがお客の勘違いや間違いであったとしても、誠実な対応をすることで、かえってお客の心に残り、「よいお店だ」という評価につながることもあります。
もちろん、あまりにも不当な要求や、常習的なクレーマーであると判断できる場合は、毅然とした対応も必要ですが、その線引きは非常にむずかしいものです。

重要なのは、クレームを厄介ごととしてとらえるのではなく、店舗の改善点を見つけ、サービスを向上させるための貴重なフィードバックだと考えることです。
クレーム対応の経験を活かし、よりお客に喜んでもらえる店づくりを目指しましょう。


※本記事の記載内容は、2025年11月現在の法令・情報等に基づいています。