禁止命令も! ストーカー被害に遭った場合の対応方法

25.10.28
ビジネス【法律豆知識】
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ストーカー被害は、いつ誰に起こってもおかしくない身近な問題です。
最初は些細な違和感から始まり、放置するとエスカレートして、深刻な事件に発展するケースもあります。
もしものときに自分や大切な家族を守るためにも、ストーカー行為とは何か、被害に遭った場合にはどうすればよいのかなど、正しい知識を身につけておきましょう。
今回はストーカー規制法や警察への相談方法、弁護士など専門家への依頼方法について解説します。

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ストーカー行為の法的な定義とは?

法律で定義されている「ストーカー行為」とは、特定の相手やその家族などに対し、恋愛感情やその他の好意、あるいはそれらが満たされなかったことへの恨みなどから、さまざまな方法で繰り返しつきまとうことを指します。

たとえば、自宅・職場・学校での待ち伏せや近くをうろつく行為はもちろんのこと、面会や交際の要求、無言電話や連続した電話、FAX、メール、SNSでのメッセージ送信などが該当します。
さらには、汚物などを自宅に送りつける行為や監視していると告げる行為、名誉を傷つけるような言動、性的羞恥心を害するような言動、GPS機器を取りつける行為や位置情報を取得する行為も含まれます。
同一の人物に対して、これらの行為が繰り返されると、ストーカー行為と認められます。
ただし、同様の行為が何度も行われていない場合、必ずしもストーカー行為とは認められないケースもあります。
もし、待ち伏せされたとしても、一度だけであれば、本当に用事があったり、勘違いだったりする可能性があるからです。

ストーカー行為は犯罪として扱われるだけでなく、被害者に恐怖や不安を感じさせ、心身に深刻なダメージを与える人権侵害でもあります。
上記の行為が繰り返されているのであれば、決して一人で抱え込まず、早めに警察に相談することが大切です。

2000年には、ストーカー被害が社会問題として認識されたことで「ストーカー行為等の規制等に関する法律」、通称「ストーカー規制法」が制定されました。
この法律の目的は、ストーカー行為を規制し、被害者の安全を守ることにあります。
ストーカー行為を行なった加害者は、この法律に基づいて1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処される場合があります。

ストーカー規制法の大きなポイントは、被害者からの申請に基づいて警察が加害者に対し、「警告」や「禁止命令」を出すことができる点です。
警告はストーカー行為を止めるように命じるもので、この警告をされても、なおストーカー行為を止めない場合は、公安委員会よりストーカー行為を止めさせる禁止命令が出ます。
警告には法的拘束力がありませんが、強制力のある禁止命令は、従わないと2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金といった刑罰の対象となります。

ストーカー被害を受けたらまずは警察に相談

ストーカー被害に遭ったとき、最初に行うべきことは警察への相談です。
「被害が軽微だから」「逆恨みされるかも」とためらってしまうこともありますが、ストーカー行為は初期段階で対応しないと、どんどんエスカレートしていく傾向があります。

「逆恨みされるかも」といった心配ごとも含めて警察に相談することで、適切な身辺警護を受けたり、加害者に対して警告を出すことができたり、実際に捜査を始めてもらったりと、さまざまな対策を講じることができます。
まずは最寄りの交番や警察署の生活安全課、または相談窓口を案内している総合相談センターに連絡しましょう。

警察に相談する際には、被害内容をできるだけ詳細に伝えることが重要です。
そのためには、被害の記録を日頃から取っておきましょう。
たとえば、被害に遭った日時や場所、具体的な行為の内容、加害者の特徴などを、メモや日記に記録しておきます。
メールやSNSのメッセージ、LINEのやり取りのスクリーンショット、無言電話や不審な電話の着信履歴、監視カメラの映像なども証拠になります。

ただし、ストーカー被害の初期段階は、加害者の素性がわからないことがあります。
その場合は、警察に援助申出書を提出することで、加害者の連絡先の教示や被害を防ぐための交渉の助言、防犯グッズの貸出し、協力機関の紹介といったサポートを受けることができます。
いずれにせよ、「ストーカーかも」と感じた段階で、すぐに警察に相談することをおすすめします。

もちろん、自身の身に危機が迫っている場合は、ためらわずに「110番」の緊急ダイヤルへ連絡してください。
ストーカー規制法以外にも、住居へ侵入された場合は住居侵入罪、脅迫を受けた場合は脅迫罪など、警察は別の罪状でただちに加害者を逮捕することもできます。

また、警察への相談と並行して、弁護士に相談することも非常に有効です。
弁護士は法律の専門家として、被害者の状況に応じて最適な解決策を提案してくれます。
警察への相談方法や証拠の集め方についてアドバイスをもらえるだけでなく、ストーカー行為によって受けた精神的苦痛や損害に対する慰謝料請求の手続きを進めてもらうことも可能です。

ストーカー被害は放置すればするほどエスカレートします。
「おかしい」と感じたら、まずは警察に相談し、状況に応じて弁護士など、専門家の力を借りることも視野に入れておきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年10月現在の法令・情報等に基づいています。