取引先とのトラブル、企業が最初にすべきことは?

25.09.09
ビジネス【企業法務】
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企業活動において、契約トラブル、未払い債権、労務問題など、さまざまな法的リスクは避けて通れません。
「取引先との契約解釈で対立」「従業員からの残業代請求」「売掛金回収の滞り」など、予期せぬトラブルが発生した際、最も重要なのは「誰に・いつ・どのように」相談するかという初動対応です。
適切な相談先を見極め、必要な情報を整理して迅速に対応することで、問題の早期解決と企業への影響の最小化が可能になります。
今回は、企業が直面しやすい法的トラブルと、相談時の実務的なポイントを解説します。

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企業が直面しやすい法的トラブルとは?

企業が直面する法的トラブルは多岐にわたりますが、特に頻繁に発生するのが以下のようなケースです。
まず、契約関係のトラブルがあげられます。
たとえば、契約解除の条件が不明確なまま業務委託契約を打ち切られた、契約条件の解釈を巡る対立、納期や品質に関する契約不履行などがその典型例です。
具体的には、「急に取引先から契約を解除すると通知された」「合意した仕様と異なる成果物を要求され、代金支払いを拒まれている」といった状況です。

次に多いのが金銭トラブルです。
特に売掛金の回収問題は深刻で、請求書を発行しても支払いが遅延し、督促しても回収できない状況が続くケースがあります。
このような場合、単なる資金繰りの問題なのか、意図的な支払い拒否なのかを見極めることが重要になります。

労務関係のトラブルも企業にとって大きなリスクです。
従業員との解雇トラブル、残業代の未払いに関する請求、職場でのハラスメント問題などが代表的です。
労働法は労働者保護の観点から厳格に運用されるため、企業側が適切な手続きを踏まずに対応すると、未払い残業代に加えて遅延損害金や付加金を請求されるケースなどがあり得ます。

さらに、知的財産に関するトラブルも増加傾向にあります。
商標やロゴの無断使用、秘密保持契約違反、著作権侵害などがその例です。
デジタル化が進む現代において、こうした問題は企業規模を問わず発生しています。

これらのトラブルが起きやすい背景には、いくつかの共通点があります。
最も多いのが、書面での契約があいまいだったケースです。
口約束や簡単な合意書のみで取引を開始し、詳細な条件を明文化していなかったため、後に解釈を巡って対立が生じるパターンです。

また、社内の対応ルールが整備されていなかったことも大きな要因となります。
トラブル発生時の報告体制や対応手順が明確でないため、初動が遅れたり、不適切な対応をしてしまったりすることがあります。

さらに、法務を外注せず独自判断で処理していた結果、法的に問題のある対応をしてしまうケースも少なくありません。
専門知識なしに法的判断を行うことのリスクを軽視していることが、トラブルの拡大につながることがあります。

相談先の選び方と、相談時の準備とは?

トラブル発生時には、まず社内でできる最初の対応を適切に行うことが重要です。
最初に行うべきは、関係する従業員への聞き取りです。
トラブルの発生経緯、関係者、これまでの対応状況を詳細に確認し、事実関係を正確に把握します。
この際、主観的な印象ではなく、客観的な事実を中心に情報を収集することが大切です。

次に、関係書類の保存を徹底します。
契約書、メールのやり取り、議事録、請求書、領収書など、トラブルに関連する可能性のある書類はすべて保管します。
デジタルデータについても、削除・改変されないよう証拠性を保った保存措置を講じます。

対応メモの作成も欠かせません。
誰が、いつ、どのような対応を行なったかを時系列で記録し、今後の対応方針を検討する際の参考資料とします。

社内に法務部がある場合は、まずそこに相談することが基本です。
社内で解決できない場合は、既に顧問契約を結んでいる専門家がいれば、まずそちらに相談することをおすすめします。
顧問弁護士や顧問税理士などがいない場合は、トラブルの性質に応じて適切な専門家を選ぶことが重要です。
労務なら社会保険労務士、契約・法的トラブルなら弁護士、登記関係なら司法書士に相談しましょう。

企業法務の相談窓口としては、日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」があるほか、中小企業庁では「よろず支援拠点」や「ミラサポplus」などの無料相談制度も整備されています。
これらの窓口では、初回相談が無料または低額で受けられることが多く、相談先を決めかねている場合には有効です。

相談時に押さえておきたいポイントがいくつかあります。
まず、時系列、関係者、契約書、メールなどを整理し、相談時に説明しやすい形にまとめておきます。
専門家が状況を正確に把握できるよう、資料を体系的に準備することが重要です。

相談内容については、「どうしてそうなったのか」という原因追及よりも、「何が起きていて、どうしたいか」を明確にすることが大切です。
現在の状況と希望する解決策を具体的に伝えることで、専門家からより実践的なアドバイスを得られます。

企業法務トラブルにおいて重要なのは、初動の迅速性です。
対応が遅れると、解決が難航するだけでなく、企業の信用問題に波及するおそれもあります。
特に労務問題や契約違反は、時間の経過とともに企業の立場が不利になることが多いため、早期の専門家への相談が重要です。
日頃から契約書の整備、対応マニュアルの見直しを行い、信頼できる専門家との継続的な関係を維持しておくことが、トラブルの予防と迅速な解決につながります。


※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。