人材定着と雇用安定を実現! 正社員転換を支援する制度とは

25.09.09
ビジネス【助成金】
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日本の労働市場では、非正規雇用者の割合が高く、安定した雇用の確保が社会的課題となっています。
こうした背景のもと、厚生労働省は「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」を通じて、非正規雇用者の正社員転換を促進しています。
2025年度からは制度の簡素化や重点支援対象者の拡充が行われ、より多くの企業が活用しやすくなっています。
労働者の意欲や能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保するために活用できる助成金です。

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キャリアアップ助成金(正社員化コース)

「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」は、有期契約社員、パート、派遣社員などの非正規雇用者を正社員に転換した企業に対して、国が助成金を支給する制度です。
人材の定着や雇用の安定化を目的としており、特に中小企業にとっては人件費負担の軽減につながる有効な支援策です。

【支給対象事業主】
以下の条件を満たす事業主が対象となります。
・雇用保険適用事業所の事業主
・雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
・雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画書を作成し、管轄労働局長に提出した事業主
・実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
・キャリアアップ計画期間内に計画に記載して正社員化・処遇改善に取り組んだ事業主

中小企業・大企業問わず申請可能ですが、支給額は中小企業の方が高く設定されています。

【対象となる労働者】
該当する労働者の主な条件は以下のとおりです。
これら以外にも条件がありますので詳細は要綱をご確認ください。
・有期雇用労働者または無期雇用労働者(次のアからウのいずれかに該当する労働者)
ア 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6カ月以上受けて雇用される者
イ 6カ月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している者
ウ 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練〔人材開発支援助成金(人材育成支援コース)によるものに限る〕を受講し、修了した有期雇用労働者等であって、支給対象事業主に、賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者等と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6カ月以上受けて雇用される者
・正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者でないこと
・支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者
・正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること

【支給要件】
就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されます。
多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)へ転換等(派遣労働者の直接雇用含む)した場合も正規雇用労働者へ転換等したものとみなされます。

《注意点》
※雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなされます
※新規学卒者で雇い入れから1年を経過していない者は支給対象外です

【支給額】
2025年度の一人当たりの支給額は以下の通りです。
重点支援対象者
有期雇用労働者→正社員 80万円(60万円)
無期雇用労働者→正社員 40万円(30万円)

重点支援対象者以外
有期雇用労働者→正社員 40万円(30万円)
無期雇用労働者→正社員 20万円(15万円)

※括弧内は大企業の金額です。
※1年度1事業所当たりの支給申請上限人数20名(同一対象者の2回目の申請を除く)

重点支援対象者
下記のA~Cのいずれかに該当する者です。
A:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
B:雇入れから3年未満で、次の(1)(2)のいずれにも該当する有期雇用労働者
(1)過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
(2)過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
C:派遣労働者(派遣先で正社員として直接雇用する場合)、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者

【加算額】
1事業所当たりの加算額は以下のとおりです(1事業所1回のみ)。
(1)正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合:20万円(15万円)
(2)多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上の制度)を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合:40万円(30万円)

※括弧内は大企業の金額です。

【終わりに】
非正規雇用者が多く正社員化を進めたい企業や人材定着に課題を感じている企業、人件費の負担を軽減したい企業にとっては助成金を活用し、正社員化することによって従業員のモチベーションの向上や離職率の低下が期待できます。
これらのメリットにより、組織力の強化や業務効率の向上にもつながることが期待できます。
制度内容も拡充され、活用のチャンスが広がっています。
将来の企業成長を見据え、本助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html


※本記事の記載内容は、2025年8月31日現在の法令・情報等に基づいています。