部下のやる気を削ぐ細かい指導『マイクロマネジメント』とは
多くの上司やリーダーは、部下や新人の成長を願い、細部にわたるまで熱心に指導します。
しかし、その熱心さが、もしかしたら「マイクロマネジメント」になってしまうかもしれません。
マイクロマネジメントとは、上司やリーダーが部下の業務に対して過度に干渉し、細かな指示や監視を行うことを指します。
一見、新人の育成に役立つように思えますが、実はこの行為が、部下のやる気を大きく削ぎ、組織全体の生産性を低下させる原因となる可能性があります。
組織に悪影響を与えるかもしれない、マイクロマネジメントについて解説します。
マイクロマネジメントが起きてしまう背景
「マイクロマネジメント」とは、上司が部下の仕事の進め方など、細部にわたるまで口を出し、過剰に管理・干渉する状態を指します。
たとえば、部下が作成する資料のフォントサイズから、メールの文面の一言一句まで指示を出したり、進捗状況を分単位で報告させたりするといった行為がマイクロマネジメントに該当します。
部下に任せたはずの業務を、結局は上司自身が手直ししてしまう、といったケースもマイクロマネジメントの一種です。
ほかにも、タスクの進捗を1日何度も確認したり、決裁不要な業務にも許可を求めさせたりすることも、マイクロマネジメントといえます。
このようなマイクロマネジメントが起きてしまう背景には、上司の「不安」が要因の一つとしてあります。
マイクロマネジメントをしてしまう上司は、自分の思い描く完璧な結果を得るために、部下のやり方が少しでも異なると不安になり、細かく介入してしまいます。
上司には部下に対して管理監督責任があり、部下のミスが自身への評価になってしまうという現状も不安を増幅させます。
逆に、自分の指導に過剰な自信を持っている上司も、マイクロマネジメントを起こしやすいタイプです。
実績のある上司は、過去の成功体験から自分のやり方が絶対的に正しいと思い込み、部下にそのやり方を強要してしまう傾向にあります。
ほかにも、上司自身が多忙であるために、部下とのコミュニケーションの時間が十分に取れず、結果として指示が一方的になり、細かくなってしまうこともあります。
組織全体の業務の進捗が不透明である場合も、部下の仕事を細かくチェックせざるを得ない状況に陥ることがあります。
これらの要因が複合的に絡み合い、結果として部下の自律性を奪うマイクロマネジメントへとつながってしまいます。
上司がよかれと思って行なっている指導が、実は部下のやる気を削いでいる可能性があるということをまずは認識することが重要です。
マイクロマネジメントが組織の生産性を低下
マイクロマネジメントは、部下のモチベーションを低下させるだけでなく、その人の成長機会を奪うことにもなります。
自分で考え、試行錯誤する機会がなければ、部下は成長できません。
失敗から学ぶことも、成功体験を積み重ねることもできず、いつまで経っても上司の指示がなければ動けない「指示待ち人間」になってしまいます。
これは将来のリーダー候補を育成するうえでも、大きな損失といえるでしょう。
また、業務効率の低下と生産性の悪化も避けられません。
上司が部下の業務に過度に介入することで、確認や承認のプロセスが増え、仕事のスピードが落ちてしまいます。
上司自身も部下の仕事の細部にまで気を取られるため、本来集中すべきマネジメント業務や戦略立案に時間を割くことができなくなり、結果として組織全体の生産性が低下します。
このような組織に悪影響を与えるマイクロマネジメントを企業として防ぐためには、上司自身のマネジメントスキルを向上させる必要があります。
前述した通り、マイクロマネジメントをしてしまう上司は、不安を抱えていることが少なくありません。
コーチングスキルを学ばせる、リーダーシップ研修に参加させるなど、上司のマネジメント能力を高め、不安を払拭させることが、結果的に部下の成長を促し、よりよいチームを築くことにつながります。
また、失敗を許容する企業文化の醸成も非常に重要です。
挑戦には失敗がつきものですが、その失敗を過度にとがめるのではなく、「次への学び」としてとらえる文化が組織に根付けば、部下は恐れることなく新しいアイデアを試し、困難な課題にも積極的に取り組めるようになるでしょう。
そして、上司自身も、部下の失敗を自分の責任として受け止められるようになるはずです。
部下を細かく管理することは、一見すると責任感の表れのように見えますが、実際には部下の成長を阻害し、モチベーションを低下させ、ひいては組織全体の活力を奪うことにつながりかねません。
部下一人ひとりが主体性を持って業務に取り組むことができる組織は、変化の激しい現代において、持続的に成長していける強い組織といえます。
まずは組織内でマイクロマネジメントが起きていないか調査し、可視化してみることをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。