『外注費』に要注意! 税務調査で否認されてしまうケースとは?

25.09.09
ビジネス【税務・会計】
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企業が外部の事業者に業務を依頼する際に発生するのが「外注費」です。
外注費は、適切に処理することで会社の税負担を軽減できる一方、税務調査では必ずといってよいほどチェックされる項目の一つです。
なぜなら、外注費は給与と性質が似ているため、混同しやすいものもあるからです。
もし、この外注費が税務調査で給与だと認定されてしまったら、予期せぬ追徴課税が発生するかもしれません。
給与とは税法上の取り扱いが異なる「外注費」について、税務調査で否認されないための対策を解説します。

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外注費と給与の税法上の違い

「外注費」とは、社外の独立した事業者(外注先)に特定の業務を依頼し、その成果やサービスに対して支払う対価のことです。
たとえば、Webサイト制作や専門的なコンサルティングなど、自社で対応できない専門業務を外部に委託する際に発生する費用が「外注費」に該当します。
「外注費」は、原則として源泉徴収義務(個人に対する一定のものは源泉徴収義務あり)や社会保険料の負担が生じませんし、取引先がインボイス登録事業者の場合は、消費税の仕入れ税額控除の対象にもなります。

しかし、税務調査において、この「外注費」が給与に認定されてしまうと、源泉所得税や社会保険料の徴収漏れや、消費税の仕入れ税額控除が認められないことになります。
過去には、元従業員で現在は外注先として仕事を引き受けている人物に支払った金銭が、「外注費」と「給与」のどちらに該当するのか争われた裁判がありました。
この裁判において、裁判所は、この人物の勤務実態は従業員であったときと変わらないため支払った金銭は給与に該当し、仕入税額控除の対象にはならないと判決を下しています。

そもそも給与は、会社と雇用関係にある従業員に対し、会社の指揮命令下で労働を提供した対価として支払われます。
そこには労働時間や場所の拘束があり、会社は源泉徴収や社会保険料の負担の義務を負います。

一方、「外注費」は、独立した事業者との「請負契約」や「業務委託契約」に基づき、特定の成果物や役務の提供に対して支払われます。
外注先は会社の指揮命令を受けず、自己の裁量で業務を進めるため、企業側による労働時間や場所の拘束は原則としてありません。

外注費が給与と判断されるポイントと予防策

税法上は大きく異なる「外注費」と「給与」ですが、税務調査では「外注費」が「給与」とみなされることがあります。
税務署が「外注費」を「給与」と判断する際、着目するのは業務の『実態』です。

たとえば、会社が外注先に対して業務の進め方や具体的な作業内容を細かく管理しており、まるで従業員に指示を出すかのような状況であれば、給与と判断されやすくなります。
また、会社のオフィスへの出社を義務づけたり、特定の勤務時間を指定したりするなど、従業員と同様に場所や時間を拘束している場合も、給与と判断される可能性が高くなります。
その会社の従業員であれば、会社の指揮監督下にありますが、外注先は指揮監督下にないのが原則です。

ほかにも、業務に必要な道具や材料、交通費などの諸経費を会社側が負担している場合も「外注費」が否認される可能性があります。
通常、外注先は自己の責任でこれらの費用を負担する必要があるからです。

また、報酬形態にも注意が必要です。
毎月決まった額が固定で支払われ、欠勤による控除などが行われている場合は、給与と判断されるかもしれません。
成果物やプロジェクト単位での報酬ではなく、月給のような報酬形態は避けるようにしましょう。

こうした要素は単独で判断されるのではなく、総合的に見て判断されます。
また、判断される際は契約書の文言だけでなく、実際の業務がどのように運用されているかが重要になります。
一つでも該当したからといって即座に否認されるわけではありませんが、複数の要素が重なると給与と認定される可能性が高まるので注意しましょう。

税務調査で「外注費」を「給与」と認定されないためには、日頃からの予防策が重要です。
まず、外注先との取引においては、請負契約や業務委託契約を締結し、その内容を明確に記載しましょう。
報酬も月額固定ではなく、成果物ごとやプロジェクト単位で設定するのが理想です。
契約書の内容が実際の業務運用と一致していることが何よりも大切です。

外注先から発行される請求書は、重要な証拠になります。
正式な形式で発行され、内容が具体的であるかを確認し、ほかの見積書や納品書などとあわせて適切に保管しましょう。

もし、税務調査で「外注費」が否認されてしまうと、多額の消費税、源泉所得税、社会保険料の追徴だけでなく、不納付加算税や延滞税といった厳しいペナルティが課される可能性もあります。
このような事態を避けるためにも、契約書の内容と実際の業務運用が外注の実態に合致しているかを意識し、疑わしい点があればすぐに改善し、「外注費」と「給与」をきちんと区別するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。