災害時に備え、知っておきたい法的サポート
災害は、人々の生活だけでなく、事業や契約、借金、相続といった法的な側面にも大きな影響を与えます。
被災後は住宅確保、ローン返済、保険手続、契約見直しなど、さまざまな法的問題が複雑に絡み合って発生することが珍しくありません。
しかし、そうした困難な状況に直面した被災者や中小事業者を支援するため、国や自治体、法律専門家による「法的支援制度」や「無料相談サービス」が数多く用意されています。
今回は、いざという時に知っておきたい法的支援の窓口や制度について解説します。
復旧に向けた、災害直後に気をつけること
災害による被害を受けた場合、最初に行うべきは「り災証明書」の取得です。
り災証明書とは、災害による住宅の被害の度合いを自治体が公的に証明する書類で、市区町村が実施する被害認定調査をもとに交付されます。
この証明書は、その後の各種支援制度を利用するために必要不可欠な書類です。
り災証明書を取得することで、住宅や賃貸契約に関するさまざまな支援制度を利用できるようになります。
代表的なものとして、「被災者生活再建支援金(基礎支援金)」があります。
住宅被害の程度に応じて、全壊世帯・解体世帯・長期避難世帯には100万円、大規模半壊世帯には50万円の支援金が支給されます。
なお、単身世帯の場合は支給額が4分の3になります。
また、「加算支援金」もあり、被災した住宅の再建方法に応じて、上記の金額に加えて、新築・購入の場合は200万円、補修の場合は100万円、賃貸住宅の場合は50万円が支給されます。
住宅ローンの返済が困難になった場合は、「自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)」を利用できます。
これは、破産など法的な手続に頼らず金融機関との合意によってローンの減額や免除が可能となる制度です。
利用には一定条件があるものの、信用情報機関への登録(事故情報)が基本発生せず、預貯金など生活再建に必要な資産を手元に残せる仕組みとなっています。
住宅の応急修理が必要となる場合には、「応急修理制度」が活用できます。
り災証明書で「半壊」以上と認定された世帯に対して、自治体が居室・台所・トイレなど日常生活に必要最低限の部分の修理を業者に依頼し、費用を負担します。
さらに、被災者が生活再建のために利用できる「災害援護資金」(低利または無利子貸付)も用意されています。
被災によって世帯主が重傷を負った場合や、住宅・家財に被害を受けた場合などに、資金の借り入れが可能です。
これらの制度を適切に活用するには、被災直後の混乱のなかでも、り災証明書の取得を最優先に進めることが重要です。
知っておきたい、困ったときに頼れる窓口
災害時の法的問題について専門的なアドバイスが必要な場合は、弁護士への相談や法テラスの活用が有効です。
各地の弁護士会では、災害発生時に無料の災害法律相談を実施しており、相談場所は避難所、仮設住宅、電話、オンラインなど多様で、被災者の状況に応じて柔軟な相談体制を整えています。
相談内容には、契約解除、賃貸トラブル、相続問題、債務整理など、幅広い法的問題が含まれます。
法テラス(日本司法支援センター)では、経済的に困窮している方を対象に、同一問題について最大3回まで無料で弁護士相談を利用可能です。
さらに、相談の結果、弁護士や司法書士への依頼が必要になった場合は、その費用を法テラスが立て替え、分割返済かつ原則無利息で対応しています。
行政・公的機関も重要な相談窓口です。
市区町村の災害対策窓口では、支援金の申請受付、り災証明書の発行、仮設住宅の相談などを一括で扱います。
また、税務署では災害による税金の減免や納税猶予の相談、年金事務所では保険料の免除手続など、被災者支援をそれぞれの専門分野ごとに行なっています。
災害は予測できないものですが、事前に「どこに相談できるか」を把握しておくことが万が一の際の大きな支えになります。
法テラスのサポートダイヤル、各地の弁護士会、市区町村の相談窓口の連絡先を控えておくなど、平時からの情報収集と準備が大切です。
生活再建の足がかりとして、これらの法的支援制度を適切に活用できるよう日頃から備えておきましょう。
※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。