顧客同士の交流の場を作る『コミュニティマーケティング』とは

25.08.26
ビジネス【マーケティング】
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近年、交流を促して、顧客同士のつながりを深める「コミュニティマーケティング」というマーケティング手法が注目を集めています。
オフィシャルの情報よりも、実際に製品やサービスを利用している顧客の『口コミ』が信頼される現代において、顧客がみずから情報を発信して、製品の価値を伝えてくれるコミュニティの存在は、企業にとっても大きな資産となります。
顧客を中心としたコミュニティを通じて、商品やサービスを周知させていくコミュニティマーケティングについて解説します。

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顧客ロイヤリティとエンゲージメントが向上

「コミュニティマーケティング」とは、企業が構築したコミュニティのなかで、顧客同士が連携しながら情報交換を行い、結果的に企業のブランド価値の向上や製品の販売促進につなげていくマーケティング手法のことです。

たとえば、『ソニー』のデジタル一眼カメラ「α(アルファ)」シリーズの愛用者が集まる写真投稿サイト「α cafe」などは、コミュニティマーケティングを実践している代表的なコミュニティサイトです。
「α cafe」は、撮影した写真の投稿はもちろん、メンバーがサークル(掲示板)内で交流できる機能を備えており、商品レビューや撮影に関する質問など、日々自由で活発なコミュニケーションが行われています。

また、『味の素』では、「食」をテーマにしたWebサイト「AJINOMOTO PARK」内に、ファンコミュニティ「味のもト~ク」を開設し、ユーザー同士が参加しながら、レシピの工夫や食生活の知恵などをシェアできるようにしています。

ほかにも、さまざまな企業やメーカーが、顧客同士で交流できるコミュニティを構築しています。

企業がどれほど「この製品は素晴らしい」とアピールしても、実際にそれを使っている顧客が「本当によい」と語る以上の説得力はありません。
顧客が「ファン」となり、さらには普及活動を行う「アンバサダー」として、自発的に情報を発信してくれる場を作り出すことが、コミュニティマーケティングの大きな軸といえます。

また、コミュニティは「顧客ロイヤルティ」と「エンゲージメント」を飛躍的に向上させます。
顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して抱く愛着や信頼のことを、エンゲージメントは思い入れのことを指します。
コミュニティに参加することで、顧客は単なる「消費者」から「仲間」という意識を持つようになります。
共通の興味・関心を持つ人々が集まり、情報交換をしたり、困った時に助け合ったりするなかで、製品やブランドに対する愛着は自然と深まっていきます。

価値の高いコミュニティ構築のポイント

企業がコミュニティを構築するには、入念な計画と継続的な運用が不可欠です。
まずは、コミュニティを構築する前に、コミュニティの目的とゴールを明確にしておきましょう。
たとえば、「新製品のフィードバックを得たい」「顧客のエンゲージメントを高めたい」「顧客からの口コミを増やしたい」など、明確な目的意識を持つことで、コミュニティの方向性が定まり、後の運営にブレが生じにくくなります。
ここで具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定することも有効です。

また、どのような顧客層に集まってほしいのか、そして、その顧客層が最も利用しやすいプラットフォームは何かを検討します。
ターゲット顧客の年齢層やITリテラシー、普段利用しているSNSなどを考慮し、最適な場を選定しましょう。

さらに、健全なコミュニティを維持するためには、明確なルールとガイドラインの設定が必要です。
どのような発言が許されるのか、どのような行動が禁止されるのかを明文化し、参加者全員が快適に利用できる環境を整えましょう。

コミュニティが活性化するためには、参加者にとって魅力的で価値のあるコンテンツや体験を提供できなければいけません。
企業からの情報提供はもちろんのこと、参加者限定のイベント、製品の先行体験、開発者との交流会、メンバー同士が主催する勉強会などを企画することで、参加意欲を高めることができます。

コミュニティは、一朝一夕で形成されるものではありません。
時間をかけて信頼関係を築き、参加者が主体的に関われる環境を継続して整えていく必要があります。
コミュニティの構築には時間と労力がかかりますが、顧客の声に耳を傾け、価値ある場を提供し続けることが、企業価値を高めることにもつながります。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。