事務所の家賃も経費に!『地代家賃』として計上できる、できない?

25.08.26
ビジネス【税務・会計】
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事務所を借りるうえで、通常は毎月一定額の家賃を支払うことになります。
事業活動の拠点となる事務所の家賃は、大きな支出の一つで、この家賃を処理するための勘定科目が「地代家賃」です。
しかし、一口に家賃といっても、その性質や支払い形態によって、経費として認められるものとそうでないものが存在します。
「地代家賃」に含まれる費用の範囲は思った以上に広く、さまざまなケースがあるので、会計処理の際は留意が必要です。
会計処理を行ううえで非常に重要な「地代家賃」について、詳しく解説します。

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「地代家賃」として計上できるもの

「地代家賃」は、その名の通り、土地や建物を借りる際に支払う費用を指す勘定科目です。
具体的には、事務所や店舗、工場、倉庫、土地などの賃料などがこれに該当します。

地代家賃を会計処理するうえで大切なのは、その費用が「事業を行ううえで発生したものである」という点です。
たとえば、会社が事業のために借りている事務所の家賃は「地代家賃」として経費にできますが、社長個人の住居の家賃は、たとえ社長が会社を経営していたとしても、会社の経費としては認められません。

「事業活動に直接関係する費用かどうか」という点が重要な判断基準となり、密接に関わるさまざまな賃料がこの勘定科目に含まれます。
それでは、具体的にどのような費用が「地代家賃」として計上できるのでしょうか。

まず、最もわかりやすいのが、会社が借りている事務所や店舗の家賃です。
これは事業の拠点となる場所の賃料であるため、「地代家賃」として経費にできます。
毎月支払う賃料だけでなく、更新時に支払う更新料も、その契約更新にかかる費用として「地代家賃」や「支払手数料」として処理することができます。
なお、20万円未満の更新料は、「少額繰延資産」として全額を支払った期の費用処理が可能ですが、20万円以上の更新料の場合は、期間に応じて按分して費用処理が必要です。

次に、事業で利用している駐車場の賃料も「地代家賃」として計上することが可能です。
従業員用の駐車場や、社用車の駐車場など、事業に直接関連する駐車場の費用であれば問題ありません。
たとえば、営業担当者が顧客訪問の際に一時的に利用するコインパーキング代は「旅費交通費」として計上されることが多いですが、毎月継続して借りている月極駐車場であれば「地代家賃」として計上されます。

さらに、商品や資材を保管するために借りている倉庫の賃料も「地代家賃」に含まれます。
物流拠点として倉庫を利用している場合、その賃料は事業を運営するうえで不可欠な費用です。
同様に、特定のプロジェクトのために一時的に借りる仮設事務所の賃料や、イベント開催のために借りる会場の賃料なども、その期間の事業活動に直接関連するため、「地代家賃」として計上することができます。

また、土地の上に建てられた建物の賃料だけでなく、土地そのものを借りている場合の賃料(地代)も「地代家賃」として計上します。
自社で建物を建てるために土地を借りたり、資材置き場として更地を借りたりする場合などがこれに該当します。

地代家賃として計上できないもの

「地代家賃」として計上できる費用がある一方で、同じような賃料であっても経費として認められないものや、別の勘定科目で処理すべきものも存在します。
これらの区別をしっかり理解しておくことは、税務リスクを回避し、適切な会計処理を行ううえで非常に重要なポイントになります。

まず、前述した通り、プライベートな利用に関わる家賃は経費にできません。
たとえば、会社の代表者が自宅を事務所としても利用している場合では、事業に使用している部分とプライベートな部分を明確に区別し、事業に使用している部分の家賃のみを「家事按分」によって経費として計上することになります。
この家事按分は、使用面積や使用時間などを合理的な基準で計算し、その割合に応じて費用を按分する方法です。

また、賃貸契約に関連して発生する費用でも、その性質によって地代家賃以外の勘定科目で処理すべきものがあります。
たとえば、契約時に支払う敷金や保証金は、原則として経費にはならず、会計上は「差入保証金」といった資産の科目で処理されます。
ただし、契約書に「返還しない」旨の記載がある保証金や、償却されることが明らかな保証金については、その実態に応じて、経費計上が認められるケースもあります。

また、建物を購入した場合の代金は「地代家賃」ではありません。
建物は固定資産であり、購入した際には資産の科目で計上し、その後、税法で定められた耐用年数に基づいて毎年少しずつ「減価償却費」として経費処理していきます。
同様に、建物の購入にかかった仲介手数料なども、原則として建物の取得価額に含めて減価償却の対象となります。

事務所や店舗、倉庫、駐車場の賃料など、事業活動に直接関連する賃借費用は原則として「地代家賃」として経費計上が可能ですが、敷金や保証金、建物の購入費用、内装工事費用などは、その性質上、別の会計処理が必要となります。
税務調査などの際に指摘を受けても説明できるよう、「地代家賃」を含めた各勘定科目の内容をしっかり把握しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。