建築確認申請は『建築主事』と『指定確認検査機関』のどちらを選ぶ?

25.08.05
業種別【建設業】
dummy

新たな建物を建てる際や、既存の建物を大規模に改修する際に、必要となる手続きの一つに「建築確認」の申請があります。
建築確認は計画している建物が建築基準法や関連法規に適合しているかを確認するための重要なプロセスで、申請先は主に行政の「建築主事」と民間の「指定確認検査機関」があります。
どちらの申請先に申請すればよいのか迷っている建設業者に向けて、それぞれの特徴を解説します。

dummy

費用や交付までのスピードに違いは?

「建築確認」とは、新たに建物を建てる、増改築を行う、または用途を変更するといった場合に、建築基準法や都市計画法、消防法などの関係法令に適合しているかを行政または指定された民間機関が事前にチェックする制度です。
このチェックを行う機関が、行政であれば「建築主事」、民間であれば「指定確認検査機関」となります。

以前は建築主事しか建築確認を行うことができませんでしたが、建築基準法の改正によって、1999年からは民間の指定確認検査機関も建築確認ができるようになりました。
ちなみに、建築主事とは役職のことで、建築主事が属する行政組織を「特定行政庁」と呼びます。

建築主事、もしくは指定確認検査機関による建築確認が済み、「建築確認済証」が交付されて初めて工事に着工することができます。
また、工事が完了した段階で「完了検査」を受ける必要があります。
都道府県や市町村が指定した建築物に関しては、指定の工程が終了した段階で「中間検査」も受けなければいけません。

では、建築確認や完了検査の申請先である建築主事と指定確認検査機関には、どのような違いがあるのでしょうか。

建築主事は、特定行政庁に配置されている公務員で、建築確認や検査の業務を担当しています。
建築主事に申請する場合、申請できる建築物はその所在地の行政区内に限られているため、建築主事は地域の特性や法令の運用状況を熟知しており、地域の条例や慣習に深く根ざした審査を行います。
費用面では、行政の手数料規定に基づいているため、比較的安価です。

一方、指定確認検査機関は、国土交通大臣や都道府県知事から指定を受けた民間の機関です。
こちらは企業組織であり、申請業務の迅速性や利便性を重視する傾向があります。
民間ならではの競争原理が働き、スピーディーな審査やきめ細やかなサービスを提供します。
また、指定された業務エリア内であれば、全国どこでも申請が行えるため、広範囲にわたるプロジェクトを手掛ける建設会社にとっては、統一された基準で申請できるという利点もあります。
ただし、費用面では建築主事よりも高額になる傾向があります。

9割以上が指定確認検査機関を選択

建設会社が手掛けるプロジェクトのなかには、建築主が国、都道府県、または特定行政庁を置く市町村の場合もあります。
こうした公共性の高い建築物については、民間ではなく、行政の建築主事に建築確認申請を行うことが原則とされています。
これは、公共の建物が社会に与える影響の大きさを考慮し、より厳格な審査と、行政による責任体制を明確にするためです。
行政機関ならではの、より詳細な事前相談や、微細な調整が必要になるケースもあるため、事前準備をしっかりと行うことが重要になります。

一方、公共建築物以外の多くの民間の建築プロジェクトでは、申請先として指定確認検査機関が選ばれています。
国土交通省の発表によれば、2022年度の申請件数は9割以上が指定確認検査機関でした。

なぜ、建築主事よりも費用が高い傾向にある指定確認検査機関が選ばれているのでしょうか。
その理由の一つは、審査のスピードです。
前述した通り、迅速な対応が求められる指定確認検査機関は、建築主事と比べて確認済証の交付が比較的早く行われる傾向にあります。
建設プロジェクトは、着工までのスケジュールが厳しく定められていることが多く、このスピード感は建設会社にとって大きなメリットになります。
確認作業が滞ることで発生する工期の遅延やそれに伴うコスト増のリスクを軽減することにもつながるため、多くの企業が指定確認検査機関を選択しているということです。

また、業務エリア内であれば全国どこでも申請ができ、電子や郵送での申請に対応しているという利便性の高さも、指定確認検査機関が選ばれる理由です。
一方、建築主事の電子申請の導入状況は、自治体ごとにばらつきがあるのが現状です。

申請先に建築主事と指定確認検査機関のどちらを選ぶべきかについては、プロジェクトの性質や優先順位によっても異なります。
費用や工期なども踏まえながら、十分に検討しましょう。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。