『サポカー(サポートカー)』と限定免許制度で交通事故は防げる?
高齢ドライバーの運転は、家族にとっても大きな心配事の一つです。
しかし、運転免許の返納は高齢者本人の生活スタイルを大きく変えることになり、なかなか返納を促しづらいという人も少なくありません。
もし、運転に不安を抱える高齢者が家族にいるのであれば、選択肢の一つとして検討したいのが「安全運転サポート車」、通称「サポカー(サポートカー)」への乗り換えです。
サポカーは、ドライバーの安全運転を助けてくれる先進技術が搭載された車のことを指します。
今回は、高齢者の交通事故を防ぐためのサポカーの有用性について、解説します。
高齢ドライバーの交通事故防止に役立つサポカー
近年、ニュースなどで高齢ドライバーによる交通事故の報道を目にする機会が増えています。
警視庁の調査によれば、65歳以上の高齢ドライバーの交通事故発生件数は、一時期よりは下がったものの、近年は2020年が4,246件、2023年は4,819件と横ばいからやや増加傾向にあります。
こうした交通事故のなかでも、特にブレーキとアクセルの踏み間違いによる店舗などへの突入事故や、逆走による事故といった、一歩間違えれば重大な結果を招きかねない事故が問題となっています。
運転経験が長くても、加齢に伴う身体機能の変化は避けられず、視力や判断能力の低下、とっさの操作ミスなどが事故につながるケースがあります。
高齢者本人の自覚がないまま、運転能力が衰えている可能性も十分に考えられます。
このような状況に対し、国をあげて高齢ドライバーによる交通事故の発生防止・被害軽減対策が進められています。
そして、交通事故対策のなかでも、国が力を入れているのが、「安全運転サポート車(サポカー)」の普及です。
サポカーは、交通事故を未然に防いだり、万が一事故が起きてしまったとしてもその被害を最小限に抑えたりするための先進技術が搭載された車のことを指します。
たとえば、サポカーには、前方の車や歩行者を検知し、衝突の危険がある場合に自動でブレーキをかける「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」や、駐車場などでアクセルとブレーキを踏み間違えた際に、急な加速を抑える「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」などが搭載されています。
これらの機能は、ドライバーの不注意や操作ミスを補い、危険な状況からドライバーを守る役割を担います。
運転時における人間の判断や操作には限界がありますが、機械は常に正確な判断を下し、瞬時に介入することができます。
機械の介入により、ヒューマンエラーによる事故のリスクを大幅に減らすことが可能になるということです。
サポカーには、大きく「サポカー」と「サポカーS」の2つの種類があり、サポカーSは搭載されている安全機能によってさらに「サポカーSワイド」「サポカーSベーシック+」「サポカーSベーシック」の3つの区分があり、それぞれ搭載されている機能の種類や数で分類されます。
なかでも「サポカーSワイド」は、衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置に加えて、車線逸脱警報装置や先進ライト(自動切替型前照灯など)も装備されており、より多角的に運転をサポートしてくれるサポカーといえます。
限定免許の新設と高齢者にすすめるポイント
サポカーの普及を後押しするため、2022年5月13日施行の改正道路交通法に基づき、新たな免許制度として「サポートカー限定免許」が新設されました。
これは、運転免許証を返納する代わりに、一定の安全機能を備えた車両に限定して運転を継続できる制度です。
この制度の大きなメリットは、免許返納に抵抗がある高齢ドライバーでも、安全な運転を続けられる点にあります。
たとえば、普段の買い物や通院など、必要最低限の移動手段を確保したいけれど、複雑な運転操作やとっさの判断に不安があるという高齢者にとって、サポートカー限定免許は非常に有効な選択となります。
ただし、サポートカー限定免許で運転できるのは、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置が搭載された普通自動車に限られます。
すべてのサポカーが対象となるわけではないため、免許の切り替えを検討する際には、現在、所持している車が対象になるのか、もし対象とならない場合は買い替えが必要となるのかなどを確認しておく必要があります。
もし、高齢の両親などに子ども世代がサポカーへの乗り換えや免許の切り替えをすすめる場合には、「安心して長く運転を続けるために、こんな方法もあるよ」という提案の姿勢で話を進めることが大切です。
また、いきなり購入や免許の切り替えをすすめるのではなく、まずはディーラーに一緒に行ってみて、サポカーに試乗してみてもよいかもしれません。
実際にサポカーの機能を体験してもらうことで、安全性能を実感し、納得して乗り換えてもらえる可能性が高くなります。
高齢ドライバーによる交通事故は社会的な課題の一つですが、サポカーは解決に向けたツールの一つになります。
もし、家族のなかに高齢ドライバーがいて、運転に不安を感じているのであれば、サポカーについて話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。