集客にも大きく影響する? 店舗の移転という選択肢

25.07.01
業種別【飲食業】
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飲食店の経営は、常に日々の売上や集客に気を配る必要があります。
どんなにおいしい料理やすばらしいサービスを提供していても、立地や店舗の状況によっては、思うような結果が出ないこともあります。
そのようなときに、一つの選択肢として浮上するのが、「店舗の移転」です。
移転は、店舗の場所を変えるというだけでなく、店のコンセプトやターゲット層、そして集客戦略を根本から見直す絶好の機会となります。
今回は、移転を考えるきっかけとなる要因から、移転がもたらす集客面でのメリットや実際のプロセスなどを解説します。

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オーナーが移転を考えるきっかけとは?

移転を考えることになるきっかけは飲食店によってさまざまですが、一つに、現在の店舗の手狭さからくる「拡張移転」があります。
お客が増えて、席数が足りなくなったり、厨房が手狭で効率的なオペレーションがむずかしくなったりすると、売上や顧客満足度に直接的な影響が出てしまうため、機会損失を防ぐ目的で、より広い店舗への移転を検討するというケースです。

また、経営改善のための移転も少なくありません。
開店当初は活気があった場所でも、時間の経過と共に人通りが減ったり、周辺の競合店が増えたりすることがあります。
状況の変化と共に現在の立地では十分に集客できないと感じている場合は、移転を考えてもよいかもしれません。
さらに、アクセスが悪かったり、駐車場がなかったりすることで、集客が伸び悩んでいる店も、経営改善のために移転を検討するのも選択肢の一つです。

ほかにも、店舗の老朽化や賃貸契約の更新、業種の変更、事業規模の縮小なども、移転を考えるきっかけとなります。
まさに移転は、現状維持ではむずかしい新たな可能性を追求するための、経営戦略の一環といえるでしょう。

売上アップや業務の効率化などが期待できる

店舗の移転には大きな労力を伴いますが、それに見合うだけのメリットがもたらされる可能性もあります。
現在の店舗が抱える立地の問題を解消し、より集客が見込める場所に移ることで、新規顧客を獲得できるかもしれません。
人通りの多い駅前や、ターゲットとする顧客層が多く集まる商業施設内、あるいは駐車場が充実したロードサイドなど、立地を最適化することで、お客の目に触れる機会が増え、集客につながりやすくなります。
これまでリーチできなかった層のお客を呼び込むことができるため、売上全体の底上げが期待できるでしょう。

現在の店舗が手狭であったり動線が悪かったりする場合、移転することでオペレーションの効率化も図れます。
厨房や客席のレイアウトを最適化し、スタッフがスムーズに動けるような設計にすることで、人件費の削減やサービスの質の向上につなげられます。
お客にとっても快適な空間となるため、顧客満足度の向上への貢献が期待できるでしょう。

また、現在の店舗の家賃が高過ぎる場合は、より適正な賃料の場所を見つけることで、固定費を削減し、経営を圧迫していた要因を取り除くことができます。
もちろん、移転には初期費用がかかりますが、長期的に見てランニングコストを削減できる可能性があります。

リスクを減らすために必要な移転プロセス

メリットの多い店舗の移転ですが、一方で適切なプロセスを踏まないと、効果が得られないばかりか、リスクを抱えることにもなりかねません。
必要な手順としては、まず移転の目的とコンセプトを明確にしましょう。
なぜ移転するのか、移転先でどのようなお店にしたいのか、ターゲットは誰なのか、どのようなメニューを提供するのかなどを具体的に洗い出します。
この段階で明確なビジョンを持つことが、後の物件探しや内装工事、資金調達など、すべての意思決定の基準となります。

目的やコンセプトがあいまいなままだと、どの程度費用がかかるのかの算定もままなりません。
移転には新しい物件の取得費用をはじめとして、内装工事費、厨房機器の購入費、引越し費用、新店舗での運転資金など、多額の費用がかかります。
これらの費用を正確に算出したうえで、自己資金で賄えるのか、あるいは融資が必要なのかを検討しましょう。
融資を受ける場合は、金融機関との交渉や事業計画書の作成を移転計画の最初の段階で行なっておくとスムーズです。
また、原状回復のための費用や中途解約の際の違約金など、いわゆる旧店舗の「閉店費用」がかかることも頭に入れておく必要があります。

こうした資金計画と並行して、移転先の物件探しも行います。
コンセプトに合った立地条件、広さ、賃料、建物の状態、周辺環境などを考慮しながら、複数の候補物件を比較検討することが重要です。

あわせて、旧店舗の廃業手続きと新店舗の開業手続きが必要です。
飲食店が店舗の場所を変えることは行政の手続き上、今の場所にある店舗を閉店させ、新しい場所で別の店舗を開店させる扱いになるためです。
また、これらの手続きと並行してお客への周知、近隣への挨拶、スタッフの再教育なども行わなければいけません。

すべてが同時並行で進む飲食店の店舗の移転は、新規店舗の開業のみの場合よりも多大な労力がかかります。
状況によっては、既存の店舗で経営改善を行うほうが効果的なケースもあるため、早急に決断を下さず、十分に検討を重ねることが大切です。


※本記事の記載内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。