介護事業所で必要なパワハラ対策とは!?

25.07.01
業種別【介護業】
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介護現場では、近年、利用者や家族からのカスタマーハラスメントが問題視されていますが、職場でのパワーハラスメント(以下、「パワハラ」)に対する相談件数についても大幅に増加しており、パワハラ対策が急務となっています。
「令和5年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について」によると、パワハラ防止法として制定された労働施策総合推進法に関連する相談件数は、62,863件(前年度比23.6%増)発生し、パワハラに関する相談が最多でした。
また、違反による是正指導件数も前年の2,546件から3,746件へと約1.5倍に増加しています。

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職場におけるパワハラとは?

職場におけるパワハラとは、職務上の地位や立場、権限など優越的な関係を背景にして、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または、労働者の職場環境を悪化させる行為をいい、具体的なパワハラ行為は以下のように類型化されています。

<パワーハラスメントの6類型>
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

職場では、一般的には業務上の地位を利用したパワハラが起こりやすく、上司と部下、先輩と後輩などの上下関係により、立場の弱い部下や後輩がパワハラの被害者となりやすい傾向にあります。
しかし、介護現場ではさまざまな職種や年代の従業員が混在しているため、同僚間でのパワハラや、後輩から上司・先輩に対する逆パワハラのようなケースもみられます。
たとえば、あいさつや発言を無視したり、同僚間で仲間外れにしたりするなど人間関係から切り離すケースや、故意に必要な情報を共有せずに利用者とのトラブルを発生させたり、ミスを引き起こさせたりするケースなどがあります。

相談があった際に事業所がとるべき対応とは

従業員からパワハラ被害の相談があった場合、厚生労働省のパワハラ防止指針では、以下の対応を講ずることが求められています。

(1)事実関係の迅速かつ正確な確認
相談窓口の担当者などが、相談者および行為者の双方から事実関係を確認すること。
その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなど、その認識にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取するなどの措置を講ずること。

(2)被害者に対する適正な配慮の措置の実施
職場においてパワハラが生じた事実が確認できた場合には、速やかに被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
たとえば、被害者と行為者間の関係改善に向けての援助や、双方を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件に関する不利益の是正、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応などの措置を講ずること。

(3)行為者に対する適正な措置の実施
職場においてパワハラが生じた事実が確認できた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
たとえば、就業規則やパワハラ防止規定などに基づき、行為者に対して必要な懲戒処分や措置を講ずること。

(4)再発防止措置の実施
あらためて職場におけるパワハラに関する方針を周知・啓発するなどの再発防止に向けた措置を講ずること。
なお、職場におけるパワハラが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
たとえば、職場におけるパワハラなどの撲滅について、事業主の方針やパワハラ行為者に対して厳正に対処する旨の方針などを、社内報、パンフレット、社内サイトなどにあらためて掲載し、配布すること。
また、労働者に対して職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習などをあらためて実施すること。

従業員間のパワハラは、コミュニケーション不足や高ストレス環境などが原因で発生しやすくなります。
介護現場では、人手不足による職員の過重負担や世代間ギャップなど、慢性的な課題があげられますが、これらの課題を放置してしまうと、従業員間のストレスを高め、パワハラの要因となるおそれがあります。
そして、従業員間でのパワハラが発生している事業所では、離職率が高くなるため、さらに職場環境は悪化し、利用者への安定した介護サービスの提供がむずかしくなります。
事業所側としては、こうした悪循環を断ち切るためにも、パワハラが発生している事実の早期確認や発生原因の究明を実施し、早急に職場環境を改善しなければなりません。
まずは、事業主がパワハラ防止に関する明確な方針を示し、従業員の意識改革を促すために相談体制の整備、研修実施などコミュニケーションを取りやすい環境を構築することから始めてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。