要注意! インフルエンサー広告規制の最新動向と取るべき対策
近年、SNSの普及と共にインフルエンサーマーケティングは企業の重要な広告戦略となっています。
しかし、その市場拡大に伴い、消費者保護の観点から法規制が強化されています。
とりわけ、ステルスマーケティングと呼ばれる「消費者が広告であることを認識できない広告」の取り締まりは厳格化されています。
今回は、最新の法規制やガイドラインを紹介しながら、インフルエンサーを起用する際に注意すべきポイントを解説します。
インフルエンサー広告規制の現状
インフルエンサー広告の規制で、まず話題に上がるのはステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」です。
ステルスマーケティングとは「広告であることを隠した広告」を指し、たとえば、企業から広告案件として依頼されているにもかかわらず、インフルエンサーが一般消費者を装って特定の商品を紹介することなどが、ステマに該当します。
ステマに対する規制は年々強化されており、2023年10月1日からは景品表示法違反の対象となりました。
そのため、企業がインフルエンサーを通じて商品やサービスを宣伝する場合、それが広告であることを明確に表示する義務が厳格化されています。
消費者庁は「一般消費者が広告であることを認識できないような表示」をステルスマーケティングと定義しており、虚偽・誇大広告とみなされるケースを明示して取締りを強化しています。
具体的には、商品・サービスの提供を受けたインフルエンサーが、その事実を明示せずに投稿することは、景品表示法上の優良誤認や有利誤認に該当する可能性があります。
また、特定商取引法の適用範囲も拡大しています。
インフルエンサーによる商品の販売促進が、特定商取引法の「広告」に該当するケースが増えており、広告主だけでなく、広告を行うインフルエンサー自身にも法的責任が及ぶ可能性が高まっています。
なお、海外では日本に先駆けて、広告の透明性を確保するための厳格なルールが導入されています。
たとえば、アメリカでは、インフルエンサーが企業からの広告案件であることを明示せずに商品を宣伝したことで、該当するインフルエンサー10名にアメリカ連邦取引委員会から警告文が送付されています。
これらの国際的な規制強化の流れは、今後、日本国内の法規制にも影響を与える可能性があり、企業は国内だけでなくグローバルな視点での対応が求められています。
インフルエンサーを活用する際には、最新の法規制動向を把握し、適切な対応を取ることが企業のリスク管理においては不可欠です。
企業が取るべき対策とは
インフルエンサーマーケティングにおいて、法的リスクを回避するためには、企業側で具体的な対策を講じる必要があります。
(1)インフルエンサーの過去の投稿内容を必ずチェックする
企業イメージと合致するかどうか、広告規制を適切に理解したうえで遵守しているかなどが確認ポイントとなります。
加えて、過去に炎上した経験があるかどうかも重要な判断材料です。
インフルエンサーの言動によって企業イメージが損なわれるリスクを事前に把握しておくことで、不測の事態を防ぐことができます。
(2)契約時は、広告表示に関する条項を明確に定める
投稿内容における「PR」「広告」などの表示方法を具体的に指定し、ステルスマーケティングにならないように注意を払いましょう。
また、契約にあたっては、法務部門との連携のうえ、インフルエンサー側が不適切な表現を用いたり誤解を招く表示をしたりした場合の対応や賠償責任、そして投稿内容の著作権や二次利用の権利について、あらかじめ契約で定めておくことで、万が一のトラブルを回避しやすくなります。
(3)広告表示のチェック体制を構築する
投稿前の確認プロセスを定め、法令遵守の観点から内容を精査しましょう。
とりわけ広告であることが明確に示されているかどうかは重要な確認ポイントです。
また、投稿後もモニタリングを継続し、不適切な投稿がないか確認する体制を整えましょう。
万が一、炎上などのトラブルが発生した場合も、対応フローを事前に策定しておくことで、迅速かつ適切な対応が可能となります。
(4)従業員への教育を徹底する
広告規制に関する研修を定期的に実施し、従業員の法的リスクに対する理解を深めるのも有効です。
実施する場合は、マーケティング部門だけでなく、関連部署の従業員にも参加を促しましょう。
昨今は従業員自身もSNSアカウントを持っていることがほとんどです。
社内でソーシャルメディア利用に関する規程を策定し、従業員が無意識のうちにステルスマーケティングに関与することを未然に防ぐためのルールを明確にしておきましょう
(5)最新情報を収集する
インフルエンサーマーケティングの規制は常に更新されています。
消費者庁や公正取引委員会などの関連機関のウェブサイトを定期的にチェックし、法規制の動向を把握しましょう。
また、業界団体が主催するセミナーやイベントに積極的に参加し、最新の事例や対策について情報収集を行うことも効果的です。
インフルエンサーの起用にはリスクもありますが、企業にとっては非常に強力なマーケティング方法の一つです。
適切な対策を講じることで、効果的なインフルエンサーマーケティングを実施することができます。
単なるリスク回避ではなく、消費者からの信頼獲得にもつながる重要な取り組みであることを認識しましょう。
※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。