シニア層にリーチする『シニアマーケティング』で活路を開く

25.03.11
ビジネス【マーケティング】
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高齢化の進む日本においては、シニア層の存在感がますます高まっています。
いまや65歳以上の人口が総人口の3割近くを占め、シニア層を無視したビジネス戦略は成立しづらくなりました。
シニア市場も拡大を続けるなかで、企業が率先して取り組まなければならないのが、「シニアマーケティング」です。
シニアマーケティングとは、シニア層特有の価値観や行動パターンを理解し、的確なアプローチを取ることで、新たな市場を開拓するマーケティング施策を指します。
若年層とは異なるアプローチが必要になるシニアマーケティングのポイントについて解説します。

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拡大を続けるシニア市場の可能性

制度や機関によって異なるものの、日本では65歳以上をシニア層と定義するのが一般的です。
日本は世界有数の超高齢社会であり、総人口が減少するなかで65歳以上の高齢者人口は増え続けています。
総務省が2024年9月に発表した65歳以上の人口は約3,625万人と過去最多を記録しました。
医療の進歩や生活水準の向上により健康寿命も延びており、多くのシニアが積極的に社会活動に参加しています。
また、日本のシニア層は年金収入や貯蓄など、一定の経済力を持つ層もあり、消費活動も活発な傾向にあります。

シニア市場は拡大が続いており、将来的には市場規模が100兆円を超えるという見立てもあります。
シニア層はさまざまな分野で消費意欲が高く、またインターネットやスマートフォンなどの普及により、シニア層のオンラインショッピングも増加しており、その購買力はますます拡大していくでしょう。

シニア層をターゲットとしたシニアマーケティングを成功させるためには、単に高齢者向けの商品やサービスを提供するだけでなく、シニア層の価値観やライフスタイルを理解し、ニーズに合わせた商品やサービスを提供しなければいけません。

シニア市場を見てみると、特にグルメ、健康、旅行など趣味に関連する分野の需要が大きくなっています。
消費者庁が行なった2022年度の消費者意識基本調査でも、高齢者が「現在意識的にお金をかけているもの」のトップは「食べること」でした。
また、ほかの世代よりも医療にお金をかけている人の割合が高く、全体の18.4%に対し、65歳から74歳までが23.3%、75歳以上が29.2%と、高年齢ほど高くなっています。
経済的に余裕のある人もいるため、旅行や趣味にお金をかけられるのもシニア層の特徴といえるでしょう。

自社がシニア層の関心を向けている分野に参入できるかどうかという視点は、シニアマーケティングを成功させるための大切なポイントになります。

また、シニア層と一口にいっても、趣味にも消費行動にも意欲的な「アクティブシニア」、活発ではあるものの、消費行動には消極的な「ディフェンシブシニア」、健康や将来に不安を抱える「ギャップシニア」、要介護状態の「ケアシニア」などの区分があります。
年齢や健康状態、ライフステージ、価値観などに応じて細かく分類されるため、それぞれのグループに合ったアプローチを行うことが大切です。

シニア層が重視するのは価格よりも品質

シニア層は品質や信頼性を重視するという特徴があり、若年層よりも「失敗したくない」という思いが強い傾向にあります。
価格よりも価値に重きを置くという特性を理解したうえで、マーケティング施策を展開していかなければいけません。

一方、提供する商品やサービスを喜んでもらうことができれば、根強いファンになってくれる可能性もあります。
シニア層は一度信頼を得たブランドを長く愛用する傾向にあり、ニーズに合わせた商品展開を継続して行うことで、長期的な関係を築くことができます。
シニア層との良好な関係を築くことは、企業のブランドイメージの向上にもつながるでしょう。

ただし、注意したいのは、たとえ高品質な商品やサービスを提供したとしても、わかりづらかったり、使いづらかったりすると、シニア層は離れていってしまうということです。
文字が大きくて明るい色の見やすいパッケージデザインや広告、親切で丁寧なカスタマーサービスなど、高齢者にとってのわかりやすさ、使いやすさを徹底的に追求することが成功のカギになります。

さらに、近年のシニア層はテレビや新聞などのマスメディアだけでなく、インターネットやスマホも活用するため、複数のメディアからリーチすることで、より多くのシニア層に訴求することができます。
特に、インターネットに慣れ親しんだシニア層は、実績や評判などのインターネット上の情報を参考にして、じっくりと商品やサービスを選ぶ傾向にあるので、口コミマーケティングに注力することが効果的です。

シニア市場への参入は新たなビジネスチャンスの創出だけではなく、社会貢献や企業にとって新たな成長の機会となる可能性を秘めています。
ニーズを深く理解しつつ、シニア層に喜ばれるようなマーケティング施策を行なっていきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。