通勤でも罰則の対象に!? 知らないと危険な自転車の新ルール
近年、自転車による交通事故が深刻な社会問題となっています。
警察庁の統計によると、2023年には、自転車が関係する事故が全交通事故の約2割を占める事態となっており、増加傾向にあります。
これを受け、2024年11月1日より道路交通法が改正され、自転車利用者に対する規制が大幅に強化されました。
今回は、改正道路交通法でどのような変更があったのか、また今後の自転車利用に際しての注意点を解説します。
危険行為が対象! 罰則強化の内容とは
今回の改正道路交通法では、(1)自転車の「ながらスマホ」に対する罰則の強化、(2)酒気帯び運転の罰則の新設が主となります。
(1)自転車の「ながらスマホ」に対する罰則の強化
改正法では、スマートフォンなどを操作しながらの運転(「ながらスマホ」)が明確に禁止され、スマホでの通話はもちろん、運転中にスマホに表示された画面を注視することも違反の対象となりました。
なお、自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも、手に持った場合と同じく、禁止となります。
違反した場合、「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」(「ながらスマホ」をした場合)もしくは「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」(「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合)が科せられる場合があります。
(2)酒気帯び運転の罰則の新設
飲酒して自転車を運転することはこれまでも禁止されており、酩酊状態で運転する「酒酔い運転」が処罰の対象でした。
「酒酔い運転」とは、アルコールの影響により正常な運転が困難であるとされる状態のことです。しかし、今回の改正で、「酒気帯び運転」となる血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上または呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で運転した場合についても罰則の対象となりました。
違反した場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる場合があります。
加えて、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供したり、自転車を提供したりすることも禁止となり、罰則が設けられています。
これにより、飲酒運転を助長する行為自体も取り締まりの対象となりました。
その他の禁止行為としては、傘を差しながらの運転(5万円以下の罰金など)や、イヤホンやヘッドホンを使用するなどして安全な運転に必要な音または声が聞こえない状態での運転(5万円以下の罰金など)、2人乗り(5万円以下の罰金。都道府県公安委員会規則の規定で認められている場合を除く)などがあります。
いずれも重大な事故につながりかねない危険な行為になりますので、絶対にやらないようにしましょう。
なお、「ながらスマホ」や「酒気帯び運転」などの危険行為を繰り返す自転車利用者に対しては「自転車運転者講習」の受講が義務づけられています。
3年以内に2回以上、自転車運転者講習の対象とされている「危険行為」で検挙された場合には、都道府県公安委員会から受講命令が出され、命令を無視して受講しない場合は5万円以下の罰金が科されます。
また、改正法では、いわゆる「青切符」による取り締まりの導入が規定されました。
これにより、自転車の交通違反について、利用者は反則金を納付することになります。
青切符による取り締まりは16歳以上が対象となり、113種類の違反行為を適用範囲としています。
「ながらスマホ」や「酒気帯び運転」のほか、信号無視や一時停止無視など、重大な事故につながる可能性のある違反行為に対しては、重点的に取り締まることが予定されています。
青切符による取り締まりは、2026年5月までに施行される予定です。
自身の安全を守る! 取るべき対策とは
自転車利用に伴うリスクは、交通事故の被害に遭う場合だけではありません。
近年、たびたび話題になるのが自転車事故を加害者として起こしてしまった場合の高額賠償事例です。
たとえば、自転車運転中に歩行者と衝突し、相手に重傷を負わせてしまった場合、数千万円規模の賠償を求められるケースも発生しています。
特に注意が必要なのは業務使用時の事故です。
業務中の自転車事故については、個人向けの自転車保険では補償されないことがあるので、自転車を業務で使用する場合は、事業者向けの自転車保険に加入しているかどうかをちゃんと確認しておきましょう。
また、個人の利用であっても、万が一の事故に備えて、自転車保険への加入も検討しましょう。
多くの自治体で自転車保険への加入が義務化されているので、自身の保険内容が十分なものになっているかどうかを併せて確認することをおすすめします。
警察庁の調査によると、自転車事故で亡くなった人の約8割、けがをした人の約7割が何らかの交通ルール違反をしていたことがわかっています。
このことからも、基本的なルールの順守がいかに重要であるかがわかります。
特に意識したいのが「自転車安全利用五則」です。
(1)自転車は車道が原則、左側を通行/歩道は例外、歩行者を優先
(2)交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
(3)夜間はライトを点灯
(4)飲酒運転は禁止
(5)ヘルメットを着用
今回の法改正により、自転車は、自動車と同様、事故を起こせば重大な結果につながる可能性が高い交通手段であることが、あらためて明確になりました。
自転車利用者一人ひとりが、この認識を持って運転することが求められています。
これを機に、今一度、自身の自転車利用習慣を振り返り、安全対策の見直しを行なってみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。