『偽装フリーランス』に要注意! 労働者とフリーランスの違いとは?

25.03.11
ビジネス【労働法】
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働き方の多様化が進んだことで、近年はフリーランスとして働く人が増えています。
一方で、本来はフリーランスであるにもかかわらず、業務委託先から時間や場所について、労働者と同等の制約を受ける「偽装フリーランス」の問題も深刻化しています。
偽装フリーランスには社会保険への加入や労働時間に関する規制が受けられないなど、さまざまな問題が内包されています。
また、企業が偽装フリーランスとして労働者を雇用すると、法的な責任を問われる可能性もあります。
偽装フリーランスの問題点や労働者とフリーランスの違いについて、あらためて理解を深めましょう。

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フリーランスと労働者の契約形態の違い

フリーランスとは、企業に雇用されることなく、仕事ごとに事業者と契約を結んで業務を遂行する働き方のことで、総務省では「実店舗がなく、雇人もいない自営業主又は一人社長であって、その仕事で収入を得る者」と定義しています。
2022年の「就業構造基本調査」では、初めてフリーランスの実態が明らかになり、日本では209万人がフリーランスを本業として働いていることがわかりました。
仕事をしている有業者に占める割合は3.1%となっており、職業別では「建設業」のフリーランスが50万人と最も多く、次いで「学術研究、専門・技術サービス業」が37万人となっています。

人材の活用という点で、フリーランスと契約を結ぶ事業者も増加傾向にあり、2024年11月1日からは、取引の適正化と就業環境の整備を目的に「フリーランス新法」がスタートしました。
しかし、このフリーランス新法でも守られないのが、偽装フリーランスという存在です。

偽装フリーランスとは、フリーランスであるにもかかわらず、労働者と同じような条件で働くことを指します。
そして、偽装フリーランスには、労働基準法などの労働法の保護を受けられないという問題があります。
労働法が保護するのは、あくまで労働者に限られ、フリーランスは保護の対象外となるためです。

そもそもフリーランスと労働者は契約形態や根拠となる法律が異なります。
事業者がフリーランスに仕事を依頼する場合は、「民法」に基づいて業務委託契約を結びますが、労働者を雇用する場合には「労働契約法」に基づいて雇用契約を結びます。

雇用契約によって雇用した労働者には、就業時間や就業場所などを指揮監督することが可能ですが、フリーランスに対しては指揮監督を行なってはいけません。
働く時間や場所などはフリーランス側が任意で決めます。
また、労働法が適用されないということは、長時間労働や残業の上限などの規制を受けず、労災や最低賃金なども適用されないということでもあります。
この労働法の規制や適用を受けないという部分に、偽装フリーランスの大きな問題があります。

偽装フリーランスのリスクと判断するポイント

偽装フリーランスの具体例としては、事業者の実質的な指揮監督下で働いているにもかかわらず業務委託契約を結んでいるケースや、労働時間や業務内容が労働者とほぼ同じであるにもかかわらずフリーランスとみなされているケースなどがあります。

偽装フリーランスの実態は労働者であるものの、表向きはフリーランスであるため、社会保険に加入できず、老齢年金や健康保険などの社会保障を受けられません。
また、労働時間や休日に関する規制が適用されないため、長時間労働や過労死のリスクが高まる可能性もあります。

偽装フリーランスという働き方は労働者にとってデメリットしかありませんが、事業者にとっては時間や場所などを細かく指示できて、社会保険料など事業主が負担しなくて済むというメリットがあります。
しかし、労働基準監督署の調査が入って是正措置を命じられる可能性があるうえ、労務トラブルになり、訴訟に発展するかもしれません。
安く使える便利な労働力として、安易に偽装フリーランスを使うべきではありません。

業務委託契約を結んでいても、実質的な労働者とみなされるのは「指揮監督下にあるかどうか」という点で判断されます。
働く時間や場所を指定している場合はもちろん、業務を断る許諾の自由を与えていなかったり、業務の内容や仕事の進め方について細かく指示していたりする場合は、事業者の指揮監督下にある偽装フリーランスと判断されます。
たとえば、業務委託契約であるにもかかわらず、毎日一定の時間に限り自社のオフィスに常駐させているケースなどは偽装フリーランスと判断される可能性が高いので注意が必要です。

偽装フリーランスは事業者にとっても深刻な問題です。
厚生労働省は2023年度の1年間で153人の偽装フリーランスがいたことを発表しました。
事業者は労働者やフリーランスとの関係を正しく構築し、法令を遵守することが重要になります。
もし、偽装フリーランスかどうか判断がつかない場合などは、弁護士や労働基準監督署に相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。