建設業許可の有無にも影響!『建設工事』の定義とは

25.02.04
業種別【建設業】
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物を製作・製造する作業のことを「工事」と呼び、工事のなかでも土木や建築などに関する作業のことを「建設工事」と呼びます。
では、具体的にどのような作業が建設工事に該当するのでしょうか。
建設業法では建設工事の定義があるものの、それだけでは明確に判断しづらく、請け負う工事が建設工事なのか否か、わからないこともあります。
建設業者においては、もし建設工事のつもりで請け負った工事が建設工事ではなかったとすれば、さまざまな不都合が生じてしまいます。
建設業者にとって基本でありながらも、大切な建設工事の定義について解説します。

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建設工事かどうかの判断が重要な理由

建設業者とは元請や下請を問わず、建設工事を請け負う事業者のことを指します。
建設業者は建設工事を請け負うにあたって、建設業法第3条に基づき、建設業の許可を受ける必要があります。
許可には工事の金額によって「一般建設業」と「特定建設業」の区分があり、令和7年2月1日から金額要件が変更され、発注者から直接請け負った工事の代金が1件あたり5,000万円(建築工事業の場合は8,000万円)以上の下請契約を締結する場合は「特定建設業」の許可を、それ以外の下請契約の場合は「一般建設業」の許可を取得します。
さらに、建設業は業種別許可制となっており、建設工事の種類ごとの許可も必要になります。

もし、本来は建設工事であるにもかかわらず、軽微な工事だからと許可を取得せずに工事をした場合は、ペナルティを受ける可能性があります。
無許可での営業は建設業法違反となり、刑事罰として3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科される場合もあるので注意してください。

逆に、建設工事だと思って請け負ったはずが、実際は建設工事に該当しなかったというケースもあります。
建設工事ではない工事は、経営業務の管理責任者や専任技術者の実務経験にカウントされないので注意が必要です。
建設業の許可の取得に必要な管理責任者や専任技術者になるためには、一定年数の実務経験が必要です。
しかし、建設工事ではない工事をいくら請け負っても、その人の経験として算入することができません。
管理責任者や専任技術者の実務経験としてカウントできるのは、建設工事だけです。

建設業法と日本標準産業分類による定義

建設業法で定義している建設工事は29種類です。
建設業法第2条第1項では、「土木一式工事」「建築一式工事」「大工工事」「左官工事」「とび・土工・コンクリート工事」「石工事」「屋根工事」「電気工事」「管工事」「タイル・れんが・ブロツク工事」「鋼構造物工事」「鉄筋工事」「舗装工事」「しゆんせつ工事」「板金工事」「ガラス工事」「塗装工事」「防水工事」「内装仕上工事」「機械器具設置工事」「熱絶縁工事」「電気通信工事」「造園工事」「さく井工事」「建具工事」「水道施設工事」「消防施設工事」「清掃施設工事」「解体工事」を建設工事としています。
これまでは28種類の区分でしたが、2016年に新たな業種として解体工事業が新設され、29種類になりました。

これらに該当すれば、建設工事ということになりますが、工事の名称だけでは明確に判断しづらく、建設工事は現場によって状況や工法も大きく異なるため、どうしても個別に判断しなければいけません。

そこで参考になるのが、産業分類である「日本標準産業分類」です。
日本標準産業分類では「建築物、土木施設その他土地に継続的に接着する工作物及びそれらに附帯する設備を、新設、改造、修繕、解体、除却もしくは移設すること」を建設工事と定義しています。

たとえば、どんなに大きくても、土地に継続して接着していない船や電車の工事は建設工事には該当しません。
樹木の剪定や除草作業なども土地には接着していますが工作物ではないため、建設工事ではありません。
また、施設の清掃や窓ガラスの拭き取り作業や、テレビや冷蔵庫などの設置作業も、新設、改造、修繕、解体、除却、移設のいずれにも該当しないため、建設工事にはなりません。

つまり、判断するポイントは、「土地に接着しているか」「工作物か」「新設や改造などの作業か」になり、この条件をすべて満たしている工事が建設工事に該当することになります。

そのほか、日本標準産業分類では、「土地、航路、流路などを改良もしくは造成すること」や、「機械装置のすえ付け、解体もしくは移設すること」も建設工事と定義しています。

請け負った工事が建設工事かどうか迷った場合は、建設業法の29種類の分類と、日本標準産業分類に照らし合わせて考えてみましょう。
また、都道府県によっても判断が異なることもあるため、もし自信がなければ、管轄する自治体に問い合わせることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。