『ジョブ・クラフティング』で従業員の主体性を引き出す

24.12.10
ビジネス【人的資源】
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同じ仕事に就いていても、モチベーションや仕事への向き合い方は人それぞれです。
経営者であれば、すべての従業員が主体性を持ち、やりがいを感じながら働いてもらいたいと考えているのではないでしょうか。
もし、自社の従業員が仕事に対して「やらされ感」や「退屈感」を感じているようであれば、意識や行動を主体的に変化させる『ジョブ・クラフティング(Job Crafting)』の導入を検討してみましょう。
仕事への活力を取り戻してもらう、ジョブ・クラフティングの具体的な手法について解説します。

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ジョブ・クラフティング導入のメリット

『ジョブ・クラフティング』は、2001年にアメリカ・イェール大学の研究者であるエイミー・レズネスキーとミシガン大学のジェーン・E・ダットンが提唱した概念です。
働き方や人間関係を工夫することにより、やりがいや満足感を感じながら働けるようになる手法を指します。

仕事に対する考え方は十人十色です。
あくまで生活のためと割り切り、与えられた仕事を淡々と遂行する人もいますし、自分の仕事にプライドを持ちながら、目の前の仕事に邁進する人もいます。
そのなかでも、組織の成長に大きく貢献するのは、やりがいを感じ、目標のために主体性を持って仕事に取り組む人ではないでしょうか。

ジョブ・クラフティングは、今まで仕事をやらされていると感じていた人を「やりがいを感じながら主体的に働く」ように変えるもので、日本でも多くの企業が促進しています。
これまで会社の命令でしか働いてこなかった従業員がジョブ・クラフティングによって、やりがいを感じながら主体的に働くようになれば、組織や仕事へのエンゲージメントも高くなるでしょう。

仕事への意欲とストレスの度合いが反比例するという研究結果も出ており、ジョブ・クラフティングで仕事にやりがいを見出すことでストレスが減り、心身の健康にもよい影響が出ることがわかっています。

3つのクラフティングが主体性を引き出すカギ

ジョブ・クラフティングを従業員が実施するためには、企業側のサポートが欠かせません。
ジョブ・クラフティングについての研修やセミナーの開催はもちろん、従業員のやる気を引き出す新しいポストの創設や、職場環境の整備、上司からの適切なフィードバックなども効果的です。

ジョブ・クラフティングの研修プログラムは、従業員を複数人のグループに分け、業務に対して実践可能な工夫を話し合い、策定した計画に沿って実践していきます。
大切なのはプログラムのなかで、一人ひとりの従業員がみずから仕事にやりがいを見出すための工夫を考えることにあります。

ジョブ・クラフティングでは、仕事のやり方を工夫する「作業クラフティング」と、人との関わり方を工夫する「人間関係クラフティング」、そして、考え方を工夫する「認知クラフティング」の3つによって、個人の仕事に対する主体性を引き出します。

日頃から仕事に追われて従業員が「自分のやりたい仕事ができない」「思うように仕事が進まない」のであれば、業務の優先順位をつけたり、スケジュール管理の方法を見直したりといった「作業クラフティング」で、仕事をより充実したものにすることが可能です。

人間関係がやる気を引き出すネックになっているのならば、職場の同僚や上司に積極的にアドバイスを求めたり、取引先とのコミュニケーションを増やしたりする「人間関係クラフティング」で、他者と良好な関係を築き、働きがいを感じられるようになります。

そもそも「仕事に関心が向けられない」「会社における自身の存在意義がわからない」という従業員がいるのであれば、仕事を自分の興味関心のあるものと結びつけたり、自身の仕事を会社にとって価値のあるものととらえ直したりするなど、「認知クラフティング」で考え方を変えることで、自分の仕事に価値を感じられるようになるでしょう。

まずはすべての従業員に対して、ジョブ・クラフティングを周知し、中身を理解してもらうことが大切です。
他者の考えを聞くことで、自分が実践できるジョブ・クラフティングの参考にできます。
全従業員が話し合いながら、ジョブ・クラフティングを実践できる環境の整備を進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。