開業の際に必要な保健所の『立入検査』の中身とは

24.12.03
業種別【美容業】
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美容室を開業する際は、管轄の保健所の職員による立入検査を受ける必要があります。
立入検査は美容室の構造や設備などについて、美容師法やその自治体の条例などで定められている構造設備基準を満たしているかどうか確認するためのもので、検査を受けずに店を開くことはできません。
また、基準を満たしていないと再検査となり、オープンが延びてしまうこともあります。
美容室のスムーズな開業のために、立入検査の全体的な流れやチェック項目などを把握しておきましょう。

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事前相談から美容所適合確認書の受取まで

美容室を開業する際は、施設の名称や所在地を記入した「美容所開設届」や「従業員名簿」、「美容師免許」や「医師の診断書」などのほかに、添付書類として「構造設備の概要」を管轄の役所に提出します。
構造設備の概要とは、床面積や椅子の台数、照明の明るさなど、開業する店舗の構造設備について細かく記載したもので、立入検査の際には実店舗が書類と相違ないかをチェックされます。
もし、記載した内容と異なる場合は、再検査になるので注意してください。

この保健所の立入検査を受けるためには、さまざまな準備や手続きが必要です。
まず、店舗用の物件を確保したら、契約した内外装業者と打ち合わせを重ねて、レイアウトを決めます。
レイアウトは美容師法や自治体の条例で定められた構造設備基準を満たしたものでなければいけません。
続いて、レイアウトが決まったら、内外装業者に発行してもらった施設平面図を持参して、役所に事前相談を行いましょう。
事前相談は、工事前の設計段階で施設平面図が構造設備基準に適合しているかどうかを確認してもらうためのもので、基準を満たしていない箇所や店舗としての不備などがあれば、教えてもらえます。

事前相談で施設平面図に問題がなければ、工事を進めると同時に、立入検査を希望する1週間ほど前に美容所開設届などの必要書類を提出し、立入検査の日時を調整します。
このとき、手数料の納付も忘れないようにしましょう。
また、管轄の保健所によって金額は異なるものの、立入検査には2万円前後の手数料がかかります。

立入検査の当日は、保健所の職員が予定の時間に店舗を訪問し、検査を行います。
検査は30分ほどで終了しますが、職員から構造設備について質問された際には答えられるようにしておきましょう。

検査に合格していれば、約1週間後に保健所から連絡が来るので、「美容所適合確認書(確認済書)」を受け取りにいきます。
この確認書があれば、晴れて店舗をオープンさせることができます。
ちなみに、確認書は店内に掲示しておく必要があります。

立入検査でチェックされる主なポイント

立入検査でチェックされるポイントは多岐にわたりますが、特に作業室の面積と椅子の数、お客の待合室、洗髪設備などは入念にチェックされます。
施術を行う作業室の床面積は原則13.2平方メートル以上なければならず、13.2平方メートルの作業室に置ける椅子は6台までと決まっています。
7台目以降は椅子が1台増えるごとに3平方メートルの面積が必要です。

また、施術中にほかのお客が作業場を通過しないよう、お客の待合室は店舗の入口付近に設ける必要があり、作業室とも明確に区切らなければいけません。
壁がなければ、固定された衝立や棚などを使用して区切る必要があり、観葉植物や動かせるカーテンなどは認められない可能性があります。

美容室に必要なシャンプー台や、スタッフが手を洗ったり、器具を洗浄したりする洗場や洗髪設備もチェックの対象になります。
洗場や洗髪設備は原則として上下水道に直結した流水装置を設置する必要があります。

ほかにも立入検査では、床や腰板の素材、採光や照明、換気や消毒設備などについて、構造設備基準に沿った入念なチェックが行われます。
さらに、美容師が正しい手順で設備や道具を使用できるかどうかもチェックされるため、道具や椅子などを揃えて、営業ができる状態で検査を受けましょう。

立入検査は美容室が安全にお客を迎えるためには、欠かせない検査です。
各市区町村によって求められる構造設備基準が異なる場合もあるので、あらかじめ、開業予定の自治体の基準を調べておき、事前相談で確認しておくと安心です。
きちんと準備して、万全の体制で検査に臨むようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。