値上げには応じなければいけない? 家賃にまつわる借主の悩み
日本にはおよそ6,500万戸の住宅があり、このうちの約1,530万戸が賃貸物件といわれています。
賃貸物件は一戸建てなどの分譲物件とは異なり、気軽に住み替えができ、修繕や修理などの負担も軽くて済むというメリットがありますが、一方で賃貸ならではのデメリットもあります。
その一つが家賃にまつわるトラブルです。
特に家賃の値上げに関するトラブルは枚挙に暇がありません。
ある日突然、大家である貸主から「家賃の値上げ」を告げられたら、どうしたらよいのでしょうか。
借主が知っておきたい、家賃の値上げについての対応方法を解説します。
家賃の値上げが認められている理由
賃貸物件は借主が貸主と「賃貸借契約」という契約を結ぶことで、借りられます。
借主はこの契約に基づいて、あらかじめ決められた家賃を貸主に毎月支払う必要がありますが、入居時から退去時まで家賃が一定であるとは限りません。
多くの賃貸物件は、2年に一度、契約更新が行われますが、このタイミングで貸主から家賃の値上げを告げられることがあります。
家賃には適正家賃というものが存在せず、貸主と借主の合意があれば、自由に決めることが可能です。
借主は入居前に立地や間取り、部屋の広さや日当たりなどに対し、貸主側の提示する家賃が納得できる金額であれば、賃貸借契約を締結します。
しかし、入居後の値上げに関しては、納得できない、合意できないということもあるかもしれません。
もし、貸主から家賃の値上げを告げられた場合、借主はまずその値上げをした理由を確認しましょう。
「借地借家法」という法律によって、家賃の値上げについても定められており、「建物や土地の税金が高くなり、貸主側の負担が増えた」「不動産価格や物価の上昇などで物件の維持や管理にコストがかかるようになった」「周囲の似た物件と比べて家賃が安かった」などの理由が生じた場合に、貸主は借主に対して家賃の値上げを請求できます。
一方、「家賃収入を増やしたい」などの、貸主側の一方的な都合による家賃の値上げは認められていません。
法的に家賃の値上げの協議を求めることは認められているものの、借主が合意しなければ、家賃を上げることはできません。
貸主から値上げを告げられた際は拒否することもできますが、貸主側の事情も確認したうえで、前向きに考えましょう。
貸主にも家賃を値上げしなければならない事情があります。
要請を無視したり、話し合いを拒否したりせず、真摯な態度で向き合うことが大切です。
生活が苦しければ貸主と交渉してみる
家賃の値上げに関しては「値上げ率」も重要な問題です。
もともとの家賃にもよりますが、値上げが行われる場合、平均の値上げ率は3~5%ほどです。
これは、家賃が10万円であれば3,000円から5,000円の値上げになります。
値上げ率については、貸主から家賃をその金額に値上げしなければならない根拠となる資料を提示してもらうことも可能です。
資料によって、家賃の値上げの理由が確認でき、値上げ率についても納得できれば、値上げに合意しましょう。
ただし、家賃の値上げによって、生活が苦しくなってしまうのであれば、貸主と交渉してみるのも方法の一つです。
貸主によっては無理に値上げをして退去されてしまうよりも、多少は譲歩しても長く住んでもらいたいと考える人もいます。
物件にもよりますが、交渉によっては値上げ率を下げてもらったり、新しい家賃の適用時期を遅らせてもらったりすることが期待できます。
また、もし交渉が決裂したとしても、すぐに退去しなければいけないわけではありません。
値上げの合意に至らなければ、管轄の裁判所に調停の申立てを行うことになりますが、調停中であっても家賃を支払っていれば、同じ物件に住み続けられます。
さらに、逆に借主が貸主に家賃の値下げを請求できるケースがあります。
たとえば、今住んでいる部屋の隣が空き部屋となり、賃貸物件サイトで隣の部屋の家賃を調べてみたところ、同じ間取りや広さであるにもかかわらず、自分の部屋の家賃よりも安くなっているということがあります。
こうしたケースでは、借地借家法32条に基づき、借主は貸主に対して、値下げを請求できる場合があります。
入居中の相談件数のうち、家賃に関するトラブルは「修繕・改善」「管理」に次いで多いといわれています。
貸主との間で話がこじれてしまい、解決がむずかしい場合は、引っ越しなども視野に入れながら、弁護士や自治体が開設している住宅相談窓口などに相談してみましょう。
※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。