人材の『採用代行(RPO)』を活用する利点と注意点
人手や時間などのリソースが足りず、採用業務に手が回らない場合は、『採用代行(RPO)』サービスを提供する会社に任せる方法もあります。
採用代行は、忙しい企業の代わりに採用業務を担当してくれるサービスです。
採用代行会社はたくさんあり、初めて依頼する場合はどの会社を選べばよいのか迷ってしまうこともあるでしょう。
採用代行サービスにはメリットだけでなく注意すべき点もあり、導入を検討する際は慎重になることが大切です。
採用業務に困っている企業に向けて、費用の相場や、提供会社を選ぶ際のポイントなどを説明します。
採用代行サービスの歴史と利用するメリット
採用代行は、1970年代にアメリカで生まれたサービスで、採用のアウトソーシングを指す「Recruitment Process Outsourcing」の頭文字を取り、「RPO」とも呼ばれています。
アメリカでは2000年代の景気後退により、多くの企業が人事の採用担当者を手放さざるを得なくなり、採用業務をアウトソーシングできるRPOに注目が集まりました。
一方、日本では採用代行に特化した専門会社という位置づけで、1990年頃に採用代行のサービスを取り扱う企業が誕生しました。
社会状況の変化に応じて、次第に採用代行の需要は増していき、近年は売り手市場へのシフトや、採用活動の長期化などにより、ますます採用代行サービスのニーズは高まってきています。
採用の現場は就職氷河期を経て、一時売り手市場になるも、2008年のリーマンショック以降は就職難の状態が続いていました。
再び売り手市場に転じたのは2014年頃で、途中コロナ禍の影響などもあったものの、現在も売り手市場は続いています。
新卒採用での指標となる2025年の大卒求人倍率は1.75倍で売り手市場を示しており、求職者の数よりも企業の求人数が多いことがわかります。
売り手市場においては人材の確保も容易ではありませんし、採用活動に割かなければならないリソースも増していきます。
特に近年は、1年を通して採用活動を行う企業が増えたことで採用活動が長期化していることに加え、SNSや自社サイトなど、ハーローワークや求人サイトだけではない採用方法の多様化も、採用担当者の負担が増した要因といわれています。
採用代行会社に一連の採用業務を任せてしまうことで、負担の軽減はもちろんですが、採用業務の質の向上も期待できます。
採用代行会社は、採用業務に関する豊富なノウハウがあり、採用計画の立案から、募集要件の策定に内定者へのフォローまで、一連の採用活動を高いレベルで遂行する力が備わっています。
「募集に人が集まらない」「内定辞退者が多い」「採用しても定着しない」など、自社における採用業務の課題も解決できるかもしれません。
採用業務の改善に役立つアドバイスを受けられるのは、採用代行サービスを利用するうえでの大きなメリットといえます。
採用代行を依頼する会社の選び方と料金相場
サービスを提供する会社にもよりますが、一般的に採用代行を利用する場合は、代行会社に立ててもらった採用計画に沿って求人募集を行なってもらい、書類選考や面接の実施といったプロセスをたどります。
また、求人票の管理や説明会の企画運営、応募者の管理や面接のスケジュール調整、筆記試験や適性検査の実施、合否連絡や内定者研修など、さまざまな採用に関する業務をお願いすることが可能です。
ただし、これらの採用業務を外部に任せるということは、採用に関するノウハウが社内に蓄積しないということでもあります。
また、外部の会社であるため、適切なコミュニケーションを取って意思疎通を図らないと、求めていない人材が集まってしまうなど、認識のすれ違いが起きてしまうこともあり得ます。
こうしたメリットとデメリットの両方をよく理解したうえで、採用代行サービスを利用しましょう。
採用代行会社を選ぶ際は、その会社が依頼したい業務内容に対応できるかどうかについて、しっかりと確認しておきます。
多くの採用代行会社は幅広い採用業務を代行することができますが、それぞれ得意とする分野が異なります。
たとえば内定辞退の防止に力を入れたいのであれば、内定者のフォローに定評のある会社を選ぶなど、会社の特徴や強みを把握しておくことも大切です。
また、かかるコストも採用代行会社を選ぶうえで大切な基準となります。
依頼先の企業や依頼する内容、契約や期間によって大きく異なりますが、エントリー受付や応募者管理などの基礎的な採用業務だけを依頼するのであれば、月額契約で5~10万円が相場といわれています。
採用業務を一括で任せたい場合は、一般的に30万円以上が目安となります。
採用業務にかけられる予算には限りがあるため、予算に見合った範囲の業務を依頼するようにしましょう。
採用代行会社は、多忙な人事担当者に代わってさまざまな採用業務を対応してもらえる心強い存在ですが、あくまで外部の協力会社です。
最終的にその応募者を採用するかどうか、合否に関わる部分の判断は自社で行うようにしましょう。
慢性的な人手不足のなかで優秀な人材を獲得するためには、採用代行サービスの活用も視野に入れながら、継続的に採用活動を行なっていくことが重要です。
※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。