SNSの炎上から誹謗中傷に!? リスクを避けるための対策を解説
SNSが発達し、今日では誰でも気軽に情報発信ができるようになりました。
「一億総発信時代」とも呼ばれるなか、企業にとっての新しいリスクが、従業員の不適切な投稿による炎上です。
過去にはSNSでの炎上が企業への誹謗中傷につながって、さまざまな被害をもたらした例もあります。
今回は、炎上リスクを避けるための対策から、従業員のSNS炎上がきっかけで企業が誹謗中傷を受けてしまった場合の対応方法を説明します。
SNSの炎上リスクを防ぐ体制を整備
一口に「従業員による不適切な投稿」といっても、その中身はさまざまです。
よく話題にあがるのは、「バイトテロ」とも呼ばれる、飲食店のアルバイト従業員による問題行動を撮影した動画の投稿です。
今年に入ってからも、大手宅配ピザチェーンのアルバイト従業員が非衛生的な行為を撮影した動画をSNSに投稿したとして批判が殺到し、運営会社が謝罪する事態になるなど、「バイトテロ」の例は枚挙に暇がありません。
「バイトテロ」は明らかな問題行動がきっかけで炎上した例ですが、ほかにも勤務先を公開している企業の人事担当者が「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない」と投稿して物議を醸した例や、地方放送局のSNS担当者が個人アカウントと間違えて会社の公式アカウントで特定の政党を批判して炎上した例などもあります。
これらの例では投稿した本人や所属する企業への批判はもちろん、投稿者や企業に対する事実無根の誹謗中傷などがSNS上で散見される事態になっており、該当企業のイメージダウンなどにつながっています。
業績悪化につながるおそれがあることに加え、信頼回復には多くの労力やコストがかかることもあり、企業としては従業員による不適切なSNS投稿への対策は必須となりつつあります。
では、具体的には、どのような対策を講じることができるのでしょうか。
企業によって対応の範囲はまちまちですが、大手企業では、従業員がSNSを利用するにあたっての規定を設けたり、誓約書の提出を求めたりする例も存在します。
また、「コンプライアンス研修の一環としてSNS利用についての研修を実施する」「会社の公式アカウントでの発信については複数人でのチェック体制を敷く」といった対策も効果的と考えられます。
会社が誹謗中傷を受けてしまったら……
従業員の不適切な投稿によるSNS炎上がきっかけで、会社が誹謗中傷を受けてしまった場合、損害賠償請求などの法的措置も視野に入れたうえでの対応が必要です。
場合によっては、名誉毀損罪や業務妨害罪が成立することもありますので、早い段階から顧問弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。
誹謗中傷を受けた際に企業が取るべき対応は、主に(1)事実確認、(2)対外発信の検討、(3)法的措置の検討の3つが考えられます。
(1)事実確認
ネット上で誹謗中傷を受けた場合、まずは誹謗中傷の真偽を確認します。
必要に応じて社員への聞き取りなども行いましょう。
そのうえで、誹謗中傷の内容が事実であれば、内容に即した社内外の対応が必要になりますし、事実無根である場合は虚偽情報の発信や拡散を行なった人への法的措置を検討することになるでしょう。
以下では、誹謗中傷の内容が事実無根であった場合の対応例を記載します。
(2)対外発信の検討
誹謗中傷の内容が会社の信用に大きく影響する場合は、自社ホームページやSNSでの声明発表を検討します。
事実無根であれば、その旨を明示し、会社としての対応方針を発信する必要があります。
どのようなケースであれば対外発信を行うべきといった明確なガイドラインはありませんが、インターネットやSNS上では、誤った情報であっても想像以上に迅速かつ広範囲に拡散されていきます。
静観することで事態が悪化する可能性もあるため、リスクマネジメントの観点から対外発信の必要性の有無を検討しましょう。
(3)法的措置の検討
誹謗中傷をインターネット上に放置することは将来的なリスクにもなりかねないため、見つけ次第、SNSの運営会社やサイトの管理者に削除を求めます。
そのうえで、誹謗中傷の内容があまりにも悪質な場合は、発信者情報開示請求を通じて発信者を特定し、発信者に対して損害賠償請求を行うことも十分に可能です。
専門家に相談しつつ、法的措置を検討しましょう。
なお、発信者情報開示請求を行い、仮に誹謗中傷の発信者が自社の従業員であることが判明した場合は、当該従業員への懲戒処分を検討します。
企業側が誹謗中傷をする立場になることは、どのような状況であっても許されるべきではありませんので、厳正な対応を行いましょう。
なお、懲戒処分を行うにあたっては有効要件を満たす必要があるため、社内規定を確認する必要があります。
SNSが普及した現代において、従業員による不適切な発言リスクは、どんな企業にとっても身近なものとなっており、企業側にも時代に即した対応が求められています。
また、従業員のSNS炎上をきっかけに会社に対する誹謗中傷が行われる可能性もあり、法的手段を視野に入れたうえでの対応が必要になるため、こういったトラブルに巻き込まれてしまった際は、この分野に詳しい専門家への相談をおすすめします。
※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。