労働条件変更も? パート・アルバイトの社会保険加入の義務化に備える

24.09.10
ビジネス【労働法】
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パートやアルバイトなどの『短時間労働者』に対する社会保険の適用範囲が拡大され、2024年10月から従業員が51人以上の企業で働く短時間労働者も社会保険の加入対象となります。
事業者は要件を満たす短時間労働者を社会保険に加入させる義務があり、もし未加入のままだと、管轄の年金事務所から要請や指導が行われ、悪質な場合は立入検査を受ける可能性があります。
加入対象となる短時間労働者を雇用している事業者は、どのような準備をしておけばよいのでしょうか。
社会保険加入の適用範囲拡大を前に、事業者が行うべき手続きを段階的に説明します。

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社会保険の加入で労働者と事業者にメリット

社会保険とは健康保険や厚生年金保険などの総称で、事業者は原則として『フルタイム労働者』を必ずこの社会保険に加入させなければいけません。
フルタイム労働者とは、各事業所で定めている正規の勤務時間帯に最初から最後まで勤務する労働者のことを指し、逆に一定の時間帯のみ勤務する労働者を『短時間労働者』と呼びます。
これまで正社員などのフルタイム労働者に対して、パートやアルバイトなどの短時間労働者は、社会保険に加入する義務がありませんでした。

しかし、社会的なセーフティネットの強化や、社会保険による格差の是正などを目的に、2016年10月からは改正年金法に基づき、一定の条件のもと社会保険の適用範囲が拡大され、従業員数501人以上の企業で働く短時間労働者は、社会保険に加入できるようになりました。

社会保険への加入は、労働者にとってさまざまなメリットがあります。
厚生年金によって、将来的に受け取ることのできる年金額が増えますし、障害のある状態になった場合も障害厚生年金が支給されます。
また、ケガや出産によって仕事を休まなければならない場合に、賃金の3分の2程度の傷病手当金や出産手当金を受け取ることができるなど、健康保険の給付も充実します。
配偶者の扶養の範囲で働いている短時間労働者は、扶養基準である130万円を意識せずに働くことができるのも利点の一つです。

この社会保険の適用範囲ですが、2022年10月にはさらに従業員数101人以上の企業で働く短時間労働者も対象となり、2024年10月からは従業員数51人以上の企業で働く短時間労働者も対象となります。
社会保険料は事業者と労働者の折半となるため、短時間労働者を雇用している従業員数51人以上の企業は、新たに負担が増えることになりますが、社会保険に入れるということは企業の求人としての魅力が増すことにもなります。

特定適用事業所となった場合に必要な手続き

社会保険の適用の範囲内となる従業員数51人以上の企業のことを『特定適用事業所』といいますが、まずは自社が特定適用事業所に該当するのかどうかを確認する必要があります。
フルタイムの従業員数と週の労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数を加えた数が51人以上であれば、特定適用事業所となるので、必要な手続きを進めていきましょう。

特定適用事業所となることがわかったら、続いては加入対象者を把握します。
新たに加入対象者となるのは、1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数がフルタイムの従業員の4分の3未満である人のうち、以下の条件をすべて満たす短時間労働者になります。

・週の所定労働時間が20時間以上、30時間未満(所定労働時間が40時間の企業の場合)
・所定内賃金が月額8.8万円以上(残業代や賞与などは含まない)
・2カ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)

そして、事業者はこれらの条件を満たす加入対象者と話し合いを行なった方がよいでしょう。
このときに伝える必要があるのは、主に「社会保険の加入対象になること」「社会保険に加入するメリット」「今後の労働条件」です。
本人の同意のうえで、労働時間の増減や正社員への転換なども視野に入れながら、話し合いを進めていきましょう。

労使間の合意が得られたら、書類の作成と届出を行います。
特定適用事業所には、2024年9月までに日本年金機構から通知書類が届くので、同年の10月7日までに「被保険者資格取得届」をオンラインで届け出ましょう。

2024年10月から、新たに従業員数51人以上の企業が特定適用事業所になりましたが、基準を満たす従業員数が50人以下の企業であっても、従業員の同意に基づいて、適用事業所になることができます。
このような任意で適用事業所になる企業を『任意特定適用事業所』といいます。

任意特定適用事業所も社会保険料の負担は増えるものの、従業員の社会保険料に関しては経費計上することができるうえに、「社会保険適用促進手当」や「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」など、国からの支援を受けることもできます。
特定適用事業所と同じく、求人の際に「社会保険完備」と掲げられるのも大きなメリットです。
従業員数50人以下の中小企業も、任意特定適用事業所になることを検討してみてはいかがでしょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。