税理士法人エスペランサ

逮捕の可能性も!?『不正競争防止法』に違反してしまう行為とは

22.12.20
ビジネス【企業法務】
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「自社の機密データを競合メーカーに持ち込む」「他社の商品によく似た商品を販売する」「外国産の食品を国産と偽装表示する」などの行為は、すべて『不正競争』と呼ばれ、『不正競争防止法』によって禁止されています。
同法は、事業者間の公正な競争を確保することを目的としており、不正競争に対しては、差止めや損害賠償などの措置が定められています。
不正競争の範囲は幅広く、禁止項目はぜんぶで10項目あります。
ケースによっては、民事的措置だけではなく、刑事的措置も科される可能性があるので、法務担当者は不正競争に該当する行為を把握しておきましょう。
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不正競争に該当する禁止行為を知っておこう

2022年9月に、大手回転寿司チェーンの社長が、過去に勤めていた競合他社の営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反の疑いで逮捕されました。
不正競争防止法はさまざまな不正競争を禁止しており、一部の行為に対しては刑事罰も科されます。
営業秘密の持ち出しは、『営業秘密侵害罪』に当たり、この社長には10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金が科される可能性があります。

営業秘密侵害罪が科される『営業秘密の侵害』を含め、不正競争防止法では以下の10項目が不正競争に該当する行為として禁止されています。

(1)周知表示混同惹起行為
消費者に広く浸透している別の会社の商品や表示とよく似たものを使用し、消費者に同じものだと誤認させる行為のことです。
過去にはコーヒーチェーンの『珈琲所コメダ珈琲店』と類似する店舗外観を使用した業者に対し、外観の使用禁止が命じられました。

(2)著名表示冒用行為
著名なブランドやキャラクターなどを自社の商品や営業表示として使用する行為が該当します。
過去には、任天堂の人気ゲームキャラクターと同じコスチュームを使用していた公道カート業者に、使用差止めが命じられました(『マリカー』事件 )。

(3)形態模倣商品の提供行為
他社の商品の形態を模倣した商品を販売する行為です。
1990年代後半の『たまごっち』ブームの際には、類似品が大量に出回りましたが、そのほとんどが形態模倣商品に該当しました。

(4)営業秘密の侵害
窃盗や不正アクセスなどの不当な手段で営業秘密を取得し、自分で使用したり、第三者に開示したりする行為です。

(5)限定提供データの不正取得等
窃盗や不正アクセスなどの不当な手段で限定提供データを取得し、自分で使用したり、第三者に開示したりする行為です。
限定提供データとは、POSシステムで収集した売上データや、自動走行の地図データなど、他人との共有を前提に、一定の条件下で利用可能な情報のことです。

(6)技術的制限手段無効化装置等の提供行為
技術的に制限されているコンテンツの視聴や、プログラムの実行などを可能にする装置を提供する行為です。
過去には、違法コピーソフトを任天堂のゲーム機『ニンテンドーDS』で起動できる『マジコン』を輸入・販売した業者に対し、輸入・販売の差止めと廃棄が命じられました。

(7)ドメイン名の不正取得等の行為
不正な利益を得る目的や、他人に損害を加える目的で、他人と同一・類似のドメイン名を使用、もしくは使用する権利を保持する行為が該当します。

(8)誤認惹起行為
商品や広告に、原産地や品質、内容などを誤認させる表示を行う行為のことです。

(9)信用毀損行為
競争関係にある他人の営業上の信用を損なう目的で虚偽の事実を告知したり、嘘を広めたりする行為のことです。

(10)代理人等の商標冒用行為
パリ条約同盟国などにおいて、商標権を持つ者の代理人が正当な理由なく、その商標を無断で使用する行為が該当します。


国際約束に基づく禁止行為にも注意

不正競争防止法では、『国際約束』の実施を目的とした禁止行為も定めています。
国際約束とは、日本が履行を約束した拘束力の強い国際的な条約や協定のことです。
不正競争防止法においては、パリ条約やマドリッド協定などが国際約束に該当し、国際約束に基づく禁止行為には、以下の3項目が定められています。

(1)外国の国旗等の商業上の使用禁止
(2)国際機関の標章の商業上の使用禁止
(3)外国公務員贈賄罪
※外国公務員との国際的な商取引において、不正な利益を得るために贈賄などを行うこと。

不正競争防止法は、民事的措置と刑事的措置が定められています。
しかし、刑法や法律の適用を阻害するものではないため、違反者への行政処分は定められていません。
一方、不正競争防止法と同じく公正な競争の確保を目的とした独占禁止法は、排除措置命令や課徴金納付命令など、公正取引委員会による行政処分が中心となります。

不正競争防止法も独占禁止法も、不正競争に該当する禁止行為に関しては重なる部分が一部あるものの、それぞれで規定されている禁止行為も多いため、どちらにも抵触しないようにしておくことが重要です。


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。