税理士法人エスペランサ

危険な果実? 事例で見る『炎上マーケティング』

19.04.11
ビジネス【マーケティング】
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“炎上”とは、不祥事や失言などをめぐって、ネット上で、批判や非難が殺到することを指します。近年は、SNSで誰もが手軽に発言できることもあり、炎上事例は頻繁に起こっています。 
また、“炎上”には通常では考えられないくらいの注目を集めるという側面があり、これをあえて利用するのが『炎上マーケティング』です。 
今回は、自ら“炎上”状態をつくり出し、広告宣伝効果を高めようとする『炎上マーケティング』について、事例を交えながらご紹介します。
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『炎上マーケティング』で成功を収めた例 

『炎上マーケティング』とは、ネット上で、あえて不適切な表現をすることで多くの批判や非難を浴びる“炎上”状態をつくり出し、注目を集めるマーケティング方法のことをいいます。 
その成功例として有名なのは、ルーマニアのチョコレート菓子『ROM』のメーカーが仕掛けたマーケティング手法でしょう。 

ROMは、チョコレートの消費量世界一を誇るルーマニアにあって、ロングセラーのチョコレート菓子です。1964年の発売当時からずっと同じレシピでつくられており、“チョコレート”といえばROMを思い浮かべるルーマニア人も少なくありません。 
しかし、近年は『スニッカーズ』など、アメリカから輸入されたチョコレートに押され、販売数が伸び悩み、若年層を中心に“ROM離れ”が起きていました。 

そこで、起死回生を狙ってメーカーが仕掛けたのが、ルーマニアの国旗を模していたROMのパッケージを、“アメリカのチョコレートが人気なので星条旗のデザインに変更しました”というプロモーション。 
この大胆な施策は、ルーマニア国民の愛国心に火を点けました。ROMのFacebookやTwitterは炎上状態になり、反対運動や不買運動が巻き起こったほか、ニュースにも取り上げられる事態に発展しました。 

しかし、実はこの大炎上はメーカー側の思惑通り。ROMは、一夜にしてパッケージデザインを元に戻し、“ルーマニア人の愛国心の再発見”というキャッチコピーと共に、第二のプロモーションを展開しました。 

その結果、ROMのFacebookは4日間で2万人の読者を増やし、ルーマニア国内におけるチョコレート菓子のシェアにおいても『スニッカーズ』を抜き、No.1の座を再び獲得しました。 
大成功を収めたこのマーケティングは、CM界のアカデミー賞ともいわれる『カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル』で2011年度のグランプリを2部門にわたり獲得しました。 


明暗が分かれた『せんとくん』と『まんべくん』 

このように、巧妙に仕掛けられたうえで大成功を収めた『炎上マーケティング』がある一方、思わぬところで炎上し、それが結果として成功した例もあります。 

それが、2008年に奈良の『平城遷都1300年祭』の公式マスコットキャラクターとして登場した『せんとくん』です。せんとくんは発表当初、これまでにないデザインに「かわいくない」「気持ち悪い」などの意見が集まる一方、キャラクター制作経費の使い方をめぐる問題や、広告代理店主導のコンペで決定し、その選考には一般の奈良市民がまったく携わっていなかったことなどもあって、大炎上に発展。キャラクターの白紙撤回を求める署名活動まで行われました。 
しかし、これらの報道が行われた結果、せんとくんの知名度は急上昇。だんだんと見慣れてくるものなのか徐々に人気も出て、県の観光マスコットに採用されるまでになりました。 

しかし、同じキャラクターの事例でも、『炎上マーケティング』が失敗に終わってしまったものもあります。それが、2003年に北海道の『長万部町開礎130年町制施行60年』の記念事業として誕生した『まんべくん』です。 

まんべくんは2010年にTwitterを開始。当初から、毒舌キャラとして人気を博し、歯に衣着せぬ自由奔放な発言は多くのファンを獲得。ときには、発言が行き過ぎて“プチ炎上”状態になることもありましたが、その度に、「すまんべえ」と謝罪し、炎上を沈静化させ、フォロワーを増やしていきました。 

しかし、ついに取り返しのつかない大炎上事件が起きてしまいます。 
2011年に太平洋戦争関連のツイートが波紋を呼び、長万部町役場には抗議が殺到。過激な発言によるプチ炎上で注目を浴びてきたまんべくんも、こればかりは沈静化させることができず、Twitterを閉鎖するまでに至ってしまいました。 


炎上マーケティングのリスクと注意点 

以上の事例からも、炎上マーケティングの成功と失敗は紙一重だということがわかります。 
“炎上”し、賛否を巻き起こすことでマスメディアにも取り上げられ、通常の宣伝以上の効果がある一方で、一歩間違えると、企業側はPR効果以上の大きなダメージを受けてしまいます。 

炎上マーケティングを仕掛ける際は、こうした大きなリスクを内包したマーケティング手法であることを十分に理解したうえで行う必要があります。 
リスクを軽減するには、巻き起こるであろう賛否を予測するバランス感覚を持つ者が主導すること。そして何より、訴えたいことは何なのかを考え、“信念”を持って発信することが大切です。 


※本記事の記載内容は、2019年4月現在の法令・情報等に基づいています。