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『休養室』と『休憩室』は兼用にできる? 労働法上の義務を確認

26.01.13
ビジネス【労働法】
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「休憩室」は従業員がリフレッシュし、コミュニケーションを図る場として重要な役割を果たします。
労働安全衛生法上、「休憩室」の設置は努力義務であり、設置することが望ましいとされていますが必須ではありません。
一方、「休養室」は一定の条件を満たす事業場において設置が義務づけられています。
混同しやすい「休養室」と「休憩室」の違いを明確にし、それぞれの法的義務や兼用できるかどうかについて、理解しておきましょう。

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「休養室」と「休憩室」の違いとは

労働安全衛生法に基づく「事務所衛生基準規則」では、事業者は常時50人以上の労働者または常時女性30人以上の労働者を使用する事業場において、「休養室」または「休養所」を設けなければならないと定められています。
この「常時使用する」労働者には、正社員だけでなく、パートやアルバイトなども含まれます。

休養室の目的は、労働者が業務中に体調不良になったり、気分が悪くなったりした際に、一時的に横になって静養できるようにすることです。
そのため、単に椅子があるだけでは不十分で、横になれるベッドなどの設備を用意する必要があります。

さらに重要な点として、この休養室は「男女別に設ける」ことが原則とされています。
これは、体調不良時に異性の目を気にせず、安心して休める環境を確保するためです。

一方、「休憩室」は、労働者が休憩時間を自由に利用し、リフレッシュすることを目的とした施設です。
社員が昼食をとったり、同僚と談笑したり、あるいは一人で静かに過ごしたりと、業務から離れて心身を休めてもらうために設置されています。
設置は努力義務とされており、休養室のように一定の人数規模で法的な設置義務が課されているわけではありません。

このように、休養室と休憩室は、その目的と法的根拠が異なります。
よく混同されがちなのは、どちらも「休む」ための場所という大枠のイメージが共通しているからといえます。
ちなみに、著しく高温・多湿な場所など、特定の過酷な環境下で働く労働者のためには、別途「休憩設備」の設置義務が生じる場合がある点に留意が必要です。

オフィスの休憩室と休養室は兼用できる?

事業規模の拡大などによって、オフィスに休養室を設置する必要が出てきた場合、もとからあった休憩室を休養室として兼用することはできるのでしょうか。

法律の解釈上、「体調不良者が発生した場合に、すぐに休養室として使用できる状態」であれば、兼用が認められる可能性はあります。
たとえば、普段は休憩室として使っている部屋の一部を、すぐにパーテーションなどで区切り、簡易ベッドを設置し、ほかの人の出入りを遮断して静かな環境を確保できるといったケースが考えられます。

しかし、休憩室は社員の交流の場であり、にぎやかになることも多い場所です。
静養を必要とする休養室とは、求められる環境が正反対であるため、実務上は兼用がむずかしいケースも多いとされています。

また、体調不良時は特にプライバシーへの配慮が必要です。
人の出入りが自由な休憩室では、安心して休むことができない可能性もあります。
逆に、休養室として使用中は休憩室として使えなくなるという問題も出てきますし、休憩室に常にベッドや布団を置いておくのは、スペースの観点からも現実的ではないでしょう。

さらに、休養室は男女別が原則です。
休憩室を男女別に分けて設置していないのであれば、兼用するのは困難です

こうした点から、休憩室と休養室を兼用することは、望ましくないとされています。
休養室と休憩室は、名前は似ていても、法律上の目的、設置義務、求められる要件がまったく異なる施設です。

従業員が安心して働ける環境を整備することは、企業の安全配慮義務の観点からも非常に重要です。
まずは、自社の事業場が「常時50人以上」または「常時女性30人以上」という休養室の設置義務の対象になっていないか、あらためて確認してみましょう。

もし義務の対象であるにもかかわらず未設置であったり、休憩室で代用していたりする場合は、法律違反となる可能性があります。
単なるスペースの確保ととらえず、従業員の健康と安全を守るための重要な投資として、休養室の適切な設置を検討することが求められます。
休憩室はリフレッシュのため、休養室は万が一の静養のためと、それぞれの役割を明確に分け、適切な環境を整備することが、結果として従業員の満足度や生産性の向上にもつながります。

※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。