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知らないと損する? 消費税の『還付金』が発生するケース

25.04.29
ビジネス【税務・会計】
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通常、消費税の納税は、売上時に受け取った消費税から、仕入れ時などに支払った消費税を差し引いた金額を納めることになります。
ただし、場合によって、支払った消費税が受け取った消費税を上回ることがあり、その差額が還付されることがあります。
還付金を受け取ることで、一時的な資金不足を解消したり、新たな事業投資に活用したりすることができるようになります。
損をしないためにも、消費税の還付金について、その仕組みや対象などを解説します。

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消費税の還付を受けられる具体的なケース

消費税の還付金とは、簡単にいうと「払いすぎた消費税として返ってくるお金」のことです。
消費税は、売上時に受け取った消費税から、仕入れ時などに取引先に支払った消費税を差し引いて計算します。
通常は売上時にかかる消費税の方が多いため、その差額を税務署に納めることになります。
しかし、ケースによっては仕入れ時に支払う消費税の方が多くなることもあります。

具体的な事例の一つが、「設備投資などで多額の課税仕入れを行なった場合」です。
設備投資を行なった場合、多額の課税仕入れが発生するため、還付を受けられる可能性が高くなります。
特に高額な機械や車両を購入した場合、店舗や工場を新築・改築した場合は、還付金額が大きくなる傾向にあります。
こうしたケースの場合、購入費用が高額になることで、消費税額も多くなるため、確定申告を行うことで支払った消費税の一部を還付金として受け取ることができるということになります。
ただし、土地のみを購入した場合、消費税は非課税仕入れとなり、また、居住用不動産賃貸業だけを営んでいる場合は、設備投資に使った課税仕入れを課税売上割合で按分されることで課税仕入の額が非常に少なくなると思われるため、還付の対象にはならないので注意してください。

また、「輸出業を営んでいる場合」も還付金を受け取れるケースが考えられます。
輸出業を営んでいる場合、輸出売上は消費税が免税となるため、売上時に預かる消費税が少なくなります。
一方、国内での仕入れ時には消費税を支払っているため、還付を受けられる可能性があるということです。
たとえば、海外に衣料品を輸出している企業は、輸出売上について消費税が免税となります。
しかし、国内で仕入れた原材料や製造にかかる費用については消費税を支払っています。
この場合、確定申告を行うことで、支払った消費税の一部を還付金として受け取ることができます。

そして、「大幅な赤字となった場合」も還付金を受け取れる可能性があります。
売上が減少して、課税される売上が少なくなる一方で、仕入れの消費税が多い場合は、結果的に消費税の還付が発生することがあります。

還付までの手順、対象となる事業者とは?

消費税の還付を受けるためには、課税期間の終了後、原則として2カ月以内に消費税の確定申告書を作成する必要があります。
確定申告書には必要事項を記入し、「消費税の還付申告に関する明細書」や「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」などの必要書類とあわせて、税務署に提出しましょう。
税務署の審査後、問題がなければ、還付金が指定の口座に振り込まれます。

振り込まれるまでの期間は定められていませんが、各種審査や手続きなどで時間がかかる場合もあります。
一般的には、手続きをしてから、1~2カ月後には振り込まれるといわれています。

ただし、消費税の還付金を受け取れるのは、原則として「消費税の課税事業者」だけです。
課税事業者とは、原則として基準期間(法人の場合は前々事業年度、個人事業主の場合は前々年)における課税売上高が1,000万円を超える事業者を指します。
免税事業者に該当する個人事業主などは還付の対象とはなりませんが、2023年10月からはじまった「インボイス制度」では、免税事業者であっても「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」を選択すれば課税事業者になることができます。

また、簡易課税制度を選択している事業者は、原則として還付を受けることができません。
簡易課税制度とは、中小企業の納税事務負担を軽減するために設けられた制度で、売上高に一定の「みなし仕入率」を乗じて仕入税額を計算します。
対象外の事業者は、支払った消費税が多くても還付を受けられないので注意してください。

消費税の還付金は企業の資金繰りを改善するための有効な手段の一つです。
特に、設備投資を行なった場合や、輸出業を営んでいる場合は、還付を受けられるかどうか確認してみるようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。