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本社機能の地方移転で優遇!?『地方拠点強化税制』の中身とは

25.02.25
ビジネス【税務・会計】
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人手不足の深刻化や働き方改革などによって、企業を取り巻く環境は大きく変化しており、新たな成長戦略として本社機能を地方へ移転する企業も増えてきました。
そうした企業の地方への移転を後押しすることを目的に、2015年に「地方拠点強化税制」が創設されました。
地方拠点強化税制は、税額控除や特別償却などさまざまなメリットを得られる税制優遇制度です。
特に地方への移転や拡充を考えている企業に向けて、地方拠点強化税制の具体的な内容を説明します。

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制度の対象と認定を受けるための流れ

地方拠点強化税制は、地方の雇用創生を通じて、都心から地方への新たな人の流れを作り出すために創設されました。

この制度を事業者が利用するためには、本社機能を地方に移転または拡充する必要があります。
本社機能には、全体的な事業を行う事務所はもちろん、事業において重要な役割を担う研究所や人材育成を行う研修所なども含まれます。
ただし、工場や店舗は対象外です。

たとえば、本社機能のすべてや一部を東京23区から地方に移転させた企業や、地方から別の地方に移転させた企業などが制度の対象となります。
また、移転はしていないものの、本社の増築や整備など、地方における本社機能を拡充させた企業も制度を利用できます。

2023年に本社機能を東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏から地方に移転した企業は347社でした。
一方、首都圏に転入した企業は310社と、3年連続で転出が上回っており、この流れは今後も続くと見られています。
また、これまで2024年3月末までだった地方拠点強化税制の適用期間が、「令和6年度税制改正」によって、2026年3月末までと2年間延長されました。
改正によって、商業事業部門やサービス事業部門の一部も含まれるようになるなど、対象の事業部門も拡充されたことで、今まで以上に使いやすい制度になったといえます。
コスト削減や競争の緩和、人材の確保や地域との連携などで活路を見出すためには、本社機能の地方移転や拡充も選択肢の一つかもしれません。

制度を利用するためには、まず移転を予定している都道府県の知事から整備計画の認定を受ける必要があります。
整備計画とは、地域再生法に基づく「地方活力向上地域等特定業務施設整備計画」のことで、その都道府県の地域再生計画への適合や、従業員数など、いくつかの要件を満たした場合に認定されます。
さらに、整備計画に記載されている整備期間中は、事業年度ごとに都道府県知事に対して計画の実施状況を報告する義務があります。

認定事業者が受けられるさまざまな優遇措置

都道府県知事から認定を受けた企業(認定事業者)が受けられる優遇措置の柱となるのは、「オフィス減税」と「雇用促進税制」です。

オフィス減税とは、本社を地方に移転、新設もしくは増設した際の取得価額に対して、特別償却か税額控除のいずれかの適用を受けられるというものです。
東京23区から本社機能を地方に移転した場合のオフィス減税は、建物などの取得価額に対して、特別償却25%または税額控除7%のどちらかの適用を受けることが可能です。
本社機能を拡充した場合のオフィス減税は、拡充にかかった価額に対して、特別償却15%または税額控除4%のどちらかの適用を受けられます。
ちなみに、移転、拡充とも減税の対象となるのは、建物の取得価額が3,500万円以上、中小企業者であれば建物の取得価額が1,000万円以上の場合なので、注意してください。

そして、雇用促進税制は、地方で拠点を整備したうえで、その施設の従業員の増加数に応じて税額控除を受けられるというもので、移転の場合は、新規雇用者の場合、増加数1人当たり最大90万円、転勤者の場合、増加数1人当たり最大80万円が税額控除されます。
拡充の場合は、新規雇用者の増加数1人当たり最大30万円、転勤者の場合、増加数1人当たり最大20万円の税額控除を受けることが可能です。

ほかにも、認定事業者は事業税や不動産取得税、固定資産税について、地方税の課税免除または軽減措置を受けられます。
ただし、事業税の措置は本社機能を移転した場合に限られます。
また、中小企業基盤整備機構による債務保証や日本政策金融公庫による融資なども受けることが可能です。

このように、地方拠点強化税制にはさまざまなメリットがあり、企業が地方に移転、拡充する際の大きな後押しとなります。
期間が2年間延長されたことにより、オフィス減税と雇用促進税制に関しては、2026年3月31日までに都道府県知事の認定を受けられれば、利用できます。
地方への移転や拡充を検討している事業者は、制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。