司法書士法人 宮田総合法務事務所

飲食店における火災発生時の対応マニュアル

24.03.05
業種別【飲食業】
dummy
飲食店は火を扱うことが多く、火災には最大限気をつけなければいけません。
しかし、どんなに注意していても、何らかの原因で火災が発生してしまう可能性はあります。
特に、隣接する店舗などからの『もらい火』は防ぐことがむずかしいでしょう。
もし、営業中に火災が起きてしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
防火意識を高めることはもちろん大切ですが、火災が起きた場合を想定しておくことも大切です。
火災が起きたときの対応方法について、前もって把握しておきましょう。
dummy

火災発生時には、まず何をしたらよい?

2024年1月3日に、福岡県北九州市小倉北区の中心市街地で大規模火災が発生しました。
火災は飲食店街の「鳥町食道街」で起き、怪我人は出なかったものの、食道街内の22店舗を含む35店舗が焼損しました。
出火元は特定されておらず、食道街の中心部とみられています。
2022年には、現場に近い別の市場でも2度の大規模火災が発生しており、同年8月の2度目の火災では、市場付近の店舗関係者が油の入った鍋を火にかけたまま店を離れていたことが原因とされ、業務上失火の疑いで書類送検されています。

自店舗が発火元となる可能性もあれば、こうした近隣の建物などからの出火により大規模火災に発展し、自店舗に飛び火する可能性もあります。
また、いくら注意していても、飲食店であれば自店舗の火災リスクを完全にゼロにすることはむずかしいでしょう。
防災意識を高め、普段から防火に努めることはもちろんですが、飲食店を経営するのであれば、万が一のことも考えておかなければいけません。

ここで、火災が起きたときにどうすべきかを解説しましょう。
もし、火災が起きた場合は出火元を確認し、お客と自店舗の従業員、そして近隣の店舗、もしくは同じテナントビル内の他店舗に向かって、大きな声で「火事だ!」と叫びながら火災の発生を伝えると同時に、携帯電話などで消防に119番通報を行います。
このとき、オペレーターには火事である旨と、住所(町名・番地・ビル名など)、店名、出火箇所、目印になるもの、自分の氏名と電話番号を伝えましょう。
調理場や事務所などに、通報時に伝えるべき必要事項をまとめたメモを貼っておくと、いざというときに役立ちます。
火災の状況などから判断し、余裕があれば消火器などを準備しながら、通報することが望ましいとされています。

複数の飲食店が入っているテナントビルなどの場合は、感知器が出火を知らせてくれるところもあります。
感知器には火災の温度を感知して知らせる熱感知器、煙を感知する煙感知器、炎の放射エネルギーを感知する炎感知器などがあります。
いずれも火災を感知すると受信機に信号を送り、音で建物中に火災の発生を知らせます。

安全な場所でお客を避難誘導するには

通報と火災の周知を行なったら、お客を安全な場所まで避難誘導します。
一酸化炭素中毒にならないように、お客にはハンカチなどで鼻と口を覆ってもらったうえで、「頭を低く! 煙を吸い込まないようにしてください!」と伝えます。
煙は上に流れる性質があるため、頭を低くすると煙を吸い込む可能性が低くなります。
誘導の際は従業員が先頭になり、火災の発生箇所を避けながら、避難しましょう。
このとき排煙窓があれば、開けておきます。

テナントビルなどでは、一斉に大勢で避難すると階段などで人が滞留してしまう可能性があるので、人を分散して避難させることも検討しましょう。
火災がビルの途中階で発生した場合は、まず、その階とすぐ上の階のお客を避難階段で避難させ、その後で偶数階、奇数階のお客を続けて避難させます。
ビルに避難階段が複数ある場合には、偶数階と奇数階のお客をそれぞれ別の避難階段で避難させる、という分散の方法も効果的です。

また、お客の避難誘導後は、逃げ遅れた人がいないか店内を回って確認します。
人がいないことを確認できたら、酸素の流入による爆発的な延焼を防ぐために、ドアや窓、防火扉などは閉めておきます。

もし、発生したばかりの火災であれば、お客の避難誘導と同時に、手の空いた従業員が消火器などで消火活動を行います。
キッチンから火が出ても、天井まで達していなければ消火器で消火できる可能性があります。

こうした火災発生時の避難誘導や消火活動は、いきなり対応できるものではありません。
不特定多数の人が出入りする飲食店や劇場、百貨店などの商業施設は、消防法により年2回以上の消火訓練と避難訓練が義務づけられていますが、小規模な個人店であっても万が一に備えて、定期的に消防訓練を行なっておきましょう。
訓練を行う際には、前もって所管の消防署へ連絡する必要があります。

いざという時すみやかに避難できるよう店舗の間取りや出入り口を把握しておいたり、避難経路が荷物でふさがれないよう整理整頓しておいたりするなど、日頃から点検しておくことが大切です。

お客と自店舗の従業員、そして自分自身の命を守るために、火災時の対応方法は必ず確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年3月現在の法令・情報等に基づいています。