司法書士法人 宮田総合法務事務所

会社設立してすぐに『青色申告』の手続きをするメリット

24.01.09
ビジネス【税務・会計】
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法人は事業年度ごとに決算を行い、所得に応じた法人税を納めなければいけません。
確定申告には『青色申告』と『白色申告』の2種類があり、青色申告で申告しない場合は自動的に白色申告で申告することになります。
確定申告を行う個人事業主に選ばれているイメージのある青色申告ですが、法人でも青色申告をすることにより節税などのメリットを享受できます。
ただし、青色申告を行うには税務署に申請する必要があり、提出期限も決められています。
今回は、会社を設立した際に検討しておきたい、法人の青色申告について解説します。
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白色申告は単式簿記、青色申告は複式簿記

確定申告における青色申告と白色申告の大きな違いは、帳簿のつけ方にあります。
白色申告は日々の取引を単式簿記により帳簿に記帳し、会計を行います。
これに対し、青色申告は「複式簿記」が義務づけられており、取引ごとに借方と貸方という二つの側面から記帳しなければいけません。
単式簿記は家計簿やお小遣い帳のような比較的シンプルで簡易的な帳簿ですが、複式簿記は単式簿記よりも複雑で、簿記や会計の知識がある程度は必要になります。

しかし、会社の売上や経費などの財政状況を正確に把握するためには、事業における損益の把握、お金の増減や出納などの情報を細かく記載できる複式簿記が欠かせません。
特に、金融機関の融資を受ける際などは、損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を金融機関に提出することになります。
その際、複式簿記による記帳を行なっていないと、この財務諸表を作成することもむずかしくなります。

また、複式簿記は記帳が複雑といっても、法人であれば簿記の知識がある会計担当者や、顧問の税理士に任せることが可能であり、会計ソフトを活用すれば比較的スムーズに作成できます。

そのため、一般的な会社であれば複式簿記での記帳はすぐにできるはずですので、青色申告をしやすいでしょう。
青色申告は税制面でもさまざまなメリットがあるため、ほとんどの法人は立ち上げ時に青色申告の申請を行なっています。
実際に、国税庁の調査によれば、法人の9割以上は複式簿記が必要になる青色申告で確定申告を行なっているというデータもあります。

法人が青色申告を行う節税メリット

法人の場合は青色申告を行うことで、具体的にどのような節税が可能なのでしょうか。
個人事業主の青色申告といえば、要件を満たすことで最大65万円を所得金額から控除できる『特別控除』がよく知られています。
ですが、この65万円の特別控除は法人には特にありません。
法人が青色申告を行う最大のメリットといえば、「欠損金の繰越控除」と「欠損金の繰戻還付」があげられます。

欠損金の繰越控除とは、今期の事業が赤字になってしまっても、10年間は赤字を繰り越すことができるというものです。
黒字になった期には繰り越した赤字と相殺することで、その期の税金を抑えることができます。
また、欠損金の繰戻還付は、前期が黒字で今期が赤字だった場合に赤字分を黒字分と相殺し、前期に支払った法人税のうち、相殺した分の法人税が還付されるというものです。

ほかにも、通常は業務のために用いられた機械や備品など、10万円以上の資産は数年に渡って減価償却する必要がありますが、青色申告では特例として、取得価額が30万円未満の減価償却資産は、一定の要件をもとに一括で損金に算入することが認められています。
ただし、この特例が使えるのは資本金1億円以下の中小企業者等のみで、2024年3月31日までの間に取得した30万円未満の減価償却資産に限定されているので注意してください。

ちなみに個人事業主の場合も青色申告を行なっていれば、欠損金の繰越控除が認められています。
しかし、繰り越せる期間は3年しかありません。

承認申請書を税務署に提出する期限に注意!

青色申告で確定申告を行うには、青色申告の承認申請書に必要事項を記入し、管轄の税務署に提出する必要があります。
ここで気をつけたいのが提出期限です。
法人の場合は原則、青色申告で確定申告を行いたい年度の事業年度開始日の前日までに、承認申請書を提出しなければいけません。
事業年度開始日が4月1日の場合は、3月31日までに提出する必要があり、提出期限を過ぎてしまうと、その年度は白色申告で確定申告を行うことになります。

また、新規で法人を立ち上げた場合は、会社設立日の3カ月を経過した日、もしくは事業年度終了の日のどちらか早い日の前日までと決められています。
会社を設立すると、法人登記や各自治体への届け出など、いくつもの作業を行うことになります。
節税などメリットが多い青色申告で確定申告を行うのであれば、ほかの手続きと併せて、早いタイミングで税務署に承認申請書を提出することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。