司法書士法人 宮田総合法務事務所

2024年4月に施行! DV等被害者を守るための特例が新設

23.10.03
業種別【不動産業(登記)】
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所有者がわからない『所有者不明土地』の解消を目的に、不動産登記法の改正が行われ、相続登記の申請の義務化が2024年4月1日から、住所等の変更登記等の申請の義務化が2026年4月1日から施行されます。
不動産を相続・所有するDV等被害者についても、これらの義務化の対象となることから、現在のDV等被害者の保護に関する制度を見直したうえで、新たな特例が創設されることになりました。
この特例は、DV等被害者の現住所が加害者を含む第三者に知られないための措置になります。
現在の制度や申請方法、新設される特例の中身などについて解説します。
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現在利用できるDV等被害者を守るための制度

不動産登記においては、登記事項証明書などの交付請求によって、誰でも登記名義人の氏名や住所を知ることができます。
ただし、第三者に住所などを知られることで心身に危害がおよぶ恐れのあるDV等被害者については、不動産を取得して登記する際に、登記事項証明書に記載される住所を前住所や前々住所にできることと、DV等の被害者とその代理人以外は申請書などを閲覧できないようにする特別な制限が認められています。
DV等被害者とは、配偶者からの暴力(DV)やストーカー行為、児童虐待およびこれらに準ずる行為の被害者を指します。

DV等被害者が前住所や前々住所で登記申請するには、市区町村からDV等支援措置を受けていることを証明する通知書と、「住民票に現住所として記載されている住所地は、配偶者等からの暴力を避けるために設けられた臨時的な緊急避難地であり、あくまで申請情報として提供した住所が生活の本拠である」旨の上申書、印鑑登録証明書、そして前住所や前々住所が記載された住民票や戸籍などが必要になります。
DV等支援措置の通知書は、DV等被害者が市区町村に申し出て、支援が決定すると発行されるものです。
これらの必要書類を揃えたうえで、通常は司法書士に登記申請を依頼することになります。
また、DV等被害者が支援措置を受けていることを証明する書面を添付すると、住所変更登記を省略することができます。

一方で、DV等被害者が登記申請をしなくても、登記の申請書類に氏名や住所が記載されることはあります。
たとえばDV等被害者が親の不動産を相続する際に兄弟姉妹と遺産協議し、兄弟姉妹が相続人として登記すると、登記申請で提出する遺産協議書にはDV等被害者の氏名や住所も記載されてしまうのです。
このような登記申請書などが閲覧できてしまうと、DV等被害者の現住所が加害者に知られる可能性があります。
そこで、登記申請書などから現住所が知られないように、DV等被害者が法務局に申し出ることで、登記申請書などの閲覧を制限できます。

制限を受けると、DV等被害者とその代理人以外は、登記申請書などの住所を閲覧できなくなります。
DV等被害者と代理人は登記申請書などの原本を閲覧できますが、それ以外の第三者は、住所記載部分がマスキングされた登記申請書などの写ししか閲覧できません。

閲覧制限の申請には、DV等支援措置の通知書と印鑑登録証明書、登記申請書等閲覧制限措置申出書、代理人が申出をする場合には委任状が必要です。
登記申請書等閲覧制限措置申出書は法務局で取得できます。

現行でもこのようなDV被害者を守るための制度がありますが、不動産登記法の改正によって創設された新たな特例が、2024年4月から順次施行されることになりました。

DV等被害者の保護を目的とした新特例

2021年4月に公布された改正不動産登記法では、所有者不明土地の発生を防ぐために、相続登記と住所等の変更登記等の申請が義務化されます。
相続登記の義務化は2024年4月1日に施行され、住所等の変更登記等の義務化は2026年4月1日に施行されます。

罰則規定も設けられているこれらの義務化は、不動産を相続・所有するDV被害者も対象となります。
現在のDV等被害者の保護を目的とした制度を見直したうえで、改正不動産登記法に基づき、新たに『DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例』が新設されました。

新設された特例の大きなポイントは、DV等被害者が法務局に申し出れば、対象者の登記事項証明書等を発行する際に、対象者の現住所に代わる住所を記載できるようになることです。
記載できる住所として想定されているのは、委任を受けた弁護士などの事務所や被害者支援団体等の住所、あるいは法務局の住所などです。

改正不動産登記法第119条第6項に基づくこの措置の対象となるのは、DV防止法・ストーカー規制法・児童虐待防止法におけるDV等被害者を想定しています。
その具体的な範囲については今後、省令で規定されます。
また、手続きの方法なども追って公表されるので確認しておきましょう。

現行の制度も新設される特例も、適用を受けるためには暴力やストーカー行為などの被害に遭っているDV被害者として認定されている必要があります。
DVやストーカーによる被害を防ぐために不動産登記に現住所を載せたくないといった理由がある場合、まずは地域の配偶者暴力相談支援センターや警察の相談窓口、内閣府の『DV相談ナビ』などに連絡することを覚えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。